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2021年09月27日 15:30 更新

【医師監修】妊婦が受ける「糖負荷検査」って何?前日や当日の食事はどうしたらいい?

妊婦健診では「糖負荷検査」という検査が行われます。糖負荷検査は何のための検査で、どのようなやり方をするのでしょうか? 検査の前日~当日の食事は食べていいのかどうかや食事内容の注意点などについて説明します。

妊婦が受ける糖負荷検査とは

疑問のイメージ
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糖負荷検査は、妊婦健診で必ず行われる検査です。ここでは、糖負荷検査がどんな検査か説明します。

妊娠糖尿病を診断するための重要な検査

糖負荷検査とは「妊娠糖尿病を早めに発見し、ママとお腹の赤ちゃんの健康を守るための検査」です。糖分の入った検査用のジュースを飲んで、血液中の糖分の量(血糖値)を測定します。

「妊娠糖尿病」は、通常の糖尿病にまでは至っていない軽い血糖値の異常ですが、それでも、妊娠中の女性が妊娠糖尿病になると、ママやお腹の赤ちゃんに様々な悪影響の及ぶリスクが高くなります。

ママの場合は、妊娠高血圧症候群、羊水の量の異常、肩甲難産(分娩時に赤ちゃんの肩が引っかかって難産になること)、網膜症・腎症などが起こりやすくなります。また、赤ちゃんでは、流産早産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、新生児低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡などのリスクが高まります。

ですから、妊娠糖尿病による悪影響のリスクを抑えるために、妊娠糖尿病になった人やなりそうな人を少しでも早く見つけ出し、適切な治療や対処をすることが大切なのです。そのため妊娠中に糖負荷検査が行われます。

糖負荷検査には2種類あります

糖負荷検査には、妊娠糖尿病の診断が必要かどうかチェックするために行う「50gグルコースチャレンジテスト(50gGCT)」と、妊娠糖尿病の診断のために行う「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」の2種類があります。

2種類とも糖分の入った液体を飲んでから血糖値を測るので混同されることもありますが、検査の意味合いはまったく違います。それぞれの検査について詳しくはこのあと解説します。

糖負荷検査の対象となる人

受診する女性のイメージ
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糖負荷検査を受ける妊婦さんは次の3パターンです。

(1)妊娠初期に随時血糖を測り、高い数値が出た妊婦さん

妊娠初期には、妊婦健診で随時血糖法という血液検査を行います。この検査で高い血糖値が出た妊婦さんは妊娠糖尿病の可能性があるため、糖負荷検査を受けることになります。

なお、この場合は「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」を受け、妊娠糖尿病かどうかの診断が行われます。このとき75gOGTTは行わず、血液検査で「HbA1c(ヘモグロビンA1c。過去1~2ヶ月前の血糖値の状態がわかる指標)」を確認することもあります。

(2)妊娠24~28週ごろの妊婦さん

妊娠24~28週ごろになると、すべての妊婦さんを対象に糖負荷検査または随時血糖測定が行われます。

なお、この場合の糖負荷検査では「50gグルコースチャレンジテスト(50gGCT)」が行われます。

この検査で高い血糖値が出た場合は、さらに「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」を受けることになり、妊娠糖尿病かどうかの診断が行われます。

(3)妊娠糖尿病になりやすい体質が疑われる妊婦さん

次のような妊婦さんは、もともと妊娠糖尿病になりやすい体質の可能性があります。そのため、「50gグルコースチャレンジテスト(50gGCT)」ではなく最初から「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」を受けて、妊娠糖尿病かどうか診断されることもあります。

・肥満である
・家族に糖尿病の患者がいる
・35歳以上の高年妊娠に当たる
・尿糖の陽性が続いている
・以前に大きな赤ちゃんを産んだことがある
・原因不明の流産・早産・死産をした経験がある
・羊水が多過ぎる(羊水過多)
・妊娠高血圧症候群である、または過去に妊娠高血圧症候群になったことがある

糖負荷検査の方法

チェックリストのイメージ

50gグルコースチャレンジテスト(50gGCT)

妊娠24~26週ごろ、妊娠糖尿病の診断が必要かどうかふるいにかける(スクリーニングする)ために行う検査です。

食事時間に関係なく50gのブドウ糖が入った甘い液体を飲み、60分後に採血して血糖値を調べます。

75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)

妊娠糖尿病かどうか診断するための検査です。「妊娠初期の随時血糖や50gグルコースチャレンジテストが陽性となった人」「妊娠糖尿病になりやすい体質が疑われる人」に行います。

10時間以上食べ物を食べずに過ごした状態で病院に行き、空腹のままで採血を行った後、75gのブドウ糖が入った甘い液体を飲んでから、30分後、60分後、120分後に採血して血糖値を調べます。

妊娠糖尿病と診断される血糖値

「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」の結果、次の1つ以上となった場合は、妊娠糖尿病と診断されます。

「妊娠糖尿病」の診断基準

・空腹時血糖値が92mg/dl(5.1mmol/l)以上
・75gブドウ糖液を飲んでから1時間後の血糖値が180mg/dl (10.0mmol/l)以上
・75gブドウ糖液を飲んでから2時間後の血糖値が153mg/dl (8.5mmol/l)以上

なお、妊娠糖尿病は妊娠による影響で起こるもので、糖尿病にまでは至っていない状態のことです。そのため、出産後にはいったん改善することが多いのですが、妊娠糖尿病になった女性は将来、糖尿病を発症するリスクが高いと言われています。

妊娠糖尿病とは別に、妊娠中に初めて糖尿病であることがわかった場合は「妊娠中の明らかな糖尿病」と診断されます。これはすでに糖尿病にかかっている状態のことです。

「妊娠中の明らかな糖尿病」と診断される血糖値

随時血糖値が200 mg/dl以上になるか、75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)の2時間後の血糖値が200 mg/dl以上

となった場合は、「妊娠中の明らかな糖尿病」の可能性があります。

その場合は、次のどちらかが該当すれば、妊娠中の明らかな糖尿病と診断されます。

・空腹時血糖値が126mg/dl以上
・HbA1cの値が6.5%以上

糖負荷検査の前日や当日の食事は?

食事する夫婦
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糖負荷検査が行われる前日・当日は食事をとってもいいのでしょうか? 

妊婦の検査は食事制限が不要な場合が多い

それまで血糖値が高くなければ食事制限がない

今まで血糖値が高くなく、妊娠糖尿病になりやすい体質が疑われていない妊娠中期の妊婦さんの場合は、「50gグルコースチャレンジテスト(50gGCT)」を受けますが、この場合は検査前の食事制限は通常ありません。

それまで血糖値が高い場合は食事制限がある

「妊娠初期の随時血糖や50gグルコースチャレンジテスト(50gGCT)で陽性となった人」「妊娠糖尿病になりやすい体質が疑われる人」は、「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」を行って妊娠糖尿病の診断をします。この検査では、検査前10~14時間の絶食が必要です。

そのため、当日の朝食や前日の夜の食事制限が指示されるでしょう。
詳しくは事前に検査を受ける産婦人科に確認しておきましょう。

甘いものを食べ過ぎないように

検査の前日夜や検査当日の朝に、普段は食べない甘いものや菓子、果物を食べ過ぎたり、糖分が含まれるスポーツドリンクやジュースをたくさん飲むのは避けましょう。

ブドウ糖や果糖を摂り過ぎると、血糖値が上昇します。そのため、検査の時にいつも以上に高い血糖値が出る可能性があるからです。
正しい検査結果が出るように、暴飲暴食は控え、いつものご飯を食べて検査に出かけましょう。

ただ、事前の絶食が必要な「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」も、検査前の長期間にわたって糖質の摂取量が少なすぎると、かえって検査で血糖値が高く出てしまうことがあります。そのため、検査実施前の3日間は炭水化物を150g以上含む食事を摂ることが必要です。

糖負荷検査後の注意点

さまざまな食材
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検査当日は時間にゆとりを持って出かけましょう。
「50gグルコースチャレンジテスト(50gGCT)」では甘い液体を飲んでから1時間後、「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」では甘い液体を飲んでから2時間後まで採血があります。

その他、検査後の注意点もお伝えします。

正常値だった場合

妊娠糖尿病の可能性はありません。とはいえ、検査後に油断して食べ過ぎるのはNGです!引き続き、バランスの取れた食事を心がけて、適度な運動を行っていきましょう。

妊娠糖尿病と診断された場合

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妊娠中は体への負担を考え、運動療法はあまりできないので、食事療法を中心に、血糖値をしっかりと管理していきます。

数値としては、血糖値が食前で100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満になるのを目指します。具体的な方法は主治医の指示に従ってください。

インスリン治療が必要になることも

なお、食事内容を見直しても血糖血がコントロールできない場合は、インスリンを使った治療に取り組むことになります。ただ、妊娠糖尿病の場合、産後はインスリン注射が必要なくなる場合が多いです。

ママと赤ちゃんの健康と命を守り、安全なお産を行うためにがんばっていきましょう!

まとめ

晴れ晴れとした女性のイメージ
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糖負荷検査は妊娠糖尿病を見つけ出すための検査です。
糖負荷検査を受けるのは、妊娠初期に血糖値が高かった妊婦さん、妊娠糖尿病になりやすい体質が疑われる人、妊娠24~28週ごろの妊婦さんです。検査前に絶食するかどうかは検査内容によって異なるため、事前に医療機関に確認しておきましょう。また、この検査には時間がかかるため、検査の日は時間のゆとりを持って臨んでくださいね。

(文:大崎典子/監修:浅野仁覚先生)

※画像はイメージです

参考文献
●「妊娠糖尿病」日本産婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=3
●「糖尿病と妊娠に関するQ&A」日本糖尿病・妊娠学会
https://dm-net.co.jp/jsdp/qa/

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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