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2021年06月18日 17:25 更新

【医師監修】ふわふわ! ぐるぐる! 産後に多い「めまい」の原因と対処法

妊娠・出産でママの体には大きな変化が起こるため、産後しばらくは体調を崩しやすい時期です。不調の一つとして「めまい」が起こることもありますが、その原因にはさまざまなものが考えられます。そこで今回は、産後のめまいの原因や対処法についてまとめました。

産後に起こるめまいの原因

具合が悪そうな赤ちゃんを抱っこする女性
Lazy dummy

「めまい」というのは、実際には自分や周囲は動いていないにもかかわらず、動いているように感じてしまう異常な感覚のことです。原因はさまざまですが、おもに体のバランスを保つ機能の働きが乱れたときに起こります。

ホルモンバランスの変化による自律神経の乱れ

妊娠すると出産直前まで、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌量は右肩上がりに増えていきます。これらのホルモンは妊娠を維持するために不可欠だからです。ところが、出産するとこれらのホルモンの分泌量は急激に低下します。

これらの分泌量が急減すると自律神経が乱れ、めまいを感じやすくなることがあります。生理前に女性ホルモンが急に減少することで起こると言われている「月経前症候群(PMS)」や閉経期に起こる「更年期障害」でも、めまいはよくみられます。

自律神経が乱れると、めまいのほか、肩こり、頭痛、手足のしびれや冷え、顔のほてり、動悸、下痢や便秘など、さまざまな症状があらわれることがあります。

なお、自律神経の乱れが原因の場合はたいてい、「体がふわふわと浮くように感じる」めまいが起こります。

慣れない育児や寝不足などによる疲れやストレス

めまいの原因の一つに、「睡眠不足」もあります。自律神経の乱れは、睡眠不足によっても起こるからです。また、家事や育児による「疲れやストレス」が原因で自律神経の働きが乱れ、めまいが起こることもあります。

産後のママは、体調が回復していない時期にもかかわらず、慣れない育児で大忙し。赤ちゃん中心の生活では、自分の生活リズムが一定しなかったり、十分な休養や睡眠がとれなかったりすることが多いですよね。そこで、自覚していなくてもストレスがたまっていき、めまいを起こすことも考えられます。

貧血

「貧血」は、赤血球に含まれる血色素・ヘモグロビンの濃度が低下した状態を言いますが、貧血がひどくなると症状として体がふわふわするように感じる「めまい」や「ふらつき」を起こすことがあります。

産後のママの貧血というと、授乳が原因と思うかもしれません。たしかに、母乳には鉄分が含まれているので、おっぱいを飲ませているとママの体から多少の鉄分は失われます。でも、授乳だけが原因で貧血になることはあまりありません。

産後に貧血になりやすいのは、「妊娠前からもともと貧血気味であった人」や「出産時に出血量が多かった人」「出産に長い時間がかかった人」です。

生理再開で一時的にめまいが出ることも

授乳中に生理が再開すると、もともと貧血気味の人では一時的に貧血がひどくなって、めまいを起こすようになるかもしれません。生理の出血で鉄分が失われるうえ、授乳によっても多少鉄分は出て行ってしまうからです。

なお、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、成人女性のうちおよそ14%に貧血の疑いがあったことがわかっています[*1]。貧血の女性は少なくないのです。

脱水

「脱水」状態になったときも、症状の一つとしてめまいを起こすことがあります。脱水とは、体内の水分が不足している状態を言い、摂取する水分より体内から失われる水分が多くなることで起こります。

私たちの体の約60%は水分でできていて、水分は私たちの体を健康に維持するためには必要不可欠なものです。もし、脱水を起こして症状が進むと、命にかかわることもあります。

授乳中のママは水分不足になりやすいもの。たくさんの水分が体から出ていく分、授乳中はとくに意識して多めに水分を摂ることが大切です。

耳鳴りを伴うめまいはメニエール病かも

耳鳴りのある女性のイメージ

産後に特有の病気というわけではありませんが、めまいが続くときは「メニエール病」が疑われる場合もあります。

メニエール病とは、内耳の膜の内側を満たしている内リンパ液が過剰になり、神経を圧迫する病気です。30~40歳代の人、とくに女性のほうが男性よりやや多くかかると言われており、発症にはストレスや不規則な生活が関係していると考えられています[*2]。

メニエール病になると、突然「ぐるぐると目のまわるようなめまい」が起こり、耳鳴りや難聴などの症状を伴うことが多いでしょう。さらに、自律神経症状として、吐き気、嘔吐、冷や汗、顔面蒼白、脈が速くなるなどの症状が見られることもあります。

片頭痛持ちの人のめまい

20~40代の女性は「片頭痛」持ちの女性が多いものですが、片頭痛持ちの人によくあるめまいもあります。

この場合、頭痛とともに、またはその前兆として、「目の回るようなめまい」または「体がふわふわするように感じるめまい」を起こすことがあります。

血圧の異常が原因のことも

高血圧で起こるめまい

血圧は多少高くても、自覚症状はないのが普通ですが、かなり高いときは、頭痛やめまい、肩こりなどが起こりやすくなるとも言われています。産後6~8週間の「産褥期」は血圧が上がりやすく、出産から1週間以内は血圧がピークに達するという報告もあります。

とくに妊娠中に妊娠高血圧症候群と診断され重症化した人や、妊娠34週未満で妊娠高血圧症候群を発症した人は、産後も症状がなかなか改善しないことがあります。血圧が過度に高まると、脳の血管が詰まったり、やぶれて出血する「脳卒中」が起こりやすくなります。

血圧に異常があると診断されたことがある人は、主治医の指示に従って必要がある場合は産後も治療を受けるようにしてください。自宅に血圧計がある人は定期的に計ってみるとよいですね。高い数値が計測されたら、受診するようにしましょう。

低血圧で起こるめまい

逆に、血圧が低すぎる場合も、体がふらふらするめまいを起こします。血圧が下がり過ぎると、脳の血流量が減り酸欠となって平衡感覚が失われるからです。

低血圧はもともとそうなりやすい体質の人に起こることが多いのですが、高血圧の薬を飲んでいる人や栄養不足の人などに起こることもあります。

急に立ち上がったり体を動かしたときに立ちくらみを起こす「起立性低血圧」も、血圧が急降下することで起こります。

産後にめまいが起きたときの対処法

産後にめまいが起こったときは、まずは安静にすることが大切です。それでも治らないときや別の症状が出てきたときは、早めに受診してくださいね。

産後のめまいはいつまで続くの?

受診する女性
Lazy dummy

ここまでで解説したように、産後にめまいを引き起こす原因にはさまざまなものがありますが、出産で女性ホルモンが急に減少したことによるめまいの場合は、産後しばらくして女性ホルモンの分泌が再開し、徐々に元の状態まで回復することで落ち着いてくると考えられます。

生理の再開がひとつの目安

女性ホルモンの分泌が再開したかどうかの目安になるのが、「生理の再開」です。

産後いつ生理が再開するかは個人差が大きいのですが、授乳していない女性では「産後2ヶ月ほどは無月経」のことが多いようです。授乳していない場合、産後3ヶ月までに約70%の人が生理再開したという報告もあります[*3]。

授乳していると、母乳を分泌させるホルモン「プロラクチン」の影響で生理の再開はこれより遅くなることが多く、「産後数ヶ月~2年程度」経って再開することもあります。

生理が再開すると、卵巣から女性ホルモンが分泌されるようになるので、ホルモンバランスも妊娠前の状態に戻ってきます。

なお、産後初めての生理は排卵なしに起こることが多いのですが、ときに生理前に排卵している場合もあります。つまり、産後で生理の再開がまだだからといって絶対に妊娠しないというわけではありません。

放置すると悪化する可能性もある

めまいやそれに伴うほかの症状が起こっていても、毎日忙しいママは自分のことは後まわしにしてしまうかもしれません。けれども、めまいが続いているのに放置をすると、症状がいつまでも続いたり、時には悪化していくこともあります。

とくに、メニエール病が原因の場合、治療せずにめまいをくり返していると症状が悪化し、進行状況によってはひどいめまいのために日常生活に支障が出るほどになることもあります。

メニエール病以外の原因によるめまいの場合も、何らかの病気の症状である可能性があるので、めまいをくり返すときや続いているときは、早めに受診しましょう。

治らないときは何科を受診したらいい?

めまいが続くときや、めまいに加えて頭痛など他の症状も見られるようなとき、何科を受診したらいいのか迷うかもしれませんね。出産直後なら、まずは出産した医療機関を受診して相談しましょう。

出産した医療機関が遠方などで気軽に受診できない場合や産後しばらく経っているようなら、まずは近くの耳鼻咽喉科(耳の症状を伴う場合はとくに)や内科で相談してみるとよいでしょう。

めまいを引き起こしていると疑われる原因によって、ほかに神経内科、脳神経外科、心療内科などへの受診が必要なこともあります。

すでに生理が再開している人で、いつも生理前に症状がひどくなるようなら、PMSによるめまいの可能性もあり、この場合は婦人科で相談できます。受診した医療機関では専門外の原因が疑われる場合は、自分の症状に合った適切な診療科を教えてもらいましょう。

授乳中は鉄分の多い食事を

鉄分豊富な食品のイメージ
Lazy dummy

受診して、めまいの原因が鉄分の不足とわかった場合には、鉄を多く含む食品を積極的に食べるようにしましょう。その際、ビタミンCや動物性たんぱく質も一緒に食べると、鉄の吸収がよくなります。

鉄を多く含む食品は、レバー、かつお、きはだまぐろ、めざし、調整豆乳、糸引き納豆、ゆでた小松菜や春菊、ほうれん草、ひじきなどです。 鉄の吸収がよくなるビタミンCが多い食品は、緑黄色野菜、果物など。

こうした食品の中から、動物性のものと植物性のものをバランスよく組み合わせて食べるよう心がけましょう。産後の貧血について、くわしくは下記の記事を参照してください。

水分をしっかり摂取

脱水が原因でめまいが起こることもあると解説しましたが、そもそも私たちの体にとって水分は不可欠なものなので、日ごろから水分をしっかり摂ることは産後に限らず大切です。

体格や運動量などにもよりますが、私たちの体が1日に必要とする水分量は、「およそ2.5リットル」と言われています。このうち、1日3回の食事から摂取できる水分は約1.0リットル、さらに、体内で栄養素がエネルギーになるときに約0.3リットルの水分が生成されます。

そのため、飲みものとしては、「1日に約1.2リットル」を目安に水を飲むとよいと言われています[*4]。

適度に体を動かすことも大切

日常生活で軽い運動を行い適度に体を動かすことは、めまいの予防に役立ちます。子育て中のママは家事や育児で日々忙しいですが、短時間でもいいので、体を動かすようにしましょう。

掃除機をかけるだけでも運動になりますし、ベビーカーで赤ちゃんのお散歩に出たり買い物に出るなどして、意識して歩くようにしてもいいですね。無理のない範囲で、体を動かしてみてください。

まとめ

飲み物を飲んでくつろぐ女性

初めての育児に慣れないうちはとくに、気づかないうちにいろいろなことがストレスとなり「めまい」を起こすこともあります。めまいを起こしたらまずは安静にして様子をみてみましょう。また、家族に協力してもらい、リラックスできる時間を持つようにしたり、適度に体を動かしたりして、ストレス解消に努めましょう。

疲労からくるめまいの場合は、やはり夜間しっかり眠る必要があります。夜間の育児は可能な限りパートナーに分担してもらったり、その他の家族に頼むなどして、できるだけゆっくり休息してくださいね。

できるだけ規則正しい生活を送り、栄養バランスのとれた食事を摂るように心がけることも大切です。ただし、めまいが続いたり悪化したとき、他にも気になる症状が出てきたときは、早めに受診して体に原因となる異常がないか確認してもらいましょう。

(文:村田弥生/監修:直林奈月先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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