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2023年01月16日 16:47 更新

産後の性欲低下を引き起こす3つの原因とは?1割は性欲up!?セックスレス回避のためにできる5つのこと【医師監修】

産後、セックスから遠ざかってしまう夫婦は少なくありません。セックスレスが続きその他のコミュニケーションまで希薄になれば、その後の夫婦の関係性に大きく影響することも。産後女性の性欲減退はなぜ起こるのか、また産後のセックスレスとそれが夫婦関係に悪影響を及ぼすのを防ぐポイントについて解説します。

産後のセックスはいつから再開してOK?

問題を抱えている夫婦のイメージ

「妊娠は性生活のターニングポイント」 といわれるほど、夫婦間においてセックスの在り方が変わる時期といえます。とくに産後は、育児に時間をとられたり、女性の性欲が低下したりすることがあり、セックスから遠ざかってしまう夫婦も少なくありません。

夫婦間のコミュニケーション手段はもちろんセックスだけではありませんが、夫婦関係の維持において、セックスが重要な役割を果たすのも否定できないところ。そもそも、女性は出産で体に大きなダメージを受けるわけですが、産後いつごろからセックスを再開してもよいのでしょうか。

「1ヶ月健診で異常なし」と診断されたときが目安

産後の体の回復には個人差があるため適切な再開時期は人によって多少異なりますが、「産後の1ヶ月健診で医師から『異常なし』と診断されたら」をひとつの目安とするとよいでしょう。

これは出産方法にかかわらず、帝王切開の場合も基本的に同様ですが、経腟分娩に比べてもう少し時間が必要なこともあります。

出産後すぐのセックスは傷の回復の遅れに注意

産後しばらくセックスするのを待ったほうがよいのは、体の回復が十分でない時期にセックスすると、傷の回復を妨げるリスクがあるからです。

産後すぐの体は、出産によって腟などの産道(分娩時の赤ちゃんの通り道) が傷付いています。また、子宮内では胎盤が剥がれた箇所からまだ出血が続いています。

とくに出産時には、外陰部~肛門にかけての「会陰(えいん)」と呼ばれる部分を切開したり、裂傷が生じたりすることがありますが、この傷が完全に治らないうちにセックスしてしまうと、傷跡に血がにじんだり、痛みを感じることもあります。また、清潔が保てていないと性交をきっかけに傷口が化膿するリスクもあります。

産後の体調や状況による個人差が大きい

とはいえ、産後セックスを避けるべき期間というのは、はっきり決まっているわけではありません。出産によって受ける会陰や腟などの傷の具合は人それぞれですし、その治るスピードも個人差があります。

一般的に「産じょく期」と呼ばれる産後6~8週の時期は、女性の体が妊娠前と同様の状態に回復する時期なので、健診の際などに自分の状態はセックスをしても問題ないかどうか、医師に相談するのがよいでしょう 。性生活のことは少し聞きづらいかもしれませんが、恥ずかしいことではないので、遠慮なく相談してみましょう。

ただし、産後のセックス再開にあたっては体がまだ回復していないことだけでなく、心の準備が整っていないことが障壁になることもあります。とくに気になる「産後の性欲」について次の項で解説します。

産後に性欲がなくなる原因

赤ちゃんを見守る夫婦
Lazy dummy

体は順調に回復していても、産後しばらくはそもそも性欲がなくなり、セックスを求めなくなる女性もいます。それはなぜなのでしょうか。考えられる要因をいくつか紹介します。

出産によるホルモンの変化

産後はホルモンの分泌が急激に変化しますが、それが性欲に影響を与えることもあります。

たとえば、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」は、妊娠期間中、増加していきますが、出産とほぼ同時に急激に減少します。エストロゲンが不足すると、腟の弾力性は減り、乾燥しやすくなります。この状態になると性交時に痛みを感じることがあり、性欲の減退につながります。

また、授乳時には、そのたびに「プロラクチン」というホルモンが分泌されます。プロラクチンには性欲を抑える働きがあります 。こうしたホルモンバランスの変化が性欲にも影響し、セックスに消極的になる可能性があります 。

子育て中心の生活

産後はどうしても、子育てが生活の中心になりがちです。慣れない赤ちゃんのお世話に一生懸命になり、それ以外のことを考える余裕がなく、性生活にまで気が回らないこともあるでしょう。

なお、産後の女性は、セックスをしなくても、授乳などによる赤ちゃんとのふれあいで心が満たされた状態にあるともいわれています 。これらのことから性欲がわかず、セックスを求めない人がいても不思議ではありません。

痛みが気になってセックスが怖い

「セックス時に生じる痛み=性交痛」がセックスに対する不安となり、産後の性欲を低下させる一因になっていることもあるようです。

ここまでで解説したとおり、腟や会陰の傷の回復が不十分なことによる痛みのほか、ホルモンバランスの変化により以前よりも腟の分泌物が減って濡れにくくなるため、人によっては妊娠前より性交痛を感じやすくなる ケースもあります。そのことが恐怖となり、セックスに前向きになれないこともあるでしょう。

産後のほうが、性欲が強くなる人も

ただし、なにごとにも個人差はあります。

授乳育児中の女性の性欲について調べた研究では、授乳中に性的な関心が「減少した」と答えた人が42.4%、「変わらない」が48.9%、「増加」が8.7%だったと報告しているものもあります[*1] 。

つまり、4割ほどの人はたしかに授乳中に性欲が減っていましたが、約半数の女性は産前と産後で変化はなく、「1割弱の女性は産後、むしろ性欲が増加した」わけです。産後、性欲が減少せずにかえって強くなったとしても、それも異常なことではありません。あまり考えすぎないようにしてくださいね。

セックスレスを防ぐための産後の性生活の心得

手をつなぐカップル
Lazy dummy

もちろん、夫婦の愛情表現の方法はセックスだけではありません。しかし、夫婦間のコミュニケーションにおいて、セックスが大切な役割を果たす存在であることもまたたしかでしょう。そのため、産後しばらくして女性の身体が回復して以降も、セックスレスが続くのはできれば避けたいもの。

ここでは、産後セックスレス回避のために知っておきたいポイントを紹介します。

①「短い時間」でセックスを楽しめる工夫をする

産後は赤ちゃんのお世話で体が疲れていたり、赤ちゃんが寝ている横でセックスをすることに罪悪感を覚えたりすることもあり、妊娠前にしていたようなセックスをするのが難しいという人もいるでしょう。

でも、短時間のセックスならできそうという場合、やり方を変えてみるのもひとつの方法です。「朝の空き時間に服を着たまましてみる」「一緒にお風呂に入ったときにそのまましてみる」 など、短時間で楽しめるような工夫をしてみると、案外いいかもしれませんよ。

②セックスができなくても「スキンシップ」を欠かさない

産後の女性は常に赤ちゃんとふれあっているため、「ふれあい過多」という状態になることもあります 。そうした状態にあると、これ以上のふれあいは不要と考え、夫とのスキンシップを避けたい気持ちになることもあるでしょう。

そんな時でも夫と接すること自体を避けるのではなく、軽いスキンシップだけはしておくと、セックスレスの予防につながりやすくなります。「マッサージをしてもらう」「定期的にハグする」など、気軽にスキンシップができる方法を習慣にできるといいですね。

③子供を預けて「夫婦だけの時間」をつくる

たまには赤ちゃんを両親やシッターさんなどに預けて、夫婦二人だけの時間をつくってみては。パパとママだけになることで、お互いの魅力にあらためて気付くきっかけになるかもしれません。

④産後こそ「夫婦の会話」を大切に

とくに初めての産後はそれまでになかった「育児」という要素が生活に加わることで、それまで見えなかった夫の新たな一面が見えてくることが多いものです。そのため、嫌なところがやたらと目に付くようになったと感じる人もいるかもしれません。

ですが、このような時期であるからこそ、夫婦の会話を大切にすることは重要です。コミュニケーションをとってみると、発言や行動の背景に思ってもみなかった理由が隠れていることに気づくかもしれません。夫婦で気兼ねなく会話ができることは、その後の育児においても、きっと前向きな影響を与えてくれるはずです。

⑤夫からの誘いを断るときは「気づかい」を忘れない

ここまでで解説したとおり、産後女性はなかなかセックスに前向きになれないことも多いものです。セックスレスにならないよう努力することは大切ですが、だからといって無理をしてセックスに応じるべきというわけではありません。ただしセックスの誘いを断る際には、相手への気づかいを忘れないことが必要です。

むげに断ると、夫は自分自身が拒絶されているように感じてしまいがちです。「体が十分に回復していないこと」「産後の今はセックスへの関心が向きづらい時期であること」などを話し、夫のことが嫌いになったから断っているわけではないことを伝えておくと、夫も理解しやすくなるでしょう。

産後の女性は心身ともに大変なことが多く、周囲への気づかいをするのが難しいことはわかります。しかし、そんな時でも夫の誘いは軽視せず、できるだけ真摯に向き合うことを心掛けてみてください。

気分のひどい落ち込みは「産後うつ」の可能性も

セックス以外のことにも前向きになれなかったり、自分を責めて涙が出てしまったりなど、気分の大きな落ち込みがある場合は、「産後うつ病」の可能性もあります。

産後うつ病とは、その名のとおり出産後の女性がうつ状態になることをいいます。出産がきっかけとなって発症し、日本では産後女性の10~15%に見られるというデータがあります[*2]。
重症化すると自殺願望が芽生えるほか、子どもへの身体的虐待やネグレクトの危険も生じます。

そのため、産後女性に「不眠」「不安」「イライラ」「自分を責める」などの心の不調が2週間以上続く場合はがまんせず、できるだけ早めにかかりつけの産婦人科や精神科、心療内科などの医療機関に相談しましょう。

産後の情緒不安定は、適切なケアや治療を受けることで、改善につながることが少なくありません。自分を責めたり、一人で抱え込んだりせず、できるだけ早く専門家の力を借りるようにしてください。

まとめ

幸せそうな家族のイメージ
Lazy dummy

産後は心身ともに不安定な状態であることが多く、それが性欲に影響することは多々あります。出産によるダメージからの回復には個人差があるため、性欲がわかない自分を悲観したり、セックスの再開を焦ったりする必要はありません。
ただ、セックスレスの状態があまり長く続くと、その後の夫婦関係に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。会話などで夫婦間のコミュニケーションをとったり、軽いスキンシップは続けたりなど、パートナーへの気づかいは忘れずに。無理のない範囲で、セックスを含めたコミュニケーションがとれると良いですね。

(文:山本尚恵/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]「セックス・セラピー入門」(日本性科学会)p289
[*2]日本産婦人科医会「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」p26

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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