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2023年10月16日 09:50 更新

【医師監修】二人目では高齢出産って何歳から?先天異常のリスクは上がる?

一人目の出産が遅いときや上の子と年齢差があるとき、二人目が高齢出産になるのか疑問に思う人もいるでしょう。ここでは二人目出産の場合、高齢出産となるのは何歳からなのか、またその場合に考えられるリスクについて説明します。

二人目の場合は何歳から高齢出産になる?

疑問のイメージ
Lazy dummy

まずは二人目の場合、何歳から高齢出産になるのか説明します。

「40歳を超えてから妊娠して出産」が一つの考え

日本では、経産婦に関しては特に高齢出産の定義はありませんが、国際産婦人科連合(FIGO)は、二人目妊娠に関しては40歳以上を高齢 “妊娠”としています[*1]。高齢妊娠からの出産が高齢出産となるので、二人目の場合は40歳を超えてから妊娠して出産することを高齢出産とする考え方もあるようです。

初産の場合は35歳以上

なお、日本産科婦人科学会は35歳以上の初産婦を「高年初産婦」としています[*2]。高年初産婦は流産早産、低出生体重児、胎児の先天異常などのリスクが高くなるため、妊娠中から注意してケアや医療管理が行われます。

全体の3割が35歳以降の出産

女性の社会進出や晩婚化、生殖補助医療の発展などの要因から、出産する女性の年齢は年々高くなっています。

厚生労働省の調査では、2022年に出産した女性の年齢は35歳以上が全体の3割に達しています[*3]。

高齢出産で上がる3つのリスクとは

幼い兄弟と夫婦

二人目を高齢出産するときは、どんなリスクがあるのでしょうか。

1. 妊娠糖尿病や妊娠高血圧などの妊娠合併症

年齢が高くなると体の機能や体力が落ちていきます。すると妊娠によって体に負担がかかり、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群といった妊娠合併症が起こりやすくなります。

妊娠合併症については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎妊娠中に糖尿病になるとどんな問題がある?
▶︎妊娠高血圧症候群の症状と治療法

2. 流産・早産

卵子の加齢によって胎児の染色体異常が増えると、流産のリスクは高くなります。受精卵の染色体異常率は母親が30~36歳で19%であるのに対し、37~41歳では46%に高まるとされています[*5]。

厚生労働省のデータによると、34歳までで10.9%、35~39歳で20.7%、40歳以上で41.3%以上と流産率は年齢によって上がっていくことがわかっています[*1]。海外の調査では、流産率は30~34歳では15.0%、40~44歳で51.0%に上昇するという報告もあります[*4]。

また、先に開設した妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの合併症によって早産のリスクも高まると考えられています。

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流産の原因について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

3. ダウン症などの染色体異常

ダウン症候群も染色体異常によって起こります。

ダウン症候群の赤ちゃんが生まれる確率は20代の母親ではおよそ1000人に1人ほどですが、40歳では100人に1人程度になると言われています[*6]。

二人目の壁? 結局何が大変なの?

赤ちゃんと遊ぶママ

教育費など家計の問題や仕事、年齢などさまざまな要素から二人以降の出産をためらってしまうのが「二人目の壁」。毎日の家事や育児の負担など、子どもが二人になると大変なことは色々と想像できますが、実際にどのようなことが壁になっているのでしょうか。

みんな一番心配なのが「お金」のこと

二人目の壁を感じる理由として、一番多いのはやはり「経済的な問題」のようです。公益財団法人1morebaby応援団が行った調査では、二人目の壁を感じる理由でもっとも多かったのは「経済的な不安」で85.1%に上っていました[*7]。

単に家計の負担が増えるだけでなく、育休が取りづらく仕事が続けられるか不安、という声もあったそうです。

でも生まれてみれば楽しい!

ただ、1morebaby応援団が行った「2人以上の子どもを持つ人で、2人目を産む際に躊躇した人」を対象にした調査では、6割を超える人が「とても満足している」と回答し、「やや満足している」人と合わせると98.4%の人が二人以上の子育てに満足していたという結果を報告しています[*8]。

子どもが二人いることで家庭はにぎやかになり、兄弟姉妹で遊ぶようになると親の方にも余裕ができて「楽しい」と感じられるようになるのかもしれません。

世帯収入がどのくらいかだけでなく、どんな暮らしや子育てがしたいかによっても、必要なお金は変わってきます。経済的な不安がある場合は、家族で冷静に話し合い、現実的な見通しを考えていくことで、また感じ方が変わる可能性はあります。

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子供の人数について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

高齢出産の二人目で初産と違うこと

超音波検査を受ける妊婦さん

二人目が高齢出産になる場合、一人目と違ってくる点をまとめました。妊娠や出産、育児の常識は数年で変化することも。子供の体質や性格もそれぞれ違うので、一人目のときに得た知識だけに頼らず、積極的に最新情報にアップデートしておきましょう。

出生前診断などの検査を受けるかどうか

高齢出産でお腹の赤ちゃんのことが心配な場合は、出生前診断などの検査を受ける選択肢もあります。

出生前診断とは、妊娠中に検査を行い、その結果から赤ちゃんに先天異常があるかどうか医師が診断することです。生まれる前から赤ちゃんの状態を知っておくと、もし病気があると分かった場合は、可能なら妊娠中から治療したり、また生まれてすぐ治療を始める準備を行ったりすることができます。

両親にとっても、赤ちゃんの重篤な疾患や先天異常の有無をあらかじめ知って、受け入れるためにある程度準備できるメリットがあります。

「可能性がわかる検査」と「確定診断できる検査」がある

出生前診断の検査にはさまざまな種類があり、医療機関によっても実施する検査が異なります。見た目でわかる形態異常は超音波検査で調べます。また、染色体異常を調べる検査には、「可能性だけがわかる検査」と、「確定診断できる検査」があります。

非確定的検査には、「新型出生前検査(NIPT)」や「母体血清マーカー検査(トリプルテスト、クアトロテスト)」「コンバインド検査」があります。これらの検査はママの採血のみか超音波検査の結果を組み合わせて行うので、胎児にリスクはありません。

確定診断ができるのはおもに「羊水検査」や「絨毛検査」ですが、これらはお腹に針を刺して羊水や細胞を採取するので、流産や破水、出血などのリスクがあります。そのため、まず非確定的検査を行い、先天異常の可能性があった場合に羊水検査や絨毛検査を行うのが一般的です。

出生前診断は検査によって受けられる妊娠週数や金額が異なります。希望する場合はまず医師に相談して説明を受け、検査の内容や結果の受け止め方をよく理解してから受けるようにしましょう。

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羊水検査について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

40代はがん・脳卒中・心筋梗塞などの病気が増える

40代になるとがんの罹患数が増え、周囲でがんにかかる人が出てくるなど、身近な病気になってきます。女性では40代から急激に乳がんの発症が増加します。また脳卒中や心筋梗塞も40代から急激に増え始めます。日頃から健康診断や人間ドックで体の状態をチェックしておくことが大切です。

年齢が上がった分体力が……

疲れているママ
Lazy dummy

年齢が上がると、体力は落ちていきます。一人目では難なくこなせていたことが難しくなったり、赤ちゃんのお世話をしているうちに肩こりや腰痛など、体に痛みが出てくることも。

産後にできるだけ睡眠時間を確保する、授乳や育児動作を正しい姿勢でするなど、体に負担をかけないよう、一人目のときより工夫が必要になってくるかもしれません。

育児を一人で抱え込まないで!

年齢が高くなってくると、妊娠によりさまざまな合併症を起こすリスクが増えると説明しました。合併症の種類によっては安静が必要で、入院になる場合もあります。そうなったとき、上の子のお世話や家のことをどうするか、あらかじめ考えておく必要もあります。

また産後は、ワンオペでなんとかこなせた一人目と違って、子どもが二人になると「一人だけ病気をして病院へ連れていくとき」や「子どもの行事が重なったとき」など、誰かに頼りたいシーンが増えてきます。上の子が赤ちゃんへの嫉妬で辛くならないよう、上の子と一緒に過ごす時間を十分確保することも必要です。

ですから、パパはもちろん、祖父母や身内、友人なども頼って、育児の手間や悩みをできるだけ一人で抱え込まないようにしましょう。祖父母や身内が遠方などで頼れない場合は、一時預かりや子育て相談など、住んでいる自治体のサービスをフル活用してくださいね。

まとめ

産後すぐの家族のイメージ
Lazy dummy

出産する女性の年齢が上がっている昨今、高い年齢で二人目を出産することは珍しくありません。出産年齢が上がればさまざまなリスクも増え、お世話の負担も増えますが、それでも大半の人が二人目以降の子育てを大いに楽しんでいるようです。経産婦のママには一人目の出産・育児を経て得た知識があるので、手間が増えたとしても経験でカバーできることもあるはずです。年齢が上がったからこそ持っている強みを生かして、二人目の壁を乗り越えていきましょう。

(文:佐藤華奈子/監修:直林奈月 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]特定非営利活動法人ひまわりの会『母子健康手帳アプリ』
[*2]医療情報科学研究所/編・2014年・『病気がみえるvol.10 産科 第3版』・メディックメディア・P74
[*3]厚生労働省『令和4年(2022)人口動態統計』
[*4]Nybo Andersen AM, Wohlfahrt J, Christens P,et al. Maternal age and fetal loss: population based register linkage study. BMJ. 2000 ; 320 : 1708-12
[*5]Pellicer A, et al.: Fertility and Sterility, 71:1033-1039,1999
[*6]日本産婦人科医会:高齢妊娠って何歳からですか?
[*7]公益財団法人1more Baby応援団:“2人目の壁”の“壁”って何?
[*8]公益財団法人1more Baby応援団:案ずるより産むが易し?

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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