今年も「保育園落ちた」子供の人数が増加! 働けないママたちとネット上の論争

今年も「保育園落ちた」子供の人数が増加! 働けないママたちとネット上の論争

2017年も保育園に入れない子供たちの数が増加しました。それを受け、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏に、今年の現状とネットでの論争について解説してもらいました。


記事の著者
ネットニュース編集者 中川淳一郎
1973年生まれ。東京都立川市出身。一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターになり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々なネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『夢、死ね!』(星海社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)、『電通と博報堂は何をやっているのか』(星海社新書)など。

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 3月27日の東京新聞一面の見出しは「『保育園落ちた』、南関東33市区で41,000人 東京新聞調査」というものだった。同紙は2013年から同様の調査をしているが、これまでは保育園に落ちた割合が38%の年もあり、今年の「34%」は調査開始からもっとも低い割合になったが、保育園に入れなかった子供の人数は最大になった。2013年は18,935人だったが、2014年に21,119人、2015年に21,188人、2016年に20,341人と若干減少したが、2017年の調査では22,641人となったのである。同紙は「需要の拡大に追いついていない」とこの状況を説明している。

 今回の報道を受け、ネット上には

「もう育休を伸ばせない。退職になっちゃう!」
「保育園に入園するために出産日をずらさないといけなかったの?」
「少子化なのに、認可保育園の数も増えてるはずなのに、なぜ保育園に入れない人が増えてるの?」

など、落ちた子供の母親たちが切実な声をあげている。

 しかしながら、昨年来この「保育園落ちた」はネット上の論争の的になってきた。元々「保育園落ちた」は、はてな匿名ダイアリーに2016年2月15日に書かれた「保育園落ちた日本死ね!!!」という日記が発端。保育園に落ちたという匿名の母親が怒りの496文字を綴ったのだ。その後、この日記の書き手がツイッターのIDを開設したり、待機児童問題解消を求める署名がネットで立ち上がり、約27,000人分の署名を民進党の山尾志桜里衆議院議員へ子育て中の母親たちが渡しに行く様子も多数報じられた。結果、「保育園落ちた日本死ね」は2016年の「新語・流行語大賞」のトップ10入りを果たした。

 さて、ここで述べたところの「論争」だが、今回の東京新聞報道でも、ネット上には昨年のデジャブとでもいえそうな批判意見が多数書き込まれている。2ちゃんねるでは落ちた人々を慮る声や行政への対応を求める声が続出する一方で、批判的な論調の書き込みも少なくない。

「落ちた奴らは余裕ある認定されたんだろ? 自分でなんとかして」
「都心部だけの話だけなのであたかも全国規模のような問題提起はやめてくださいね」
「いいから引っ越せ」
「東京への移住も結婚も子供持つのも自分でした選択した結果なんだから、地元民に苦労話や子供押し付けることはやめてほしい」

 この件については、2005年の「イラク人質事件」以降ネットで渦巻く「自己責任論」が大きな影響を与えている。人口過密エリアに住むのも、子供を産んだのも結局は自分が選んだことであり、他に選択肢(地方に住む・子供を産まない)があるというのに文句を言うのは筋違いである、といった意見だ。

 また、この「保育園落ちた」は昨年2月のネット界で、芸能ニュース(ベッキー不倫・清原和博覚せい剤取締法違反で逮捕・SMAP解散報道)を除き、最大級の話題となった。その背景には「日本を貶めた」と感じた人が多数存在したことも影響している。あくまでも東京や神奈川だけの問題だというのに、全国的な話題のようにとらえられたと解釈した地方在住者の反感をかったのだ。さらには、野党がこの件をもってして与党批判の材料にしたことも、安倍政権支持者からすれば腹立たしいこととなった。
 
 そして、今回も政権に批判的な東京新聞による報道だったことから「南関東って言葉を使うあたりがいやらしいよね 東京+神奈川千葉埼玉の一部って素直に書きなよ 日本しねじゃなくて東京死ねでしょ」という書き込みがあった。結局、個々人の人生に関することであろうとも、政争の具にされてしまい、当事者が議論から置き去りにされる状況がネットにはある。

 さらには、東京都杉並区や千葉県市川市で近隣住民が保育園建設に反対する動きが出るなど「空き地に保育園造りたいって言っても住民が反対するんだから解決しないわな」と、もはや「保育園落ちた」問題は、当事者と非当事者を分断するようなイシューとなってしまった。

厚生労働省は平成25年より「待機児童解消加速化プラン」をすすめており、平成25~27年度の3年間で新たに約31.4万人分の保育の受け入れ枠を確保。またプラン策定時点では平成29年度までの5カ年で40万人分の受け皿を確保することを目標にしていたが、それを50万人に拡大。認可保育所等の整備の前倒しや、またその際に必要となる保育人材として約9万人を確保するとしている。

とはいっても、落ちた人数が膨大なだけに問題解決にはまだまだ時間がかかりそうだ。ならば、「せめてネット上での批判合戦や罵詈雑言ぐらいはやめてほしい。」(保育園落ちた経験を持つ母親)という声に耳を傾けてもいいのではないだろうか。

(中川淳一郎)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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