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2022年02月28日 15:01 更新

【医師監修】産後のおりものはいつまで続く? 生理再開の時期は?

産後、子宮が急速に回復していく過程で、普段のおりものや生理のときの経血ともまた違うものが性器から出てきて、驚いているママもいるかもしれません。こうした「産後のおりもの?」のようなものはいつまで続くのか、生理の再開と関係するのかなどについて解説します。

産後に出る「おりもの?」は「悪露(おろ)」

産後にオリモノが続いている女性のイメージ

産後、子宮の回復にともなって性器から排出される、おりもののような分泌物は、実は「悪露(おろ)」というものです。

最初は血液に近いが徐々におりものっぽくなる

産後、子宮が妊娠していないときの状態に戻ることを「子宮復古(しきゅうふっこ)」と言います。この期間に排泄されるのが「悪露」で、出産のときには子宮に張り付いていた胎盤がはがれますが、そのときできた子宮内の傷口などから分泌される「血液」や「粘液」「細胞」などが主成分です。

血液が少ない悪露はおりものと似た見た目ですが、普段のおりもの(白、または透明の粘液)は、おもに「子宮頸管」(子宮の下部にあり、子宮と腟をつなぐ筒状の部分)からの粘液などによってできています。

悪露は一般的に産後4週すぎごろまでみられる

悪露は、一般的に「産後直後~4週間程度」の期間出続けます。また、その間、徐々に「赤色→褐色→淡黄色→白色」に変化していきます。

産後直後は血液が多く混じっているので「赤色」ですが、産後1週ごろになると子宮内の傷口からの出血はほぼ止まり、出血後時間の経った血液が混じることになるので「褐色」になります。

産後2、3週ごろになるとさらに血液は減って白血球がメインとなるので「淡黄色」となり、産後4週ごろ以降は子宮内から分泌される粘液が主となるので「白色」になります。また、産後6週ごろになると悪露は出なくなります[*1]。

産後、おりものの異常は?

生理用ナプキンのイメージ
Lazy dummy

さきほど解説したように、だいたい産後2ヶ月ごろまでに出る「おりもののようなもの」は、実は「悪露」で、子宮が回復する過程で自然に出るものなのですが、異常な悪露もあるのでしょうか。

1ヶ月健診で診てもらえる

悪露は、さきほど解説した流れで「赤色」から「白色」へと変化していくのが一般的です。ただし、この色の変化や続く期間には個人差があります。

人によって、赤色や褐色の悪露がもっと長く続くこともあれば、悪露が一旦止まり、しばらくしてまた出始めることもあります。そのため、「一般的な色の変化や期間から少しでもずれている」イコール「異常な悪露」というわけではありませんが、血液の多い悪露があまり長く続く場合は、子宮になんらかの異常があることもあります。

ただ、1ヶ月健診の際には子宮の内診も行われます。そこで、主治医は子宮の回復状況と悪露の残り具合などを診て、必要があれば子宮の収縮を促す薬での治療などを行います。

「産後に悪露が出ることは自然なこと。その出方や期間には個人差があり、子宮の位置や形状によって単に悪露が出にくい人もいるので、一旦止まり、残っていた分が後日出てきても問題はない場合が多いです。

すでに1ヶ月健診を終えているママで、主治医から特に問題を告げられていないなら心配しなくてOK。

これから1ヶ月健診というママは、健診までは産褥パッドをこまめに変えて、清潔を保ちながら、心配なことは健診のときに主治医に尋ねることができるようメモしておきましょう。

ただし、産後1~2週を過ぎても血液成分の多い悪露が出続けているときは、産後の子宮の回復が遅れる“子宮復古不全”の可能性もあります。悪露が日中に夜用ナプキンを使うような量だったら、健診を待たずに出産した病院を受診して、診察してもらいましょう。」

(松峯先生)

白い透明なおりものは問題なし

一般的に、悪露が白っぽいおりもの状になったころには、子宮内膜は再生しており、子宮の大きさも非妊娠時の状態に戻りつつあると考えられます。

そして子宮が非妊娠時の鶏卵大の大きさに戻るまでには子宮口は閉じ、悪露は出なくなるので、それ以降、白(または透明)の粘液が見られたら、それは悪露ではなく「おりもの」と考えられます。

「悪露が減ってきたら、その量に応じて産褥パッドの利用から生理用ナプキンに移行してOK。なるべくムレないようにし、こまめに交換して清潔な状態を保つようにしてください。」

(松峯先生)

産後、生理が来ない!おりものに生理再開の予兆はある?

産後に赤ちゃんを抱っこしている女性のイメージ
Lazy dummy

産後の一時期は、「産褥性無月経(さんじょくせいむげっけい)」と言って生理が来ません。これは産褥期(出産後6~8週間まで)から授乳期にみられる生理的な現象で、自然なことです。

一般的に「再開の予兆」というものはない

産後、生理がなかなか再開せず、何か予兆のようなものはないのか気になっている人もいるかもしれませんね。人によっては生理再開前に肌荒れや排卵痛、排卵時の出血などが起こる可能性もありますが、生理再開前に「必ず起こる予兆」は残念ながらありません。

「本来、女性の生理は期間や経血量など、個人差が大きいもの。その人にとって『予兆』となる微妙な体調変化を事前に感じる可能性もありますが、それはみんなに言えることではありません。

そして産後のママはとても忙しいので、予兆があったとしてもそれに気づく余裕がなく、ある日突然、生理が再開して慌てたり、驚くこともあるかもしれませんね。でも、体の回復のあかしとして、ぜひ大らかな気持ちで受け止めてください。」

(松峯先生)

再開時期は個人差が大きい

そもそも、産後に生理が再開する時期には何か目安のようなものはあるのでしょうか。

授乳なしでは産後3ヶ月ごろまでに再開することが多い

授乳していない女性では、産後2ヶ月間程度は無月経の続くことが多いと言われています。なお、授乳なしの場合、約7割が産後3ヶ月までに生理が再開したというデータがあります[*2]。

授乳ありの場合はもっと遅くなるのも普通

授乳をしている女性の場合は、授乳していない女性より生理のない期間が長くなるのが一般的です。早くて産後数ヶ月で再開する人もいますが、授乳を続けている場合は産後2年間無月経が続いてもおかしくはありません。

もともと生理は個人差が大きい

ただし、もともと生理は個人差が大きいものです。個人差があるのは、体の状態や年齢に加え、人それぞれ環境やライフスタイルはさまざまで、それらが生理周期にも影響するからです。

とくに産後すぐのダイエットや偏食、ストレス、睡眠不足、疲労などは体調全般の回復に影響することで、ホルモンの分泌や卵巣機能・排卵機能の回復も左右する場合があります。

生理がなかなか再開しない原因

生理用ナプキンのイメージ
Lazy dummy

そもそも産後に生理がなかなか再開しないのは、なぜなのでしょうか。

産後に無月経になる理由

産後に生理が来ないのは、「黄体化ホルモン(LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の分泌が妊娠期間中に低下するからです。これらのホルモンには生理を起こす女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を卵巣から分泌させる働きがあります。

産後、LHとFSHが出産前の状態に戻るまでの期間は、卵巣機能が回復しないため無月経となります。これらの分泌が元に戻るには、出産から8週間程度かかると言われています[*1]。

授乳していると生理再開が遅くなる理由

なお、授乳していると、「赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激(吸啜刺激。きゅうてつしげき)」や母乳をつくるため多量に分泌される「プロラクチン(PRL)」というホルモンによって、LHとFSHの分泌が抑えられると言われています。また、プロラクチンにはLHとFSHの分泌量を減らすだけでなく、これらが卵巣に働きかけて女性ホルモンを分泌させるのを邪魔する作用もあると言われています。

とはいえ、プロラクチンの分泌量は産後直後がもっとも多く、授乳期間中、徐々に減っていきます。そうしたことなどが影響して、授乳中に生理が再開することもあります。

産後に生理不順や量などに異変を感じたら

診察を受ける女性のイメ―ジ
Lazy dummy

産後いくら待っても生理が再開しないときや、量に異常を感じたときはどうすればよいのでしょうか。

なかなか生理が再開しない

ここまでで解説したように産後なかなか生理が再開しないからといって、何か異常があるとは限りません。とくに母乳育児中の人は、生理再開まで1年以上要する人もいます。

ただ、「授乳をやめてから数ヶ月経っても生理が再開しない」場合や、「産後1年以上、生理が再開しない」場合は、かかりつけの産婦人科を受診して、念のため相談してください。

出血量が多いとき

産後に生理が再開したとしても、生理周期や期間、経血の量がしばらく安定しないこともあります。
産後は、実は排卵なしのまま生理が起こる場合も多く、無排卵性の生理はいろいろな点で安定しないことが多いからです。

また、生理が再開したと思っていたけれど、実は子宮の問題により出血していることもあります。

生理再開後、とくに「日中に夜用ナプキンを使わなければ間に合わないほどの出血がある」場合は、早めに婦人科を受診してください。

「産後の生理再開が一般的な時期より早くても、遅くても、1ヶ月健診で主治医から何か特別な指摘がなかったら、心配しなくてOKです。

ママたちから『生理が来ない』と打ち明けられたら、『個人差があることを念頭に、概ね1年以内には自然に生理周期が安定すると考え、焦らないで体調を整えていましょう』と私はアドバイスしています。

なお、子宮復古不全などの異常による出血を生理と勘違いする可能性もあります。婦人科では子宮の内診やホルモンの検査で原因を調べて治療できるので、再開後の生理の量や周期に不安や気がかりなことがあるなら、遠慮せずかかりつけ医に相談してください。」

(松峯先生)

まとめ

トイレにいる女性のイメージ
Lazy dummy

産後特有のおりもののようなものは実は「悪露」といい、子宮が回復する過程で自然に排出されるものです。これは一般的に産後4週すぎまでみられ、最終的には普段のおりものに変わっていきます。

また、生理の再開は子宮の回復程度と密接にかかわっていますが、生理再開の予兆となる悪露やおりものの特徴というのはなさそうです。生理の再開については、あまり心配しすぎず、ゆったりした気持ちでまずは体の回復を待ちましょう。

しかし、産後1~2週を過ぎても血液成分の多い悪露が出続けているときは要注意。子宮の回復に何か問題がある可能性もあるので、かかりつけの産婦人科を受診してください。再開した生理の周期の乱れや経血量などについて不安を感じる場合も、自己診断はせず、主治医に相談しましょう。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p362-367, 370
[*2]Postpartum contraception: Counseling and methods – UpToDate

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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