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2021年10月26日 08:00 更新

【医師監修】羊水混濁ってどんな状態? その原因と赤ちゃんへの影響・治療法

羊水は、子宮の中で赤ちゃんを包み守っている液体ですが、分娩間近になると、羊水が濁る「羊水混濁」を起こすことがあります。これはなぜ起こり、起こると赤ちゃんにどのような影響があるのでしょうか? 羊水混濁の原因や対応、治療方法などを解説します。

羊水混濁って何?いつ起こるの?

妊娠後期の胎児のエコー写真
Lazy dummy

お腹の中で、赤ちゃんは卵膜という薄い袋状の膜に包まれていますが、その中を満たしている液体が「羊水」です。羊水は妊娠初期には無色透明なのですが、妊娠末期になると赤ちゃんのおしっこや赤ちゃんの皮膚からはがれたものなどが混じって自然と乳白色になっていきます。

「羊水混濁」は上記の自然な変化とは異なる理由で、羊水が濁ることを言います。まずは羊水の役割と、羊水混濁はどのようなもので、いつ起こるのかといった基本的なことを知っておきましょう。

お産の最中が多い

羊水は、妊娠中にお腹に何かがぶつかったりママが転ぶなどのアクシデントがあったときに、衝撃が赤ちゃんにダイレクトに伝わらないように守るクッションのような役目をしています。また、羊水を肺に取り込み排出する運動で赤ちゃんの肺が育つのを助けたり、羊水により子宮内に確保された空間で赤ちゃんがさかんに動くことで筋肉や骨格の発達を促したりします。

こうした大切な役目や働きのある羊水ですが、お産の前に赤ちゃんが羊水の中に「うんち(胎便)」をしてしまうことで「羊水混濁」という状態になることがあります。胎便とは、胎児の腸で作られる便で、無菌性で濃い緑色をしています。胎便は普通、赤ちゃんが生まれてから排泄されるのですが、生まれる前や分娩の前後に羊水の中に排泄されてしまうことがあります。

羊水は通常、透明または乳白色ですが、濃い緑色の胎便が排出されると濁ったように見えます。ただ、羊水の色は妊娠中に検査をして調べるようなことはしないので、羊水混濁は破水したときに初めてわかります

なお、羊水混濁が起こる頻度は、お産全体のうち約14%、つまりお産の7例に1例程度の割合で見られるとされています。また、羊水混濁が起こる割合は、陣痛開始前だと約2.8%と少ないのですが、陣痛が始まった後、つまりお産の最中になると、約23.1%に増えることがわかっています[*1]。

とくに予定日を過ぎると起こりやすい

羊水混濁はお産の最中に起こることが多いと言いましたが、分娩の時期が遅くなるほど増加します。逆に早産で羊水混濁が起こることはまれです。

妊娠37週以降になると、お産の最中に羊水混濁が起こる割合は7~22%ですが、予定日を過ぎると急激に増えて、約40%にものぼります[*1]。

羊水混濁はなぜ起こるの?理由は?

生まれたての赤ちゃんのイメージ
Lazy dummy

羊水混濁は赤ちゃんが羊水中にうんちをしてしまうことで起こりますが、赤ちゃんはお腹の中でなぜうんちをするのでしょうか。

胎盤の機能低下など

羊水混濁は、予定日を過ぎると頻度が上がります。それは、予定日を過ぎると、一般に胎盤は徐々に衰えて機能が低下していくからです。

胎盤の機能が衰えると、赤ちゃんのおしっこが減ることで羊水の量も減り、一時的にへその緒が圧迫されることがあります。その結果、副交感(迷走)神経が刺激されて腸の運動が活発になり、胎便がもれ出てしまうことがあります。

出産時に赤ちゃんにかかるストレス

お産の時には、赤ちゃんは陣痛による圧迫を受けたり狭い産道を通ったりすることで、ストレスにさらされることになります。するとその刺激によって胎便が出てしまうこともあります。

感染症にかかって起こることも

ときには感染症が原因で、胎便の排出が起こることもあります。特に低出生体重児の場合は、たとえお産の最中でも、胎便が出てしまうのは子宮内で何らかの感染症にかかっていた可能性があると考えられます。

羊水混濁の影響は?

胎児の様子を観察するときのイメージ

羊水混濁が起こっても、即、心配な状態ということではありません。

心拍数に異常がなければ心配いらない

羊水混濁は赤ちゃんがお腹の中でうんちをしてしまうことで起こると言いましたが、実は予定日の直前・直後には何かのトラブルがなくても胎便が出ることはあります。

とくに、正期産や過期産の赤ちゃんが、お産のときに胎便を出した場合、問題ないことが多く、この時期に胎便が出るのは、赤ちゃんの腸がきちんと育った証拠という考え方もあります。

羊水混濁は分娩の途中に起こることが多いので、羊水混濁とわかった場合には、分娩監視装置を使用して赤ちゃんの心拍数などを見守ります。それで異常が認められなければ心配ないと考えて、お産の最中に何か特別な処置が行われることはありません。

もし異常が見られたら、子宮頸管を拡げる処置や陣痛促進剤の使用などでお産を早めたり、緊急の場合は帝王切開となったりすることもあります。

胎便吸引症候群になることがある

羊水混濁を起こして一番心配なのは、「胎便吸引症候群(MAS)」になることです。これは、胎便により濁った羊水を吸い込むことで、赤ちゃんの気管支や肺胞の一部が詰まってしまったり、気胸などの呼吸障害を起こす病気です。また、胎便の化学的刺激により肺炎の原因にもなります。

羊水混濁を起こした赤ちゃんのうち、5%程度が胎便吸引症候群になると言われています[*2]。

とはいえ、胎便吸引症候群になってもたいていはあまり心配がなく、何か影響が残ることは少ないものです。ただ、まれですが重症になると、後遺症が残ってしまったり命にかかわることもあります。

また、胎便吸引症候群を起こした新生児は、あとで小児喘息になるリスクが高くなる可能性があるとも言われています。

羊水混濁の治療は?

保育器の中で眠る新生児

分娩時に羊水混濁とわかっても、赤ちゃんの心拍数に異常がなければ、何か特別な治療を行うことは基本的にはありません。ただし、赤ちゃんの状態によっては、すぐに適切な処置が行われます。

必要な場合は吸引や人工呼吸器などを使うことも

生まれたばかりの赤ちゃんが胎便を吸い込んでいて、気道がふさがれていることがわかったときには、医師が胎便を吸引します。

生まれた直後に胎便吸引症候群で呼吸困難を起こしている赤ちゃんには、気管内にチューブを入れて、機械で圧力をかけた空気を気道に送り込み、気道を広げて赤ちゃんが自分で呼吸することができるようにする場合もあります。

また、必要な場合には肺に出入りする空気の流れを補助するために、人工呼吸器を使用することもあるでしょう。こうした処置は新生児集中治療室 (NICU)で行われ、人工呼吸器をつけた赤ちゃんは、気胸などの重い合併症が起きていないか経過観察が続けられます。

まとめ

心配事がある妊娠後期の女性のイメージ

羊水混濁は、お産の時期が遅くなるほど起こりやすく、赤ちゃんが胎便を飲み込んでしまい胎便吸引症候群になると、呼吸困難を起こすこともまれにあります。とはいえ、多くは命にかかわるようなことはないので、羊水混濁と聞いてもむやみに心配する必要はありません。

羊水混濁を予防する方法はありませんし、症状も特にないため妊婦さん自身が気づくことは難しいものです。でも、羊水混濁だけでなく何らかのトラブルがあった場合は早く見つかるよう、妊婦健診はきちんと受けておくことが大切です。

また、赤ちゃんの胎動やママの体調などに違和感や異変を感じるようなことがあったら、できるだけ早くかかりつけの産婦人科に相談しましょう。羊水混濁が確認できるのは、破水してからです。ですから、破水かな?と思ったり、明らかに破水したとわかったときには、すぐに受診してくださいね。

お産が近づいたら、何かあったときはすぐに対応できるような心がまえで準備をしつつ、赤ちゃんに会える日を楽しみに待ちましょう。

(文:村田弥生/監修:浅野仁覚 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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