「三角食べ」のメリットは?子どもには教えるべき?【管理栄養士監修】
食べ方の1つに「三角食べ」というものがありますが、実際のところ、よいのか悪いのか、気になる方もいるのではないでしょうか。特に子どもの食育を考えている親御さんは、三角食べを教えるべきなのかどうか、迷いますよね。この記事では三角食べのメリット・デメリットから、食育のポイントまで管理栄養士がお伝えします。
三角食べとは?
三角食べとは、ご飯、おかず(主菜・副菜)、汁物を一口ずつ順に食べることを繰り返し、それぞれを均等に食べ進めていく食べ方のことです。少しずつ交互に食べ進めていくので、一膳を食べきることができなくても栄養が偏りにくくなるなどのメリットがあります。一時期、食育の一環として三角食べを指導していた学校もあるので[*1]、子どものころに学校で教わったという方もいるかもしれませんね。
三角食べのメリット
では、三角食べのメリットとしてどんなものがあるのか、より詳しく見ていきましょう。
1.栄養バランスを取りやすい
三角食べは少量ずつ交互に食べ進めていくため、1品だけでおなかいっぱいになることを防ぐことができ、栄養のバランスを取りやすいと考えられます。もし途中で満腹になって残してしまったとしても、献立をまんべんなく食べていればある程度の栄養を摂取することができるからです。
2.よく噛むことにつながる
ご飯とおかずを一緒に食べることで食感の違う食材が口の中に入るため、やわらかいご飯だけを噛むときよりも噛む回数が増えることが期待できます。よく噛むことで唾液の分泌量が増え、消化吸収を助けることにもつながります。
また、ご飯を口に入れたあとにまた口を開けておかずを口に入れるので、一口量が多くなりにくく、早食いの予防に役立つともいえるかもしれませんね。
3.口中調味で白ご飯をおいしく食べられる
同じ主食でも塩や砂糖の入っているパンと比べて白ご飯は味がなく、単独で食べるのが苦手な人も少なくないでしょう。しかし、白ご飯とおかずを一緒に食べることで口の中でご飯に味付けをしていくことができます。これを「口中調味(または口内調味)」といいます。
口中調味は、味の薄い白いご飯を味の濃いおかずでおいしく食べるという日本の食文化でもありますね。おかずばかりたくさん食べると塩分もとりすぎてしまうので、適度に白ご飯を入れて全体のバランスをとっていきましょう。
4.偏食の癖がつきにくい
好きなものを最初に食べきってしまうと、ほかのものがお腹いっぱいで食べられない、ということになりがちです。三角食べをすればいろいろなものを順番に少しずつ食べることができるので、偏食を防ぐことができますね。
三角食べのデメリット
三角食べには、バランスよく食べることができたり、噛む回数が増えるなどのメリットが考えられるとお伝えしました。しかしメリットばかりでなくデメリットもあります。
1.汁物でご飯を流し込んでしまう
メリットのところでよく噛むことにつながるとお伝えしましたが、三角食べのやり方によっては、かえって噛まずに飲み込むことを助長する場合もあります。ご飯やおかずが口に残ったまま汁物を飲むようなせっかちな食べ方をしてしまうと、ご飯をあまり噛まないまま、汁で流し込むことになるからです。ご飯やおかずをしっかり噛んで飲み込んでから汁物に手を伸ばすことが大切になります。
2.血糖値を上げにくい食べ方ではない
血糖値の上昇を緩やかにする観点から、三角食べで均等に食べるよりも食べ順を重視するという考え方もあります。野菜や肉・魚などを食べてからご飯などの糖質を多く含む食品をとる方が食後の血糖値の上昇を抑えることができるという説もあるためです[*2]。
子どもに三角食べを教えた方がいい?
三角食べにはメリットとデメリットの両方があることをお伝えしました。では、子どもへの食育という観点ではどうなのでしょうか?
三角食べを無理に教える必要はない
幼児期は「ばっかり食べ」で食べる子も多く、三角食べを教えるのが難しいということがあります。献立に苦手なものが入っていれば、「交互に食べようね」と声をかけても最後まで手をつけなかったりしますよね。三角食べを無理に教えることはありません。食事を楽しみながら栄養をとれることを第一に考えましょう。
家庭での食育のポイント①|全部食べられていれば「ばっかり食べ」でもOK
食材をバランスよく食べること、よく噛んで食べることなどを目標にすると、自然と三角食べに近づいていくかもしれませんね。
家庭での食育のポイント②|いろいろな食材への興味を促す
ばっかり食べでもよいですが、好きなものだけを食べて食事をおしまいにしてしまうと栄養バランスが偏ってしまいます。「これはどんな味かな?」と子どもがほかの食材にも興味を持つように声をかけてみましょう。
また、毎日を楽しく元気に過ごすために、いろいろな食べ物を食べるのだということを伝えるのもよいですね。たとえば、「お肉を食べると筋肉モリモリになるよ!」「お野菜を食べると風邪をひきにくくなるよ!」「ご飯を食べたらエネルギー満タン! いっぱい遊べるね!」といった具合に話してみてください。
家庭での食育のポイント③|食事の基本的なマナーを伝える
食べ方だけでなく、基本的な食事のマナーを伝えることも大切です。椅子の座り方や食具・食器の持ち方、口の中に物が入っているときはしゃべらないといった食事中の所作など、マナーはたくさんあります。みんなで気持ちよくおいしく食事をするためにも、簡単なルールが理解できる3~4歳ごろから少しずつ伝えていきましょう。
家庭での食育のポイント④|一番大切なのは一緒に楽しむこと
食べ方やマナーなどばかりを気にしてしまうと、せっかくの食事も緊張した時間になってしまいます。もちろん、食べ方やマナーも大切ですが、一番に考えたいのは一緒に楽しく食べることです。食事の時間が楽しいものになるような雰囲気づくりを心がけましょう。
また、一緒に食べることがひいては食べ方やマナーを覚えさせることにもつながっていきます。大人の食べている様子を真似ることで、食べ方やマナーを学んでいくという面があるからです。子どもと一緒に食卓を囲み、「これも一緒に食べてみよう!」「こっちはどんな味かな?」と楽しく食べることができるとよいですね。
まとめ
三角食べのようにご飯とおかず・汁物を均等に食べて、栄養の偏りを予防したりよく噛む習慣をつけることもよいことですが、一番大切なのはおいしく、楽しく食べることです。ぜひ大人も一緒に食卓を囲み、食事のマナーや食べ方などのお手本を見せながら食事を楽しめるといいですね。
(文:宗政祥子 先生/監修:川口由美子 先生)
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