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2021年09月29日 10:30 更新

【医師監修】働く妊婦の悩み~立ち仕事は1日何時間まで?いつまで働き続けて大丈夫?

妊婦さんの体調が良く妊娠経過も順調であれば、仕事を続けることに問題はありません。しかし、仕事の内容が、体に負担のかかる立ち仕事となると、少し注意が必要かもしれません。妊婦さんが立ち仕事をする際の注意点を解説します。

1日何時間までの立ち仕事なら大丈夫?

レジを打つ女性

働く妊婦さん、それも立ち仕事をしている妊婦さんの場合、妊娠がわかった後、仕事をどう調整していけばよいのか、悩ましく思うことがあるでしょう。

立ち仕事の妊婦さんは、1日どれくらいの時間なら、仕事をしても大丈夫なのでしょうか。

個人差があるため無理のない範囲で

妊娠に伴い、女性の体では日々さまざまな変化が生じています。おなかが大きくなるといった目に見える変化のほか、体内で生じる、見た目からはわからない変化も多いため、非妊娠時と変わらないつもりで立ち仕事を続けていると、思いがけない体調不良に見舞われることもあります。

ただ、実際にどれくらい体への影響があるかについては個人差が大きく、一概に「このくらいなら大丈夫」という基準を示すのは難しいところがあります。また同じ人でも妊娠が進むとともに、対応可能な時間の長さが変わってくることもあるでしょう。

そのため「自分の体の様子を見ながら、無理のない範囲で」仕事をしていくのが大切です。

1時間に10分ほどは休憩する

個人差があるといっても立ち仕事は、妊産婦にとって身体的負荷が大きい仕事に含まれます。そのため、非妊娠時とまったく変わらない働き方を続けていると、身体的負担が大きくなりすぎて、切迫流産切迫早産などのトラブルを招く可能性が高まることがあります。

長時間の立ちっぱなしは避け、できれば「1時間に10分程度」は休憩をとりたいものです。立ち仕事が妊婦さんの体に与える影響については、のちほど詳しく説明します。

立ち仕事の時間を短縮する

自分で調整可能な場合は、立ち仕事の時間をなるべく短くしましょう。業務上、立ち仕事が欠かせない場合は、座ってできる仕事に「配置転換」してもらうことも考えてみましょう。

配置転換は、自分以外の同僚の負担になってしまう可能性もあるため、妊婦さんからはなかなか言い出しづらいかもしれません。しかし、あまり遠慮しすぎて無理をしてしまうと、取り返しのつかないことになるリスクもあります。「会社に相談するときのポイント」については、のちほど解説します。

いつまで立ち仕事を続けてもいい?

立ち仕事をする女性のイメージ

おなかが大きく目立つようになってくると、立ち仕事を続けることに不安を覚える妊婦さんも多くなってくることでしょう。立ち仕事は妊娠何ヶ月まで続けてよいのでしょうか。

体調を優先して働き方を決める

妊婦さんがいつまで立ち仕事を続けてよいかについては、最初にも説明したように、大きな個人差があります。そのため、明確な基準は設けられていません。体調を見て、医師と相談しながら個々に決めていく必要があります。

妊娠初期から力仕事は控える

妊娠中に重たい物を持つなどして身体的負荷がかかると、のちほど説明するむくみなどが起こりやすくなったり、切迫早産、切迫流産のリスクが高まったりします。そのほかに腰痛が生じたり、骨盤底筋という子宮などの内臓を支える筋肉がダメージを受けたりすることも考えられます。

立ち仕事のほか、重い物を持つなどの力仕事もある場合は、おなかの目立たない妊娠初期であっても無理をせず、ほかの人に代わってもらいましょう。

立ち仕事による母子への影響は?

腹痛のある女性
Lazy dummy

妊娠中に立ち仕事を続けると、体に以下のような影響が生じることがあります。

めまい・むくみ・冷えなどが起こりやすくなる

妊娠中は、女性ホルモンの分泌量が変化する影響で血管が拡張し、血圧が低下することがあり、それによって、ふらつきのような立ちくらみを伴うめまいが生じやすくなります。長時間の立ち仕事をしていると、血圧が低下しやすくなるため、めまいの症状がさらに起こりやすくなることもあるでしょう。

むくみについては、妊婦さんの約60%が感じるとされるマイナートラブルのひとつです[*1]。特に子宮が大きくなる妊娠後期に入ると、脚から心臓へ戻る血流が圧迫されて脚にむくみが出やすくなり、今まで履いていた靴が履けなくなるほど、むくむことも。長時間の立ち仕事を続けるとむくみが悪化することもあり、注意が必要です。

そのほかには血流の滞りから冷えが生じたり、長時間トイレを我慢するため膀胱炎にかかりやすくなったりすることもあります。

切迫流産・切迫早産になることも

長時間の立ち仕事をしていた妊婦さんでは、切迫流産や切迫早産と診断される人が多かったとするアンケート調査もあります[*2]。

切迫流産とは流産のリスクがある状態、切迫早産とは早産のリスクがある状態のことをいいます。

どちらもすぐに流産や早産になるわけではありませんが、そのまま症状が進むと流産、早産に至る可能性はあります。異常に気付いたら早めに休む、かかりつけ医に相談するなど、無理をせず適切な対応をとりましょう。

立ち仕事をする妊婦が気をつけること

休憩中の女性

ママと赤ちゃんの身を守るためにも、立ち仕事をする妊婦さんが気を付けておきたいことをまとめました。

きついと感じたらすぐに休む

妊娠中の体に、無理はくれぐれも禁物です。少しでも「きついな」と思ったら、すぐに休憩を取りましょう。

立ち仕事の合間に休憩できるよう、近くに椅子を置くなどするほか、場合によっては横になって休むことも必要です。

ヒールの高すぎる靴は履かない

妊婦さんは大きなおなかを支えるために体の重心が変わるうえ、先ほども説明したように血圧が低下して立ちくらみを起こしやすくなっていることもあります。

これらのことを考慮し、足元が不安定になりやすい、ヒールの高すぎる靴はなるべく避けたほうがよいでしょう。人によってはヒールでも3cm程度の低いものならあったほうが安定する人もいるので、自分に合った靴を選びましょう。

会社に相談するときのポイント

相談中の女性

妊娠中は体の仕組み上、どうしても無理がきかない時期です。そのため、体への負担をなるべく軽減できるよう配慮し、妊婦さんが十分に能力を発揮することができる職場環境を整えるのは、雇用している企業の義務です。

ここでは、立ち仕事が続いて辛い妊婦さんが、会社に相談するときのポイントを紹介します。

不安なことは上司に早めに相談する

通常、周囲の人への妊娠の報告は早期流産の心配が減る「妊娠中期以降」がすすめられますが、体調などに不安がある場合は、妊娠初期でも早めに上司に相談しておくことをおすすめします。

職場によって相談のしやすさに違いがあるかもしれませんが、おなかの赤ちゃんが健康でいるためには、ママが健康でいることが大切です。早めに伝えておくことで、上司も配置転換などの配慮がしやすくなるでしょう。

「母健連絡カード」を利用しよう!

「働く妊婦さんを保護すること」は労働基準法などの法律に定められていますが、そうした保護施策は、妊婦さんからの申し出がないと確保することができません。職場の環境によっては、業務内容変更などの相談を言い出しにくい雰囲気もあるでしょう。

そんなときはは、健診の際などに、かかりつけの産科医に相談してみましょう。医師から診断や指導があれば、「母健連絡カード」を利用して、会社に申し出をしてみてください。

母健連絡カードとは、医師をはじめとした医療従事者からの指示を、会社や雇用主などに適切に伝達するために作られたツールです。母健連絡カードが提出されたら、会社や雇用主側はカードの記載事項に従い、通勤の緩和や勤務時間の短縮といった措置を、適切に講じる必要があります。

母健連絡カードの書式は、ほとんどの母子手帳に様式が記載されているので、それを拡大コピーして使うことができます。また、下記でも入手できます。

帰宅後の家事等は家族に協力してもらう

仕事で頑張った分、家事はパートナーや家族にも協力してもらい、できるだけ分担して行うのがよいでしょう。パートナーに家事を任せられることができれば、出産で自宅をあける時も安心できます。

これから始まる育児の予行演習と考え、夫婦で協力して家のことを進めていける環境を整えられたらよいですね。

まとめ

晴れ晴れとした女性のイメージ
Lazy dummy

立ち仕事は、体にかかる負荷が大きい業務です。そのため妊娠がわかったら、できるだけ無理をせず、まずは上司に相談するなどして、配置転換をしてもらうのがおすすめです。無理をすると、むくみや冷え、腰痛といったマイナートラブルが起こりやすくなるほか、切迫早産や切迫流産などになってしまう人も。自分では「大丈夫」と思っていても、妊娠中には思いがけない体調の変化が生じることが少なくありません。立ち仕事を続ける場合は、こまめに休憩を挟みながら、体を大切に、仕事をしていきましょう。

(文:山本尚恵/監修:浅野仁覚 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]HUMAN+Baby+お医者さんがつくった妊娠・出産の本 日本産婦人科学会 監修 p.30
[*2]厚生労働省委託 母性健康管理サイト 小売業で働くみなさまへ|妊娠・出産をサポートする 女性にやさしい職場づくりナビ https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/kouri/gyomu/work01.html

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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