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2021年09月30日 10:30 更新

【医師監修】基礎体温ガタガタでも自然妊娠できる?可能性と改善法

毎月の基礎体温のグラフが「ガタガタ」している……そんな場合でも自然妊娠することは可能なのでしょうか? また、ガタガタの基礎体温を改善する方法はあるのでしょうか? 基礎体温がガタガタになる理由、妊娠の確率を上げる方法などと併せて解説します。

基礎体温がガタガタってどういう状態?自然妊娠できるの?

悩み事がある女性のイメージ
Lazy dummy

あとでくわしく解説しますが、基礎体温は「低温期(低温相)」と「高温期(高温相)」の二相にわかれているのが望ましい状態。これが「ガタガタ」するのにはどんな理由が考えられるのでしょうか。

卵巣の機能が落ちている可能性

基礎体温がガタガタしているとき、まず考えられるのが「卵巣機能の低下」が起こっている可能性があるということです。

卵子が排卵されると、卵巣に残った「黄体」という袋状の器官から「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が分泌されるようになります。卵巣の機能に何か異常があってこのホルモンの分泌量が少なすぎると、基礎体温はガタガタしてきます。ちなみにこの状態のことを「黄体機能不全」と言います。

黄体機能不全の基礎体温の特徴

黄体機能不全の場合、基礎体温のグラフには下記のような特徴が現れます。

・高温期が12日未満
・高温期の途中で体温の下がる日がある
・低温期と高温期の体温の差が0.3℃以内

黄体機能不全の基礎体温(イメージ)
黄体機能不全の基礎体温(イメージ)

もともと熱が出やすくて体温が乱れがち

卵巣機能の異常以外に体温に影響する原因があって、体温が乱れている人もなかにはいるかもしれません。風邪などにかかりやすい人や体の中に何らかの炎症があって、たびたび発熱する場合などです。その結果、基礎体温がガタガタする可能性もあります。発熱を繰り返す場合は受診して原因を特定してもらい、必要な治療を受けましょう。

ストレスが発熱や女性ホルモンの乱れを引き起こすことも

ストレスへの反応と女性ホルモンの分泌調節は、同じ「脳の視床下部」で行われています。そのため、ストレスによる微熱が続くような場合は、女性ホルモンの分泌も乱れているかもしれません。

とはいえ、ストレスによる発熱と感染症や炎症などによる発熱を自己判断で区別するのは困難なので、微熱が続くならやはりまず受診してよく調べてもらいましょう。

そもそも正しく測れていない

基礎体温がガタガタしている場合、そもそも測り方に問題があって、毎日正しい体温を測定できていないという可能性も考えられます。

基礎体温の測り方のおさらいをのちほど解説するので、参考にしてみてください。

自然妊娠する可能性もあるけれど確率は低くなる

妊娠検査薬を見る女性
Lazy dummy

さて、基礎体温がガタガタしている場合でも、自然妊娠できるかどうかですが、結論から言えば「可能性はあるけれど、確率は低くなる」ということになります。

基礎体温が生理周期ごとに「低温期」と「高温期」の二相に分かれるのは、女性ホルモンの分泌がうまくいっており、排卵がきちんと起きていることの証だからです。正しく測定された基礎体温のグラフに異常が見られる場合は、これらに何らかの問題が起きている可能性があります。

黄体機能不全ではうまく着床できなくなる

とくに、最初に解説した「黄体機能不全」の場合、排卵は起きていますが、その後のプロゲステロンの分泌量が足りていない状態です。

この場合、どうなるかというと、排卵は起きているのでタイミングよく精子と出会えれば「受精」はできますが、その後、受精卵が子宮に「着床(子宮内膜に受精卵がくっつき、根を張っていくこと)」するのが難しくなります。

プロゲステロンには子宮内膜を着床に適した状態に整える働きがあるからです。受精卵が子宮に着床できないと妊娠は成立しません。

卵胞が育ち排卵して黄体ができるまでの流れ(イメージ)
卵胞が育ち排卵して黄体ができるまでの流れ(イメージ)

「基礎体温のガタガタを治す方法」と「妊娠の確率を上げる方法」については、後半で解説します。

これで合ってる?基礎体温の測り方を再確認

基礎体温表と婦人用体温計

基礎体温がガタガタしているときは、もしかしたらその測り方に何か問題がある可能性もあります。まずは正しく測れているか、確認しておきましょう。

基礎体温の基本的な測り方

基礎体温の測定は一般的に以下のように行います。

基礎体温の測り方

(1)枕元に0.01℃まで計測できる「婦人用体温計」を用意しておく
(2)朝目覚めたら、起き上がる前に婦人用体温計を「舌の裏側の根元」に当て、口を閉じる
(3)計測終了するまで体を動かさずに待つ

測り方のチェックポイント

基礎体温を測る時、チェックしたいポイントをまとめました。以下に当てはまる方法で計測した基礎体温は、正しい値ではない可能性があるので、こうした状況はできるだけ避けるようにしましょう。

また、使用する前に婦人用体温計の説明書をよく読み、正しい方法で計測するようにしましょう。

基礎体温の測り方|不適切な例

・睡眠時間、起床時間が毎日バラバラ
時間帯によって体温は変化します。そのため、毎日同じ時間に計測するのが大切です。ただし、起床時間がずれた場合も測定値は記録しておきましょう。その場合は、体温とともに起床時間も一緒に記録します。

・舌下に体温計の先端がきちんと入っていない、または検温中に口を開けてしまった
舌の下と上の違いだけでも、基礎体温は差が出ます。

・測定の前や最中にトイレに行くなどして動いてしまった
この場合は、正確な値が測定できません。測定前は飲食もしないでください。

・婦人用体温計を使っていない
通常の体温計では基礎体温の微妙な変化を計測することができないので、基礎体温の記録には婦人用体温計を使いましょう。

・「実測式」と「予測式」の計測値が混じっている
体温計で体温測定する方法には、実際の体温を計測する「実測式」と計測開始からの体温変化を参考に数分後の体温を予測する「予測式」があります。

婦人用含め、電子体温計では両方の方式で計測できることが多いのですが、液晶部分の表示や計測終了時のブザー音に違いがあります。この2つは誤差があることが多いので、毎日計測するならどちらかに統一するようにしたほうが良いでしょう。なお、実測値のほうが正確な体温を計測できますが、計測時間は長くなります。

理想的な基礎体温グラフの特徴 

理想的な基礎体温グラフの特徴についても、もう一度確認しておきましょう。

理想的な基礎体温グラフのポイント

・「低温期」と「高温期」にわかれている
・高温期が「12日間以上」ある
・低温期と高温期の差が「0.3℃以上」ある
・高温期に体温の下がる日はない
・低温期から高温期に移行する期間は「3日間以内」

「低温期」と「高温期」の二相に分かれている基礎体温表の例
「低温期」と「高温期」の二相に分かれている基礎体温表の例(イメージ。生理周期28日の人の場合)

基礎体温のガタガタを治す方法はあるの?

受診する女性のイメージ
Lazy dummy

ここまでで基礎体温がガタガタしていると、やはり妊娠したい人にとってはあまり良くないということを解説してきましたが、ガタガタしている基礎体温を治す方法はあるのでしょうか?

婦人科を受診してよく調べてもらおう

妊活中で基礎体温のガタガタに気づいたら、まず婦人科を受診しましょう。体、とくに卵巣の働きに何か問題がないか調べてもらえるはずです。受診の際は、2、3周期分の基礎体温表を持参できるとベスト。検査の結果、妊娠するためには治療が必要とわかることもあります。

黄体機能不全の場合は、薬剤により排卵を誘発したり、黄体の働きをサポートしたり、脳の視床下部の働きを調整するなどの治療方法があります。

女性ホルモンのリズムを邪魔しない生活を

また、普段から女性ホルモンの分泌に影響を与えそうなことはできるだけ避けることも大切です。

極端なダイエットや太り過ぎを避ける

ストレスは女性ホルモンの分泌に影響すると解説しましたが、「無理なダイエット」も女性ホルモンの分泌に影響することがあります。

エネルギーの摂取量があまりに少なくなると、女性の身体は生理を止めようとして女性ホルモンの分泌量が下がるのです。逆に「肥満」の場合も女性ホルモンの分泌は乱れると言われています。

基礎体温のガタガタが気になったら、自分の体重は身長に対して適切か見直してみましょう。日本医師会では身長を入力すると適正な体重を計算してくれるサイトを公開しています。

また、ストレスを感じるのは避けようがないことも多いものですが、ストレスが溜まらないようこまめに発散しようとすることはできます。以下のような簡単な方法もあるので、ストレスが気になったときに試してみてください。

ストレスを感じたとき「1秒で心を落ち着かせる方法」[*2]

・肩を1cm下げてみる
・息を「はぁーっと吐く」
・早食いになっていたら「最初の一口だけ味わって食べる」
・少しだけ顔をあげて歩く

ストレス対策には、普段からバランスの取れた食事や良質な睡眠を十分にとり、適度な運動を習慣にすることも役立ちます。また、考え方をなるべく柔軟にして、困ったときは誰かに相談することも大切です。

あまり気にし過ぎないで

基礎体温がガタガタしていると「これを治さないと妊娠できない!」と焦ってしまうかもしれませんが、女性の体は繊細なので、ストレスなどちょっとした変化で基礎体温がそのように変化するのも実はよくあることです。

あまり気にしすぎると、かえってそれがストレスになる可能性もあります。また、基礎体温が多少ガタガタしているからといって、絶対に妊娠できないというわけではありません。婦人科で検査や治療を受けできる努力をしたら、あまり気にしすぎないようにしましょう。

妊娠の確率を上げる方法はあるの?

排卵検査薬

ここからは、基礎体温の形に関係なく自然妊娠する確率を高める、または低下させるので避けたほうが良いことをまとめます。体の状態は人によってさまざまですが、参考にしてみてください。

排卵日の2日前から性交する

妊娠するためには、精子と卵子がタイミングよく出会わなければなりません。そこで重要なのが、精子は射精後女性の体内で「3日間ほど」生きていられる一方、卵子の寿命は「排卵後約24時間」[*3]しかなく、しかも無事に育っていける受精卵になるためには排卵後数時間のうちに受精する必要があるとも言われていることです。

そのため、もっとも妊娠しやすいのは「排卵日の2日前から性交する」ことだと言われています[*3, 4]。比較的寿命の長い精子がさきに女性の体内にあって、卵子が排卵されてくるのを待つのが効率的ということです。

排卵日は排卵日検査薬で予測できる

なお、排卵日は基礎体温を記録している人なら、低温期が高温期に移行するタイミングでだいたいわかります。ただし、もともと基礎体温がガタガタだとこの移行時期がいったいいつなのか判別できないことも。

その場合は、「排卵検査薬」を使って予測する方法もあります。排卵検査薬の使い方などくわしい情報は、下記の記事を参照してください。

やせすぎ・肥満、喫煙など…マイナス要素を減らす!

その他、「やせすぎ、太り過ぎ」や「喫煙(男女とも)」は、妊娠する確率を下げる可能性があると言われています[*4]。

妊娠したい人はこれらを避けることが大切です。

まとめ

妊活中の夫婦のイメージ
Lazy dummy

妊活中、基礎体温を付けてみてガタガタのグラフになったら心配になりますよね。女性ホルモンの分泌はストレスなどの影響を受けるので、もしかしたらその月はたまたまそうなっただけということもあります。

でも、それが続くようなら、卵巣など身体のどこかに不調があって起きている可能性もあります。ガタガタの基礎体温に気づいたら、妊娠を望んでいる場合はとくにあまり放っておかず、まずは婦人科で体の状態をチェックしてもらいましょう。薬剤などによる治療を受け、妊娠の確率を高められる場合もあります。また、日常生活での注意点などのアドバイスをもらえることもあるでしょう。

できるだけ規則正しい生活で、心穏やかに過ごしながら、赤ちゃんが来てくれる日を待てると良いですね。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:齊藤英和 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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