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2021年06月15日 11:30 更新

【助産師監修】タンデム授乳で上の子が太る?気持ち悪いと感じたときはどうする?

新しい赤ちゃんが生まれたけれど上の子もまだ小さい場合、2人の授乳をどうしようか迷うママも多いのでは? そんなとき、「タンデム授乳」という方法があります。今回は、タンデム授乳のやり方やメリット・デメリット、「気持ち悪い」と感じたときの対処法などを紹介します。

タンデム授乳とは

母親と赤ちゃんの兄弟

人によっては、「タンデム授乳」はあまり聞きなれない言葉かもしれません。タンデム授乳は普通の授乳と何が違うのでしょうか?

タンデム授乳ってどんなもの?

自転車やバイクの2人乗りを英語で「タンデム」と言いますが、タンデム授乳は兄弟や姉妹2人の子どもに同時におっぱいを飲ませることです。以前は、今よりも卒乳の時期が早めだったり、2人目を妊娠したら上の子の授乳はやめるという考えが主流だったので、2人同時に飲ませる人は少なかったかもしれません。

でも今は、厚生労働省が「母乳は乳児にとって最良のものである」としていますし、WHOが2歳過ぎまでの母乳育児を推進していることもあり、下の子が生まれても上の子の授乳を続けたいと思っていたり、実際にタンデム授乳をしているママもいるようです。

タンデム授乳のメリット・デメリット

授乳中
Photo by on Unsplash

タンデム授乳にはいろいろなメリットもありますが、デメリットもいくつかあります。実際にタンデム授乳を始める前には、どちらも知っておくことが大切です。

痩せるって本当? タンデム授乳のメリットとは

タンデム授乳をすることは、次のようなメリットがあります。

●妊娠しても上の子とのスキンシップがとれるため、上の子の気持ちが安定して赤ちゃん返りするなどの変化が少ない
●母乳が出ているのに無理に断乳しなくていいので、乳腺炎になりにくい
●2人に吸われることで、母乳の出がよくなる
●下の子が母乳をあまり飲まなくても上の子が吸うため、うつ乳になりにくい
※うつ乳:母乳が乳房内にたまってしまうこと

またママにとっては、2人分の授乳をすることでエネルギー消費量が増え、妊娠中に蓄えられた脂肪も消費されやすいため、体重が減って結果的に妊娠前の体型の維持になるというケースもあります。海外のある研究では、完全母乳で一人の赤ちゃんを育てる場合は1日に500kcalが消費されるため、母乳の授乳期間が長いママほど、産後の体重が減りやすいとされています[*1]。

ただし、体重の増減を決めるのは摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスなので、食事のとり方などによって個人差が大きく、母乳育児だから痩せるとは言い切れない面もあります。

上の子が太る? タンデム授乳のデメリットとは

では、タンデム授乳のデメリットはなんでしょうか?

上の子と同時の授乳だと、下の子は落ち着いて飲めなかったり、満足のいくまで母乳を飲めずに必要な栄養が摂れないケースが出てくることも考えられます。逆に上の子は、1日3回の食事をしっかり食べているうえ、下の子と同じように満足のいくまで母乳を飲んでいると、栄養の摂りすぎになって太ってしまうかもしれません

一方、授乳中のママは、いつもより多く摂取エネルギーが必要なので、栄養バランスの取れた食事を必要量しっかり食べていないと、授乳による消費エネルギーが多いために必要以上に痩せてしまうこともあるでしょう。赤ちゃん一人に授乳している場合でも通常より1日当たり350kcal増やすことが推奨されているので、タンデム授乳ではこれよりさらに多くエネルギーを摂るような意識をもちましょう

また、赤ちゃんのペースに合わせて飲ませていると授乳回数が多くなり、ママはゆっくり休んだり自分の時間がとれなかったりする状態が続きます。さらに、2人を抱っこして1日に何回も授乳させるので、ママの体への負担にもなって腰痛や肩こりの原因になることもあるでしょう。

タンデム授乳のやり方・コツ

授乳

タンデム授乳は2人同時に飲ませるだけでなく、1人が飲み終えてから次の子に飲ませるというやり方もあります。子供たちの年齢や飲み具合、ママの好みなども考えて、やりやすい方法で飲ませるといいですね。

基本は、下の子から先に授乳させる

おすすめは下の子から飲ませること

上の子がよく飲みたがることも多いのですが、上の子を先に飲ませると、下の子が十分に飲めなくなってしまうことがあります。

特に、産後3~5日ごろまで出る栄養価の高い「初乳」は、感染から赤ちゃんを守る役割がありとても大切なので、新生児にはたっぷり飲ませたいものです。初乳の後に分泌される「成乳」も赤ちゃんの成長に必要な栄養素ばかりなので、できるだけ母乳の出がいいうちに下の子にたっぷり飲ませてから、上の子に飲ませるようにしましょう

2人同時に授乳しても問題ない

下の子が飲むのに慣れてきて、その子なりの量を飲めているようだったら、2人同時に飲ませてもいいですね。この場合は、左右のおっぱいをそれぞれ同時に吸わせます。ただ、2人を抱っこして授乳するとき、授乳姿勢によっては乳首が痛んだり傷ができたりすることがあるので、無理な姿勢にならないよう注意しましょう。

なお、2人同時に飲ませるとき、左右のおっぱいはそれぞれの子が交互に飲むようにしましょう。右が上の子で左が下の子、などと決めてしまうと、飲む子に合った量の母乳が作られるおっぱいになります。

すると、2人の吸い方や飲み具合が違うので、左右の乳房の大きさが違ってくることがあるのです。さらに、赤ちゃんの視覚の発達の面からも、左右両方からママのおっぱいを見ることが望ましいでしょう。

以下の記事では授乳のポジショニングについて解説しています。こちらも参考にしてください。
【助産師解説】写真で学ぶ授乳姿勢!パターン別授乳姿勢と4つのポイント

上の子には優しい気持ちで接する

2人同時のタンデム授乳が難しいときには、できるだけ下の子にたっぷり飲ませることを優先したいものです。上の子は赤ちゃんより先に飲みたがるかもしれませんが、「赤ちゃんに飲ませたら絵本を読もうか」など、後の楽しみを提案して待ってもらうよう言い聞かせましょう。

ただ、上の子の赤ちゃんに対する嫉妬の気持ちや、ママを独占したい・甘えたい、という気持ちを汲んであげることも大切です。赤ちゃんの授乳を先にさせてくれたときは、あとで上の子をほめたりスキンシップをたっぷりとるなど、フォローを忘れないようにしましょう。

双子は2人同時に授乳させる

双子の赤ちゃん

双子のタンデム授乳は、できるだけ2人同じように母乳を飲ませた方が楽なので、順番ではなく2人同時に授乳するようにしてみるとよいでしょう。

赤ちゃんの位置は、座ったママの両脇に2人それぞれを横向き(フットボール抱き)にして抱きかかえるようにしてもいいですし、あおむけに寝そべったママの両側から赤ちゃんがおっぱいに覆いかぶさるような姿勢でもいいでしょう。枕やクッションなども使って、できるだけ楽に授乳ができるような姿勢を見つけてくださいね。

タンデム授乳の悩み・疑問

赤ちゃんと兄

タンデム授乳をすることで、悩みや疑問が出てきたときの対応を知っておきましょう。

妊娠中もタンデム授乳できる?

タンデム授乳を始める前に、下の子の妊娠中の授乳をどうしたらいいか迷うママも多いのではないでしょうか。

授乳するとオキシトシンというホルモンが分泌されますが、このホルモンには子宮を収縮させる作用があります。そのため妊娠中の授乳は、早産・流産のリスクを高める可能性があるとの意見もありますが、実際に妊娠中の授乳が早産・流産の原因になることを示した研究報告はないので、経過が良好であれば、妊娠中に母乳を飲ませることは問題ないとされています

ただし、以前に流産や早産の経験があったり、切迫早産の兆候がある場合には、医師から断乳・卒乳を勧められることがあるでしょう。いずれにしても、医師と相談しながら決めるのが安心です

上の子への授乳が気持ち悪い…ストレスを感じたときは?

就寝前に飲み物を飲む女性

実際にタンデム授乳をしてみると、ママにとって身体的だけでなく精神的な負担となり、母乳育児に対して嫌悪感を抱くようになることもあるものです。小さくてかわいい赤ちゃんに比べて上の子が大きく感じ、授乳させることに「気持ち悪い」などと違和感を覚えたり、上の子が赤ちゃんより先に飲みたがったりたくさん飲もうとすると、イライラすることもあるものです。

こうしたマイナスな感情が強くなると、上の子への授乳はやめたいという思いにつながることがあります。でもこれは決して特別なことではないので、自分を責めたりしないでくださいね

ストレスを感じていたり疲れていると思ったら、ママ自身のケアを優先してみてください。できるだけ家族にも協力してもらい、お茶をゆっくり飲む、1人でお風呂に入るなど、短時間でも自分だけの時間を持ちましょう。こうした時間は、ママが心のバランスを取り戻したり、リフレッシュするために必要なのです。また体を休めるため、子供たちが昼寝をしたときなどに、ママも一緒に横になるといいですね。

タンデム授乳中の寝かしつけが難しいときは?

タンデム授乳では、2人同時に寝かしつけることは難しいので工夫が必要です。夜の寝かしつけには、次のような方法を試してみましょう。

●昼間たっぷり外遊びさせるなどして上の子がしっかり体を動かすようにしたり、昼寝の時間をずらし、夜に上の子と下の子の眠くなる時間がずれるようにする
●下の子をパパなど家族に見てもらっている間に、上の子を先に寝かしつける
●ママの片側で下の子に添い乳をし、反対側に上の子を寝かせてパパなど家族に寝かしつけてもらう
●下の子を抱っこひもで抱いて授乳させながら、上の子の背中をトントンするなどして寝かしつける

まとめ

授乳

タンデム授乳は、上の子の母乳育児も続けたいママにとってはよい方法ですし、メリットもあります。ただ、デメリットもいくつかあり、特にママにとっては負担になることもあると知っておくことが大切です。タンデム授乳のメリット・デメリットをよく考えたうえで、無理のない方法で母乳育児が続けられるといいですね。

(文:村田弥生/監修:坂田陽子 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 日本ラクテーション・コンサルタント協会『母乳育児支援スタンダード第2版』p70(医学書院)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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