【医師監修】肥満女性の妊娠はハイリスク!?妊娠前から必ず知っておきたいこと

【医師監修】肥満女性の妊娠はハイリスク!?妊娠前から必ず知っておきたいこと

妊娠中の体重増加の目安が以前よりもゆるやかになりましたが、妊娠前からの肥満――特にBMIが30を超える高度肥満の場合、さまざまなリスクが高まる可能性があるため、注意が必要です。肥満女性がぜひ知っておきたい、妊娠のリスクをまとめました。


この記事の監修ドクター
葵鍾会 ロイヤルベル クリニック勤務。福島県立医科大学、同大学院卒業後、社会保険二本松病院、南相馬市立総合病院産婦人科医長、福島県立医科大学附属病院総合周産期センター(母体・胎児部門)助教、東府中病院副院長、アルテミスウィメンズホスピタル院長を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、医学博士、J-MELSベーシックコースインストラクター。

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元々肥満の女性が妊娠する確率とリスク

肥満は、妊娠中の健康リスクを高めるとされています。ただし、事前に知って対処しておけば、リスクをできるだけ減らすことが可能です。今回は肥満女性の妊娠について、大切なことを紹介します。

妊娠前の肥満度をチェック

まずは、今の自分(非妊娠時)の肥満度をチェックしてみましょう。肥満にあたるかどうかについては、日本肥満学会が「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI※)25以上のもの」と定義づけています。なお、肥満の中でもBMIの違いにより、度合いが1~4度まで、以下のように分かれていて、肥満3度以上は高度肥満といわれています。

・BMI 25.0以上30.0未満=肥満1度
・BMI 30.0以上35.0未満=肥満2度
・BMI 35.0以上40.0未満=肥満3度
・BMI 40.0以上=肥満4度

※BMI=[体重(kg)]÷[身長(m)2]

ただし、BMIは身長と体重から計算されただけの値です。筋肉量や骨密度などによって体重に差が生じるため、BMI25.0以上であっても、医学的に減量を必要とする肥満の状態であるとは限りません。とはいえ、自分がどこに当てはまるかを確認しておくことは、ひとつの目安になるでしょう。

また、妊娠前のBMIによって、妊娠中の適切な体重増加の目安も異なってきます。やせている人はより多くの体重増加が必要となる一方、肥満の人は体重が増えすぎないように注意が必要です。なお、肥満による妊娠・出産のリスクはこのあと解説しますが、やせている人にも、早産や低出生体重での出産のリスクがあります。

妊娠中の体重増加の目安[*1]
妊娠前のBMI 体重増加の目安
低体重(やせ):BMI 18.5未満 12~15kg
ふつう:BMI 18.5以上25.0未満 10~13kg
肥満1度:BMI 25.0以上30.0未満 7~10kg
肥満2度以上:BMI 30.0以上 個別対応(上限5kgまでが目安)

肥満だとなかなか妊娠しない&流産リスクが高まる

肥満の女性が妊娠することで生じるリスクのお話の前に、肥満の場合、そもそも妊娠しづらい、そして流産するリスクが高いことをご説明しましょう。

たとえばBMIが35以上の高度肥満の場合、受胎(妊娠する)までにかかる期間が2倍に増加するというデータがあります[*2]。また、BMI30以上の女性では流産率が増加するという研究結果もあります。つまり、肥満女性には、そもそも授かりづらいという問題があるのです。

肥満が母体におよぼすリスク

続いて、肥満女性が妊娠した場合の、母体へのリスクを見ていきましょう。BMI30以上の人では妊娠中、以下のような問題の起こる可能性が高くなるといわれています。

■妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖代謝異常のことで、血糖値が基準よりも高くはなっているものの、まだ糖尿病には至らない、軽度のものを指します。治療がスムーズに進まない場合には、流産・早産や妊娠高血圧症候群、羊水過多症、肩甲難産、網膜症、腎症などを引き起こしやすくなるほか、巨大児、胎児死亡になるリスクを高めるといった、胎児への影響も懸念されます。

■妊娠高血圧(妊娠20週以降に初めて発症する高血圧)
妊娠20週以降に初めて血圧が高くなることを指し、通常は妊娠37週以降に起こります。適切に血圧がコントロールされず高血圧が続くと、腎臓などに障害が出ることがあるため、軽度から中等度の場合は安静、重度の場合は降圧薬の投与など、高血圧の度合いによって血圧をコントロールする治療を適切に行います。

■妊娠高血圧腎症(タンパク尿を伴う妊娠高血圧)
妊娠高血圧同様、妊娠20週以降に初めて確認された高血圧に加え、過剰な尿タンパクを伴うのが特徴です。妊婦の手足がむくむことがあり、重度になると、子癇(しかん)と呼ばれる全身のけいれん発作や、全身の血管障害(臓器障害)が起こることがあります。また常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり※)や早産が起こりやすくなり、出生直後の新生児にも健康上の問題が生じるリスクが高まります。

※本来は胎児が生まれたあとに続いて子宮の壁からはがれて体外に排出されるべき胎盤が、妊娠中や分娩前にはがれてしまうこと

■妊娠期間が42週間以上に長引く(過期妊娠)
妊娠期間が42週以上になる妊娠を「過期妊娠」といいます。妊娠期間が長引くことから羊水が濁ったり少なくなったりといった子宮内環境の悪化が生じ、赤ちゃんの体調が悪化するおそれがあります。

■帝王切開の増加
赤ちゃんが大きくなりすぎることなどにより経腟分娩(けいちつぶんべん)が難しくなり、帝王切開が増えることがあります。

肥満が胎児におよぼすリスク

母体の肥満は胎児にも、たとえば以下のようなリスクをもたらす可能性があります。

■胎児が非常に大きい(在胎不当過大)
おなかにいる期間に比べて赤ちゃんが大きくなることを「在胎不当過大」といいます。母胎の肥満は在胎不当過大の原因のひとつです。

■低体重の胎児(在胎不当過小)
在胎不当過大とは反対に、おなかにいる期間に比べて赤ちゃんが小さくなるのが「在胎不当過小」です。肥満は在胎不当過小の直接の原因ではありませんが、高血圧によって間接的に在胎不当過小が起こることがあります。

■先天異常
生まれる前の段階で生じる、さまざまな身体的異常をまとめて先天異常といいます。ほとんどの先天異常の原因は不明ですが、母胎の肥満が何かしらの影響を与えている可能性もあります。

妊娠期間中の肥満は専門医のケアが必要

個人差はありますが、高度肥満の妊婦さんの妊娠経過については、専門医によるケアが必要です。適切な診察、管理、治療を行わなければ、母体と胎児の両方に悪影響が生じる可能性があります。肥満の度合いによっては希望する産院での出産が難しかったり、自宅から離れた医療機関に通院したりする可能性もあることを、あらかじめ知っておきましょう。

肥満で妊娠した場合の過ごし方

妊娠前のBMIが肥満に当てはまる場合、どのようなことに注意して、妊娠期間を過ごせばよいのでしょうか。

妊娠中のダイエットは医師の指導に沿って

妊娠中にダイエットの必要が生じた場合は、かかりつけの産婦人科医の指導のもとで行っていきましょう。適切な体重管理の方法は一人ひとりで異なります。必要なカロリーや母体、胎児の状況を確認しながら、できる範囲で減量にのぞむことが大切です。

無理なダイエットは禁物

肥満が妊娠中のリスクを高める可能性があるといっても、独自の判断で無理にダイエットをするのはNGです。体重を落とすことばかりに気をとられ、極端な食事制限をすると、母体も胎児も十分な栄養をとれず、かえって悪影響になることが考えられます。栄養バランスの整った食事を、ゆっくりよくかんで、規則正しく食べるなど、食べすぎを防ぐことは大切ですが、無理なダイエットは絶対にやめましょう。

調理法と食べ方を工夫した食事

調理法などの工夫により、食事のカロリーを適切に抑えることが可能です。たとえば油を使わない蒸し料理にする、脂質の少ない肉(胸肉や鶏肉のささみなど)や魚を選ぶなど、調理法や食材を見直すだけでもカロリーは変わってきます。

また、野菜を大きめに切ってかむ回数を増やす、献立の一品一品からそれぞれ一口分だけ食べる量を減らすなど、食べ方の工夫も有効です。肥満の人の多くは早食いの習慣があることがわかっています[*3]。ゆっくりよく噛むことで満腹感を感じやすく食べ過ぎを防ぐともいわれています[*4]。

このようにちょっとずつ工夫を重ねて食べすぎを防ぐことは、体の健康だけでなく、心の健康においても重要です。妊娠中はできるだけストレスを避けたほうがよいとされています。食べすぎが自己嫌悪につながり、ストレスとなってしまうこともあるでしょう。食べ方の工夫で食べすぎが防げると、そうしたストレスを避けることも可能です。

なお、妊娠中の食事には胎児への影響から注意したいポイントがいくつかあります。以下の記事で詳しく説明しているので、こちらも参考にしてください。
【医師監修】妊娠中の食事の注意点!OK or NGの食べ物は?

散歩などの軽い運動

散歩(ウォーキング)やジョギング、エアロビクス、水泳といった有酸素運動には、脂肪を燃焼させるため肥満の改善が期待できます。また、肥満になると血糖値も高くなりやすいですが、有酸素運動には血糖値を下げる効果もあります。

ただし、運動の効果は3日ほどでなくなってしまうので、継続することが大切です[*5]。自分が無理なく続けられる有酸素運動を生活の中に取り入れるのがよいですよ。目安としては、1日30分程度の運動を週3日行うくらいがよいでしょう。

妊娠中にウォーキングやマタニティスイミング、マタニティビクスなどを行っても問題ありません。ただし、頻繁におなかが張るといった症状があったり、妊婦健診で子宮頸管が短いと言われている、あるいは、医師から安静を指示されているなどの場合には、控えるようにしてください。

リスクを減らすために妊娠前のダイエットを

可能であれば、まだ妊娠にいたっていない段階でダイエットをしておくと、妊娠中のリスクを減らすことができます。

妊娠前にダイエットするとリスクが減少する

妊活中など、これから妊娠を望んでいる場合、妊娠前に少しでも体重を減らしておくことで、妊娠中に生じるリスクを減らせる可能性があります。ただし、急激なダイエットはNG。リバウンドする可能性もあります。

体重や体脂肪率にもよりますが、1ヶ月間で体脂肪1kgの減量を目標すると、無理のない範囲で減量が可能でしょう。最低でも3ヶ月間、減量する体脂肪量が多い場合は、6ヶ月~1年ほどかけて、妊活のかたわら、ゆったりと減量を行うことをおすすめします。

妊娠前の高度肥満には内科治療や外科治療も

BMI35以上の高度肥満の場合は、食事療法、運動療法、薬物療法、行動療法などの内科治療や、胃や小腸の外科手術などを行うこともあります。必ず専門医に相談し、本当に実施の必要があるのかどうかを確認するとともに、リスクやメリットなどについても理解しておくことが大切です。

まとめ

いきすぎた肥満は健康に影響を与えます。それは妊娠や出産においても同じです。肥満の影響により、そもそも妊娠しづらくなるほか、妊娠中のリスクも上がり、妊娠経過に通常以上の注意が必要になります。健康診断などで肥満を指摘されたことのある人は、できれば妊娠前に減量をしておきましょう。

また、肥満の目安となるBMIが25以上だからといって、必ずしも減量の必要があるわけではありません。身長と体重以外の指標や検査結果も併せてトータルで判断し、自分に合った対策をとっていくのがよいでしょう。

(文:山本尚恵/監修:浅野仁覚 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]国立健康・栄養研究所:妊娠中の適切な体重増加量について
[*2]Fertility and Sterility, VOLUME 90, ISSUE 5, SUPPLEMENT, S1-S6, NOVEMBER 01, 2008
[*3]厚生労働省:eヘルスネット 速食いと肥満の関係-食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」
[*4]吉松博信:1.肥満症の行動療法 日本内科学会雑誌第100巻 第4号
[*5]国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター:糖尿病の運動のはなし

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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