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2021年09月28日 12:30 更新

【医師監修】ピル服用中に妊娠!? 気になる症状とは

避妊薬としてピルを服用しているのに、妊娠してしまうことはあるのでしょうか。また、妊娠するとしたらどんな時にその可能性があるのでしょうか。ピルが妊娠を防ぐ仕組み、飲み忘れた時はどうすればいいかなど、ピル服用中の注意点とともに説明します。

ピル服用中に妊娠することはあるの?

ピルを飲もうとしている女性のイメージ

ピルには低用量経口避妊薬(OC)と、月経困難症や子宮内膜症などの治療薬(LEP)、性交後に避妊するためのアフターピルがあります。

今回は「低用量経口避妊薬」のピルについてお話します。

ピル使用中に妊娠する確率は0.3%程度

避妊用のピルを正しい方法で飲み始めて、1年以内に妊娠する確率はわずか0.3%です。

正しい方法で使用しても、コンドームは2%程度の確率で妊娠することがあるとされています。また、避妊リングも、IUD(子宮内避妊具)で0.6%、IUS(子宮内避妊システム)で0.2%の確率で妊娠することがあります。ピルを正しい方法で使用していた場合の避妊に失敗する確率は、一般的な避妊方法の中で比べてもかなり低いということがわかります。

なお、時々不適切な方法(飲み忘れなど)での使用がある場合、1年以内に妊娠する確率はピルでは9%です。コンドームではそうした場合(破れたり、外れたりする)を含めた妊娠率は18%になると言われています[*1]。

人間どうしても間違えてしまうことは時々ありますが、その場合で比べてもピルの避妊効果はコンドームより優秀なのです。ですから、できるだけ確実に避妊したい人にとって、ピルはおすすめの方法と言えるでしょう。

避妊方法ごとの避妊を失敗する確率と特徴
避妊方法ごとの避妊を失敗する確率と特徴

避妊効果が高いピルですが、どんな成分が含まれているのでしょうか。

そもそもピルとは

ピルには、合成された卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が含まれています。これらのホルモンが体に次のような影響を及ぼして避妊効果を発揮します。

(1)排卵を抑える

ピルを服用すると、ピルの中の卵胞ホルモンと黄体ホルモンは腸から吸収されます。その後、肝臓を通り、血液に乗って全身に巡ります。

やがて脳の視床下部や下垂体に届きますが、この時、脳はピルから吸収された卵胞ホルモンと黄体ホルモンが「卵巣から分泌された」と受け取ります。すると脳は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを分泌させる「卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)」の分泌を減らします。すると卵巣は休んだ状態になり、排卵が起こらなくなります

(2)子宮内膜が増殖しにくくする

ピルに含まれているホルモンは、子宮内膜にも影響します。
黄体ホルモンの作用で子宮内膜の増殖は抑えられます。そのため、もし排卵があって受精したとしても、着床しにくくなります

(3)精子が子宮に入りづらくする

ピルの影響を受けると子宮の入口の頸管粘液は濃厚でネバネバした状態になります。そのため、精子がうまく腟内を進めなくなり子宮の中に入りづらくなります

こうした3つの避妊効果で、ピルはより確実に妊娠を防いでいます。

ピルによる避妊の仕組みのイメージ
ピルによる避妊の仕組み

ピルの避妊効果はどれくらい持続するの?

ピルの避妊効果は、服用を止めても少しの間、続きます。
製品によって多少の違いはあるものの、飲むのを止めて1周期目で90%近く、3ヶ月以内には85~98%程度の人の排卵が再開すると言われており、ピルを中止すると3ヶ月程度で避妊効果はなくなると考えられます[*2]。

ただし、この期間内であってもピルを服用しなくなると避妊効果は徐々に薄れていくため、確実に避妊したいなら、やはり毎日服用し続ける必要があります。

ピル服用中でも妊娠の可能性があるケース

お腹の具合が悪い女性
Lazy dummy

ピルの避妊効果は非常に高いのですが、それでも服用中に妊娠する可能性はないわけではありません。次のような時にはとくに注意しましょう。

下痢や嘔吐が続いている時

下痢やおう吐が続くと、薬の成分が吸収されにくくなることがあります。
そのためピルを正しく服用していても、下痢やおう吐が続いた時には妊娠する可能性があるのです。

下痢やおう吐が続いたら、体調管理のためにも医師に相談するようにしましょう。

ピル以外の薬を服用している時

ピル以外の薬を飲んでいると、ピルの効果に影響を与えることがあります。
特に次のような薬やサプリメントには注意が必要です。

ピルの効果に影響する可能性がある治療薬

・抗菌薬(抗生物質)や抗ウイルス薬など、感染症の治療薬
・睡眠薬、ナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群の治療薬
・てんかんの治療薬
・肺高血圧症の治療薬 など

こうした薬の中には、ピルの避妊効果を弱めたり、不正出血が起こりやすくなったりする種類があります。ただし、同じ病気の治療薬でも成分によってその心配がないものもあります。くわしくは主治医に確認してください。

ピルの効果に影響する可能性があるサプリメント

・セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含むもの

薬剤ではありませんが、「セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワートとも)」が含まれている食品も、ピルの服用中は口にしないほうが良いでしょう。ピルの避妊効果を弱めたり、不正出血が起こりやすくなる可能性があります。


服用中の薬がある場合は、ピルを処方してもらう時に医師に伝えましょう。また、ピルの服用中に別の薬を服用する場合も、医師に相談してください。

ピルの飲み忘れがあった時

驚いている女性

ピルを飲み忘れると、避妊効果は弱まってしまいます。特に1週目に飲み忘れて、他の避妊方法をしないままで性交すると、妊娠する確率は上がります。
飲み忘れた時には、次のような対処をしましょう[*3]。

1錠を飲み忘れた場合

最後に服用してから24時間以上48時間未満経った場合です。
この場合は、「飲み忘れた錠剤をできるだけ早く服用」します。残りの錠剤は、予定通りに服用しましょう。

この場合でも、緊急避妊薬を服用するなどの緊急避妊方法は通常必要ありません。ただし、同じ周期や前の周期の最終週に飲み忘れていたら、緊急避妊を考えてもよいでしょう。

2錠以上飲み忘れた場合

最後に服用してから48時間以上経った場合です。
飲み忘れた錠剤のうち、「一番最後に飲み忘れた錠剤をできるだけ早く服用」します。残りの錠剤は、予定通りに服用しましょう。また、毎日決まった量を服用して7錠以上の服用が終わるまでは、コンドームを使うか性交を避けます。

なお、2錠以上飲み忘れた場合、妊娠確率をできるだけ抑えるには、飲み忘れた週に合わせて次のように対応します。

・「第1週」に2錠以上飲み忘れたら
休薬期間または第1週に性交をしていたら緊急避妊を検討しましょう。

・「第2週」に2錠以上飲み忘れたら
直前の7日間、連続して正しく服用していれば、緊急避妊をする必要はありません。

・「第3週」に2錠以上飲み忘れたら
休薬期間をつくらずに、今飲んでいるシートの錠剤全部を飲み終えたらすぐに次のシートを飲み始めましょう。

ピル服用中の妊娠に関する注意点

受診する女性のイメージ
Lazy dummy

ピルの服用中には、次のことに注意しましょう。

妊娠の可能性や不調がある場合には速やかに受診を

ピルを飲んでいるけれど、妊娠しているかもしれないと感じたり、妊娠したことがわかったら、すぐにかかりつけの産婦人科で診てもらいましょう

なお、妊娠中のピルがママと赤ちゃんに安全かどうかはまだよくわかっていませんが、妊娠していることを知らないでピルを飲み続けた場合と一般的に赤ちゃんに先天異常がみられる確率はあまり変わらないとも言われています[*4]。

とはいえ、妊娠は妊娠検査薬が陽性になっただけでは確定できません。産婦人科を受診して、超音波検査でよく調べてもらってください。

ピル服用中でもセーフセックスを心がける

ピルを服用していても、その効果に影響を与える他の薬を併用していたり、ピルを飲み忘れたりすることで妊娠の確率が上がってしまうことはあります。また、ピルは性器ヘルペスやクラミジア感染症など、 「性感染症」を予防することはできません

性交する時には、コンドームを併用し、セーフセックスを心がけましょう。

まとめ

朝起床したての女性
Lazy dummy

正しい方法でピルを飲み続けていれば、99%以上の避妊効果が期待できます。ただし、飲み忘れたり飲み始めの時期が不適切だと、妊娠してしまうことがあります。また、併用する薬によっては避妊効果が弱まってしまうこともあります。ピルを飲んでいてもセーフセックスを心がけ、妊娠したかもと思ったら早めに産婦人科に相談しましょう。

(文:大崎典子/監修:窪麻由美 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]Hatcher,RA et al.:Contraceptive Technology:Twentieth Revised Edition.New York.Ardent Media.2011
[*2]「低用量経口避妊薬,低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬ガイドライン(OC・LEP ガイドライン)2020年度版」(日本産科婦人科学会, 日本女性医学学会 編集・監修
[*3]『病気が見える vol.9 婦人科・乳腺外科』メディックメディア
[*4]Dr.北村のJFPAクリニック Q&A北村所長に聞いてみよう:Q13ピルをやめたら、ちゃんと妊娠できるの?

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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