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2021年10月26日 16:00 更新

【医師監修】化学流産の翌月に妊娠することはある? 対応と妊活再開の時期

妊娠検査薬が一度陽性になるものの、その後すぐに流産してしまう「化学流産」。残念だしショックなことでもありますが、化学流産の後どのくらいでまた妊娠できるようになるのかも心配になりますね。今回は、化学流産の翌月に妊娠する可能性と、化学流産後の対応や妊活再開の時期などについてまとめました。

化学流産の翌月に妊娠することはある?

妊娠検査薬の疑問のイメージ
Lazy dummy

妊娠検査薬の判定は陽性だったのに、医療機関での超音波検査で胎嚢が確認できる前に流産してしまうことを「化学流産」といいます。

妊娠したと喜んでいたのに、継続できなかったことを知るのはとても悲しい出来事ですが、妊活中で早く次の妊娠をしたいと思っている人にとっては、「化学流産をした翌月でもすぐ妊娠することはあるのか」も気になるでしょう。

可能性はある!

化学流産では受精卵が一度は着床したということですから、排卵と着床はある程度できる状態ということです。そのため、化学流産の翌月でも、排卵が続いていればまた妊娠する可能性は十分にあると考えてよいでしょう。

化学流産(生化学的妊娠)とは

悩みがある女性のイメージ

そもそも「化学流産」とはどんな現象のことなのでしょうか。また、通常の流産とは何が異なるのでしょうか。

かなり早い段階で流産すること

化学流産は、「妊娠検査薬の反応は陽性だったのに、超音波検査で胎嚢が確認できる前に流産してしまった状態」と言いましたね。わかりやすく言うと、受精卵が一度は子宮に着床したものの成長し続けることができず、早い時期に流産してしまった状態のことです。

化学流産の症状

化学流産は生理予定日の前後に起こります。化学流産をすると、このころに普段の生理より出血量が多く期間の長い出血の起こることがありますが、いつもの生理とあまり変わらない場合もあります。そのため、妊娠検査薬を使わなければ、いつもの生理と思って気がつかないことも多いのです。

化学流産の原因

化学流産が起こる原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、受精卵の染色体異常の影響が大きいのではないかと言われています。卵子と精子が運よく受精したとしても、その40~70%は成長途中で消失してしまうとも言われています[*2]。

化学流産は実はかなり多い

化学流産は、受精卵が着床してかなり早い時期に流産が起こり、胎嚢も消失してしまうことがほとんどです。そのため、妊娠が継続して赤ちゃんがある程度育ってから起こる一般的な流産とは異なります

化学流産は医学的には流産には含めず、これが起こったからといってイコール病的な状態とは考えません。実際、健康な若いカップルでも30~40%の高い頻度で起こると言われており、珍しいものではありません[*1]。

なお、「妊娠検査薬のhCG測定感度が上がり陽性判定が出やすくなった」「検査薬が手軽に購入できるようになって早い時期から検査をする人が増えた」などの背景があって、以前に比べて化学流産と診断されるケースが増えていると考えられています。

化学流産したらどうすればいいの?

妊活中の夫婦のイメージ
Lazy dummy

「化学流産」は、妊娠中に起こる一般的な流産とは違うので、手術や治療などをすることもありませんし、生理が来れば妊活も再開できます。

手術などは基本的に不要

「妊娠しているかも?」と思い妊娠検査薬を使って判定が陽性だと、まず産婦人科を受診しますね。その際に超音波検査をしても胎嚢が確認できないときには、たいてい1週間くらい様子を見ることになるでしょう。化学流産では、妊娠検査薬陽性~初診の前または再受診までに、生理のような出血とともに胎嚢の排出が起こるはずです。

再受診してまた超音波検査を行い、それでも胎嚢が確認できなければ化学流産と診断されます。その時点ではもう受精卵は消失してしまっているので、一般的な流産の場合に行う掻爬手術などは必要ありませんし、何らかの治療をすることもありません。

ただ、超音波検査をしても子宮内膜に胎囊が確認できないのに、hCGによる妊娠反応が陽性という状態が続くときには、「異所性妊娠(子宮外妊娠)」の可能性もあります。異所性妊娠とは、受精卵が子宮内膜の適切な箇所以外に着床してしまう状態をいいます。これが疑われる場合は、血液検査でhCG値を観察したり、再度の超音波検査を行ったりすることになるでしょう。

妊活は再開してOK!

赤ちゃんを望んでいる人にとっては、化学流産といっても流産をしたと考えると、次の妊娠ができるのか、また妊活はいつ再開したらいいのかなど、心配や気がかりがたくさんあるかもしれませんね。

化学流産をした後でも、生理が来れば体は元に戻っていて次の妊娠の準備ができたということなので、すぐにまた妊活を始めて問題ありません

ただ、化学流産は、体だけでなく女性の心にもダメージを与えるでしょう。パートナーとよく話し合い、気持ちの上でも無理のない時期に再開するようにしましょう。

化学流産すると翌月は妊娠しにくい?

スマホで調べ物をする女性のイメージ

「化学流産した翌月は妊娠にしくい」という話を耳にすることがあるかもしれません。これは本当なのでしょうか。

あまり関係ない

前半で解説したとおり、化学流産は珍しいことではなく、おもに受精卵の染色体異常で起こるのではないかと言われています。つまり、多くの化学流産は「たまたまそれ以上成長できない受精卵だった」ことが原因で起こっていると考えられます。ですから、一度化学流産になったからといって、次もまた化学流産になるとは限りません。

なお、「流産してから次の妊娠までの期間」と「次回に妊娠する確率」には、科学的な関連性はないと言われています。また、流産を起こしたとしても、その後5年以内に80%の女性が出産している、というデータもあります[*3]。

長期間避妊をしていると、妊活再開時には女性の年齢がそれだけ上がっていることになりますが、年齢が上がるほど妊娠しにくくなるうえ、流産の頻度も上がります。早くまた妊娠したいと望むなら長期間避妊するより、化学流産後でも心と体の準備が整い次第、妊活を再開することをおすすめします。

続く場合は婦人科で相談を

化学流産は、1回だけでなく何回か繰り返すケースもあるようです。その場合、「不育症なの?」などと不安に思う人もいるかもしれません。一般に「不育症」と診断されるのは、赤ちゃんの胎嚢が確認されてからの流産を2回以上繰り返す「反復流産」や、3回以上くり返す「習慣流産」の場合(死産や早期新生児死亡は除く)と、生後1週間以内に死亡する早期新生児死亡が続いた場合です。

化学流産を繰り返すのが、反復流産や習慣流産と同じメカニズムで起こるのかどうかについては、はっきりとはわかっていません。そのため、化学流産が不育症に含まれるかどうかについても、まだ結論は出ておらず議論されているところです。

とはいえ、赤ちゃんを望んでいるのに化学流産を繰り返すと、妊娠・出産ができるのか不安も大きくなるでしょう。その場合は念のため、婦人科でそれまでの経緯などを話して相談してみましょう。

まとめ

青空と女性
Lazy dummy

妊活中の人にとっては、妊娠検査薬で陽性反応があり喜んだ後で「化学流産」と聞かされると、ショックは相当なものでしょう。でも、化学流産は受精卵の問題から起こることです。予防できることではないので、自分を責めないでください。

それに、化学流産をしたということは、少なくとも排卵と受精は問題なく起こっているという証でもあります。気持ちの上で続けられそうであれば、妊活は継続して問題ありません。もし、こうした事態が続いて不安であれば、パートナーとともに受診して体の状態をよく調べてもらいましょう。できるだけ前向きな気持ちで妊活を続けながら、焦らずに赤ちゃんの来る日を待てるといいですね。

(文:村田弥生/監修:窪麻由美 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]日本産婦人科医会 1.生化学的妊娠(Biochemical pregnancy)の扱い方
[*2]標準産科婦人科学 第4版, p326, 2011. [*3]公益社団法人 日本産科婦人科学会, 公益社団法人 日本産婦人科学会, 産婦人科診療ガイドラインー産科編2020, CQ202

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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