【医師監修】試してみて! つわり時期におすすめの飲み物
つわりで十分な食事がとれないときも、脱水やつわりの重症化を防ぐために水分補給は大切です。なるべく吐き気をもよおさず、辛い症状をやわらげてくれる、自分に合った飲み物をぜひ見つけてみてください。
つわりで吐き気がひどいときに試してみてほしい飲み物8選
つわりのときは、少しでも飲みやすい飲料で、こまめに水分補給しましょう。
(1)口がスッキリする無糖の炭酸水
炭酸の刺激と喉ごしによって口の中がスッキリし、吐き気が紛れる場合もあります。ただし飲み過ぎるとげっぷが出やすくなり、それがかえって吐き気を誘発することもあります。
(2)ミネラルも補給できるスポーツドリンク
つわりのときは、ビタミンやミネラルなどもとれる冷たいスポーツドリンクを飲みやすいと感じる人は多いかもしれません。ただし、糖分のとり過ぎにならないよう、摂取量には気をつけましょう。
(3)果汁100%のオレンジジュース
冷たい果汁100%のオレンジジュースやグレープフルーツジュースなどが飲みやすい場合もありますが、「呑酸(胸やけがして、胃酸が上がってくる感じ)」が強い人の場合は、苦手に感じるかもしれません。
ビタミン補給にも役立てたいなら、加熱処理の過程で栄養が失われる濃縮還元タイプではなく、ストレートタイプを選ぶとよいでしょう。濃縮還元タイプには砂糖が加えられているものもあるので、糖分摂取量に気をつけている場合は、その有無も確かめておくと安心です。
(4)ノンカフェインの麦茶
カフェインを含まない麦茶は妊婦さんが安心して水分補給しやすい飲料です。若干ですがカリウムやカルシウムなどのミネラルもとれます。
カフェインについては、厚生労働省や食品安全委員会が世界保健機関(WHO) の報告などをもとに妊婦さんに対してとりすぎに注意喚起しています。詳しくは下記の記事を参考にしてください。
(5)たんぽぽコーヒーやたんぽぽ茶もノンカフェイン
「たんぽぽの根の部分を使ったたんぽぽコーヒー」「たんぽぽ茶」はノンカフェインなので、妊娠中でも量をあまり気にせずに飲めます。
メーカーにより、根の乾燥方法や製造方法、根のほか葉や茎を使っているかなどによって名前を「コーヒー」または「お茶」に分類しているようです。
(6)牛乳ならカルシウム補給も
カルシウム補給したい妊娠中は、水分補給に牛乳を試してみても。妊娠中にとったカルシウムの一部は、赤ちゃんの骨や歯の形成に使われます。
ただ、牛乳は100g当たり、普通牛乳で67kcal、低脂肪乳で46kcalのエネルギーがあります[*1]。つわりで食事がとれないときはエネルギー摂取にも役立ちますが、食事がとれるようになってからも牛乳で水分摂取しているとカロリーのとりすぎにつながることがあります。飲み過ぎには気を付けましょう。
なお、妊娠中に摂取する乳製品の量は、妊娠初期・中期は、牛乳であれば「1日にコップ1杯または牛乳瓶1本分」程度、妊娠後期や授乳期はそれに「牛乳コップ半分」程度を追加して摂取することが推奨されています[*2]。
(7)ビタミンB6を摂取できるスムージー
好みの野菜や果実でつくったスムージーは、食事が十分にとれない時期にぜひ用意したい飲み物です。ぜひ「ビタミンB6」を多く含むバナナなどの食材を材料に加えましょう。
ビタミンB6はアメリカではつわりが重症化して治療が必要になったとき、症状緩和の薬物治療で選ばれているビタミンです[*3]。
ビタミンB6がなぜ吐き気やおう吐などの軽減に効くのかはまだよくわかっていませんが、ビタミンB6はアミノ酸の代謝や免疫機能の維持、皮膚のバリア機能、赤血球の合成、神経伝達物質の合成、脂質代謝などに関係する水溶性のビタミン。野菜類、穀類、魚介類、種実類などに多く含まれています。
ビタミンB6は、バナナのほかに、トマトジュース、アボカド(生)、ブロッコリー、モロヘイヤ、プルーン(乾)、いちじく(乾)、干しぶどう(乾)などにも豊富に含まれています。
「スムージーには、ビタミンB6だけでなく葉酸も豊富なブロッコリーやモロヘイヤを加えるのもいいですね。体調が少し落ち着いているときは、ひと手間かけて、おいしいスムージーを作り、自分を労ってあげましょう。
調理が辛いときは市販のものをいろいろ試して、それぞれの原材料や風味を楽しみ、自分で作るときのレシピの参考にしてもよいですね」
(8)手軽で安心な水
これといって特別に飲み物を用意しなくても、水でももちろん水分補給はできます。妊娠中に避けたい成分などを含んでいないか気にすることもなく飲めて、手軽で安心。
冷たいほうが飲みやすければ冷やしてもOKですが、消化機能が低下している時期なので、あまり冷たくし過ぎないほうがベターです。
つわり時期の飲み物に関する疑問を解決
つわりがひどい時、飲み物すら飲めないときはどうすればよいのでしょうか。
何も飲めないときはどうする?
氷をなめる
人によって違いますが、「冷たい食べ物」は比較的においを感じにくく、口にしやすい人が多いので、飲み物すら受け付けないときは、氷をなめて水分補給しましょう。
水だけでなく、飲みやすい飲料を凍らせた氷を作っておいてもいいですね。野菜スープや味噌汁など、塩味の氷が食べやすい場合もあります。飽きないようにいろいろ試してみましょう。
まったく︎水分を受け付けなかったら?
何も飲めず、氷をなめるのも無理で吐いてしまうような場合、とくにトイレに行く回数・尿量が減っているときは、産科に連絡し、指示に従いましょう。
「受診を促されたら、脱水状態を起こしている危険があるので、なるべく誰かに付き添ってもらい、タクシーや他者が運転する車で受診を。自分で運転して移動するのはやめてください」
つわりで吐いたあとの飲み物は?
吐いてしまったあとは、水分補給のために少量ずつでも経口補水液やスポーツドリンクをとりましょう。
「飲みづらかったら、口をゆすいだあと、経口補水液やスポーツドリンクで作った氷をなめるのが楽かもしれません。経口補水液やスポーツドリンクで氷を作り置きしておき、ぜひ試してみてください」
栄養ドリンクは飲んでいいの?
栄養ドリンクの中には、妊娠中には控えたい成分を含むものがあります。
まず製品に記載されている分類を確かめ、「一般用医薬品」と「医薬部外品」については、他の薬品やサプリと同様に、必ずかかりつけの産科医に相談して飲みましょう。
「清涼飲料水(炭酸飲料含む)」の分類のものも、成分表示をよく確かめてから飲む用心が必要です。先にも述べた通り、とりすぎに注意が必要なカフェインなど、特定の成分が一般用医薬品や医薬部外品以上に含まれているものもあるのです。
多量の糖質やアルコールを含む製品もあります。栄養ドリンクを飲むと、必要な栄養が摂れそうだったり、元気が出そうな感じがしますが、妊娠中はおすすめしません。栄養ドリンクで一時的に解決しようとするのではなく、栄養はできるだけ食事を中心にとるようにし、だるさや疲れ、眠気を感じたときは、十分に体を休めるようにしましょう。
つわりの時期は水分補給が重要
つわりの時期の食事は「食べられるものを食べられるときに食べられる分だけ」で構いませんが、水分は意識的に、こまめにとることが大切です。
脱水症状に注意して
つわりでおう吐が続くと、脱水を起こし、血液が濃縮されてしまい、全身のすみずみまで血が巡らなくなってしまいます。脱水を起こすほど重症化したつわりは「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と言って、治療が必要になった段階です。
そのままにしておくと肝機能や腎機能に障害が生じ、意識をなくしたり、脳に影響が及ぶ可能性もあります。下記のような状態になったら、かかりつけの産院に連絡し、指示を仰ぎましょう。
・1日何度も吐いてしまう
・食事も水分も受けつけない
・急激に体重が減り、元の体重の5%以上落ちた
・排尿回数や量が減っている
少量でもこまめに水分をとる
一度にたくさんは飲めなくても、少しずつ、飲む回数を増やして水分摂取しましょう。液状だと飲みにくい場合は、のどに負担の少ないゼリータイプを選んでも。
経口補水液には、パウチパック入りのゼリータイプも市販されているので、症状がひどくなったときに備えて、つわりがひどい妊婦さんは常備しておくとよいかもしれません。
妊娠中に避けるべき飲み物
先にも述べた通り、カフェインを含む飲み物はとり過ぎに注意が必要です。
そして、アルコールを含む飲料を飲むのは時期や量に関係なく、ママと赤ちゃん、両方に悪影響が出る可能性があるため妊娠中はNGです。
また多くの清涼飲料水は砂糖が多量に含まれているので、糖分の摂取量に注意しながら、飲みすぎないようにしたいものです。
世界保健機関(WHO)は糖類の摂取量を1日の総エネルギー摂取量の10%未満、成人では1日当たり砂糖25g程度(総エネルギーの5%未満)とすることを推奨しています[*4]。
まとめ
つわりの時期には食が進まないのと同時に、水分補給も大変かもしれません。しかし、脱水状態になるのを防ぐためには、こまめな水分補給が必要です。つわりが重症化して治療が必要になる「妊娠悪阻」の予防として、まず脱水予防が大切なのです。自分にとって飲みやすい飲み物をいくつか探し、常備したり、その飲み物で氷を作って備えておきましょう。工夫しても水分がとれないときや、トイレの回数や尿量が著しく減ったときなど、不安に思ったら産科に連絡し、主治医に相談しましょう。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*2]厚生労働省:妊産婦のための食事バランスガイド
[*3]産婦人科診療ガイドライン―産科編2020,p108
[*4]食品安全委員会 食品安全総合情報システム「世界保健機関(WHO)、ガイドライン「成人及び児童の糖類摂取量」を発表」
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます