出産・産後 出産・産後
2022年12月08日 16:51 更新

【助産師解説】母乳が出なくなったときの復活方法とは?考えられる原因と対処

今まで問題なく出ていた母乳が出なくなると、どうすればいいのか心配になってしまいますよね。そこで今回は、母乳が出なくなった時に考えられる原因と母乳の復活方法を紹介します。

母乳が出なくなる原因は「母乳を出していないこと」

母乳は様々なホルモンが影響しますが、「プロラクチン」というホルモンが重要な役割を果たします。プロラクチンは出産直後に最も多く分泌されますが、そのあとは時間の経過とともに減少しつつも、乳頭への刺激のたびに分泌されるという特徴があります。

授乳のたびに上昇するプロラクチン
プロラクチンは、母乳育児中のママは出産から1週間で出産直後の半分程度、母乳育児をしないママは1ヶ月程度で妊娠していない時期と同じレベルまで戻る。

また母乳を作り続けるには、赤ちゃんが欲しがるだけ頻繁に授乳をし、乳房内から乳汁をしっかりと飲みとってもらうことが大切です。乳房内の母乳を空に近づけることで、「タンク(乳腺)が空っぽだから、もっと母乳を作ろう!」と体に認識させ、母乳を作る工場(乳汁分泌細胞)が働き、母乳を産生してくれます [*1]。

母乳が出なくなった時に考えられる原因と対処方法

母乳が出なくなった場合は、原因に応じた対応が必要です。よくある原因と対処方法について、順を追って確認しましょう。

原因1「ラッチオン」に問題があってよく飲めていない

赤ちゃんが大きく口を開けずに飲んでいたり、、赤ちゃんやママの体勢の問題などでラッチオン(吸着)が正しくできておらず「浅飲み」をしていることが、母乳が減ることにつながることがあります。赤ちゃんの浅飲みで母乳が十分に排出されない状態が続くと、体は「母乳を必要以上に作っている」と判断し、母乳の産生量を減らしてしまうのです。

ラッチオンが上手くいっていない場合、

・授乳時に乳頭痛がある
・授乳回数のわりに体重が増えない
・授乳を終えても乳房の張りが改善しない

などのサインがみられます。

対処法|しっかり深くくわえさせる

赤ちゃんのラッチオンと授乳方法を見直してみましょう。

① 抱き方をチェック
少し後方にもたれかかりながら、胸を張るような体勢になり、授乳クッションや足台などを使って赤ちゃんの口元がをおっぱいの位置に来るように調整します。

② おっぱいの支え方をチェック
赤ちゃんが大きく口を開いたら、手をUの字にして軽くつぶして含ませます。

③ おっぱいのくわえさせ方(ラッチオン)をチェック
ママの乳輪が赤ちゃんの口の中に全部隠れるぐらい深くくわえさせましょう。

---------------------------
ラッチオンについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎「ラッチオン」のコツ

原因2「授乳間隔」が開いて母乳が溜まった状態が続いた

母乳を出していない状態が72時間(3日)ほど続くと、母乳を作る細胞(乳汁分泌細胞)が減り、母乳を作る量も減ってしまいます。そのため、しばらくミルクメインで飲ませていたり、ママの体調不良など何らかの事情で授乳していない日が続くと、いざ授乳を再開しても母乳の出方が悪くなっていることがあるのです。

対処法|授乳回数を増やす

母乳を乳房内からしっかりと排出することが大切になります。今後も母乳育児を続けるのであれば、授乳回数を増やして赤ちゃんに母乳を吸いきってもらうようにしましょう。

なお、事情があって、赤ちゃんに直接授乳できない時間が続く場合は、その間は搾乳で母乳を排出して、母乳が出なくなることを予防しましょう。

---------------------------
▶︎搾乳方法の解説漫画はこちら

原因3「水分摂取量」が不足している

ママの水分不足が母乳の出方に影響を与えている可能性もあります。母乳は88%が水分です[*2]。授乳量によって個人差はありますが、母乳育児をするママはどうしても水分不足になりがちなのです。

対処法|こまめに飲む

授乳中のママは、母乳になる分も考慮して少し多めに水分を摂るようにしましょう。食事とは別に1日1リットル程度の水分摂取が必要とされています。水分は摂っているようで意外と摂っていないので、気付いたときにこまめに飲むのが望ましいです。

基本的にはどのような飲み物でもOKですが、コーヒーや紅茶などに含まれるカフェイン、清涼飲料水やジュースに含まれる糖分は、摂りすぎを避けたいところ。飲みすぎには気をつけましょう。定番の麦茶はもちろん、水や白湯を選ぶのもいいと思います。水をそのまま飲むのが苦手な方は、レモン果汁を垂らして風味をつけるのもおすすめです。

---------------------------
授乳中の水分摂取について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎授乳中の飲み物、NGドリンクは?

原因4「卒乳」が近づいている

そのほかにも、卒乳が近づき授乳回数が減少したことで母乳が出なくなりつつあることも考えられます。赤ちゃんが離乳食をしっかり食べられているようであれば、そのままおっぱい卒業を迎えるのもいいでしょう。

また、稀なケースですが、強いストレスによって母乳が出なくなることもあります。

原因5「母乳不足感」で母乳が出ないと思い込んでいる

母乳の出方に問題はないのに「母乳が足りないかも」という不安からくる母乳不足感の可能性もあります。特に出産後数週間は授乳に慣れておらず、不安を感じるママもいます。

授乳したのに赤ちゃんが泣いたりすると「足りてないのかも」と思うかもしれませんが、泣くのはお腹が空いたときだけではありません。また、おっぱいが張らなくなって「出なくなった?」と不安になる人もいるようですが、授乳が軌道に乗ると十分に出ていても次第に乳房が張らなくなっていくこともあります。母乳が足りているのに、安易にミルクを補足すると、授乳の間隔があき、母乳分泌が減ることもあります。

対処法|専門家に相談する

体重が順調に増えていて、排泄の回数・量も問題なくあり、赤ちゃんの機嫌もよければ、母乳は不足していないと考えられますが、心配なようであれば、かかりつけの産婦人科や助産師に相談して、授乳の状態をチェックしてもらうのもいいでしょう[*2] 。また、体重増加量など赤ちゃんの状態に関しては小児科で相談できます。

まとめ

母乳を排出しない状態が続くと、「母乳はもう必要ない」と体が判断して徐々に母乳を作らない状態になります。
母乳が出なくなってきたと感じたら、赤ちゃんのラッチオン(吸着)の確認、搾乳による母乳の排出、こまめな水分摂取などを検討しましょう。
授乳回数や母乳を飲む量は赤ちゃんによって異なります。母乳の量が足りないかもしれないと感じるようであれば、産婦人科や助産師、小児科医にアドバイスを求めましょう。

(文:本河美佳/監修:坂田陽子 先生)

参考文献
[*1] 水野克己 著「これでナットク母乳育児」へるす出版(2009)
[*2] 水野克己ほか「母乳育児支援講座」(南山堂)


※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-