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2021年06月14日 16:50 更新

【医師監修】妊娠した!と分かる感覚はある? 妊娠超初期の変化や早くわかる方法を紹介

早く妊娠したいときは体のちょっとした変化に敏感になりますよね。はっきりした症状とまではいかなくとも、妊娠直後によく現れる「感覚」のようなものはあるのでしょうか。ここでは、まさに妊娠した!というタイミングに特有の感覚はあるのかどうかと、妊娠超初期に見られることがあると言われる症状について解説します。

妊娠は感覚・直感でわかるもの?

ハートのクッションをお腹の前で持つ女性

いままさに妊娠した!というとき、何かの感覚や直感でわかるものなのでしょうか。

妊娠を直感した!という体験談はあるが……

検索すると、授かったときにあったという感覚の口コミがいろいろ出てきますよね。内容はさまざまで、本当に「直感!」というものもあれば、具体的に「体の変化」を感じたというものも。

ただ、もともと心身の状態は人それぞれですし、物事の感じ方も千差万別。科学的にはありえない話でも、妊娠が女性にとってかなり大きな出来事であることを考えれば、「予感」や「虫の知らせ」で何かを感じとることがあっても、そんなにおかしなことではないのかもしれません。

また、妊娠したあとで「そういえば、あのときのあの感覚は妊娠したせいだったみたい!」と振り返るコメントが盛り上がるのもわかります。こうした口コミがよく見られるのは、赤ちゃんが来てくれた瞬間を振り返るときに感じる「幸せな感覚」を、みんなとシェアしたい人が多いせいかもしれませんね。

受精・着床がわかる感覚はある?

妊娠成立直後に、妊婦さんが何か体調の変化を感じるかどうかについて、妊娠の仕組みからも考えてみましょう。

排卵・受精・着床の流れのイメージ
排卵・受精・着床の流れのイメージ

排卵・受精・着床を「感じる」ことはできる?

妊娠は、受精卵が子宮内膜に「着床」することで成立します。これが起こるためには、その前に卵子が「排卵」され、精子と「受精」することが不可欠です。

妊娠が成立した場合、普通はほとんど気づかないうちにこの3つのステップが女性の体内で進み、ある程度時間が経ってから妊娠したことが発覚するわけです。

これら3つそれぞれについて、それが起こったことを感覚で知ることが可能かどうか、もう少しくわしくみていきましょう。

「排卵」した感覚はわかる?

これは人によって感じることがあります。排卵とは、卵巣の中にある「卵胞(卵子を包む袋状の器官)」の中で十分成熟した卵子が卵巣から放出されることですが、人によっては痛みなどを感じることがあるからです。

この痛みは「排卵痛」といって実はわりとよくあり、性的に成熟している「女性の約半数」が自覚したことがあると言われています[*1]。

排卵痛のおもな症状は、「片側の下腹部に起こる軽い痛み」や「ひっぱられる感じ」「違和感」「膨満感」で、排卵時に卵巣内の圧力が高まったり、排卵とともに流れ出た液体や血液により腹膜が刺激されることなどによって起こると言われています。

また、排卵により出血することもあります。これは「排卵期出血」といって、少量の出血が2、3日みられますが自然に止まります。

「受精」した感覚ってあるの?

受精は「卵管膨大部(卵管の広くなっている部分)」で、精子と卵子が出会うことで起こります。

卵子の大きさは、「直径100~140μm」(=0.10~0.14mm)程度。また、精子の長さは「約0.06mm」です[*2-5]。精子が卵子に潜り込み、卵子の中で両方の核が融合すると受精が完了します。

受精卵の大きさはしばらくはだいたい卵子の大きさのままですが、この間も細胞分裂によって細胞数はどんどん増えていきます。また、細胞分裂と同時に、子宮を目指して卵管内を移動します。

ちなみに、卵管膨大部の内径は「6~7mm」ですが、内部には繊毛がびっしりと生えており、これが動くことで受精卵は子宮へと運ばれていきます[*6]。

このように精子と卵子はとても小さいものです。また、受精直後は卵管や子宮にくっつくわけでもありません。そのため、受精したことを感じとるのは難しいでしょう。

「着床」を感じることはできるの?

では、受精卵が子宮内膜に「着床」したことを感じることはできるのでしょうか。

先ほど解説したとおり受精卵はとても小さいので、やはり子宮内膜に潜り込んでいったとしても、それによって何か感じることはないでしょう。

ただし、着床が起こるころ、下腹部に「違和感」や「痛み」「頭痛」「吐き気」などの症状がある人もいます。これはこのころに分泌量が多くなる「プロゲステロン(黄体ホルモン)」により引き起こされると考えられます。

妊娠超初期症状で早期に妊娠発覚することも

ここまででは、排卵、受精、着床といったとても小さな卵子や精子、受精卵の変化を、女性が感じ取ることができるかを考えましたが、妊娠すると分泌量が変化する「ホルモン」の影響による症状がとても早く現れ、体の変化に気付く女性もいます。

生理予定日よりも早い時期のことを指して、俗に「妊娠超初期」と呼びます。妊娠超初期はちょうど受精卵が着床するころですが、それによってホルモン分泌の変化が始まり、その影響でさまざまな体調の変化が見られる可能性もあるのです。

妊娠・出産とホルモンの変化
妊娠・出産とホルモンの変化(イメージ)

「妊娠超初期」の症状については、次の章でくわしく解説します。

妊娠早期に見られる妊娠超初期症状

ソファに寝そべる女性

妊娠超初期には、「卵巣」や「着床した受精卵」「甲状腺」などから分泌されるホルモンの変化によって、ここで解説するような症状がみられることもあります。

だるさ・異様な眠気

妊娠によってだるさや猛烈な眠気を感じる人は多いようです。これは妊娠すると右肩上がりで増えていく「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の影響と言われています。

プロゲステロンは妊娠の維持に必要なホルモンですが、基礎体温を上げる働きもあり、これによってボーっとして眠くなったり、だるくなったりします。

吐き気・胃のむかつき

妊娠による体の変化で最初に思いつくのが、「つわり」ではないでしょうか。

つわりの存在はよく知られていますが、実はこれが「なぜ起こるのか」はまだはっきりとはわかっておらず、さまざまな要因が影響しているのではないかと言われています。

つわりに関係しているのではと考えられているのが、「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」「甲状腺ホルモン」「プロゲステロン・エストロゲン(卵胞ホルモン)」などの分泌量の変化です。

なかでも、「hCG」は受精卵の「絨毛(のちに胎盤となる部分)」という組織から分泌される、妊娠女性に特有のホルモンで、妊娠のかなり早い段階からみられます。ちなみに、妊娠検査薬はこのhCGが尿中に検出されるかどうかで妊娠の可能性を判定しています。

嗅覚の変化

料理中に鼻をつまむ女性

妊娠すると、「料理」や「タバコの煙」「傷んだ食べ物」「香水」「香辛料」「コーヒー」など、特定の匂を通常より強く感じたり、嗅覚が全体的に鋭くなったりします。

そして、これは妊娠初期に特によくみられるとも言われています[*7]。

食欲や食の好みの変化

嗅覚に変化があると、「食べ物の好みも変わる」可能性があります。味覚と嗅覚は密接に結びついていて、味と匂いは神経を通じて一緒に脳に伝達され、風味として認識されるからです。

つまり、嗅覚に変化があると、同じ食べ物を味わったとしても受け取る感じが変わる可能性も。それが食欲に影響することもあります。

熱っぽさなど風邪に似た症状

プロゲステロンによって基礎体温が上がったことで、「熱があるように感じる」人もいるかもしれません。ただし、体温を上げるとはいっても、通常、女性ホルモンによる体温の変動は「0.3~0.5℃」ほど。

37.5℃以上、とくに38℃以上の高熱が出ていたり、咳・鼻水などほかの症状も続いている場合は放っておかずに受診しましょう。受診の際、「妊娠の可能性がある」場合は受付で伝えてください。

妊娠がよりわかる方法は

妊娠検査薬

ここまでで、妊娠した場合に起こる可能性のある症状を解説しました。でも、もっと確実に妊娠の有無を知るにはどうするのがベストなのでしょうか。

症状だけでは判断できない!妊娠検査薬で確認を

さきほど紹介した、妊娠超初期に起こりうる症状は、実はどれも妊娠していない場合にも、おもに女性ホルモンの変動の影響で起こる可能性があります。

妊娠の可能性が高いかどうかは、妊娠検査薬を適切な時期に使って調べましょう。通常タイプの妊娠検査薬は、妊娠5週(生理予定日の約1週間後)からの使用が推奨されています。

妊娠検査薬で陽性が出たら、医療機関を受診して妊娠を確定してもらってください。

より早くわかる!生理予定日から使える妊娠検査薬も

妊娠検査薬の中には、生理予定日から使える「早期妊娠検査薬」というタイプもあります。使ってみたい人は、取り扱いのない薬局もあるので事前に問い合わせてから購入しに行くと良いでしょう。

なお、早期妊娠検査薬の場合は、陽性と判定されてすぐ受診しても、「時期が早すぎて超音波検査でも妊娠を確定できない」こともよくあります。

この場合は1週間程度経ってから再度受診するよう指示されるでしょう。これを避けたい人は、早期妊娠検査薬で陽性が出たら1週間後に通常の妊娠検査薬で再度陽性になるか確認してから、産婦人科を受診すると良いかもしれません。

ただし、初めての妊娠で何か不安なことがあったり、いつもと違う出血など体調の変化がある場合は、早めに受診するようにしてください。

まとめ

妊娠のイメージ 両手 赤ちゃん

ここでは妊娠したかどうか、感覚だけでわかるものなのかについて解説しました。妊娠するまでに起こる3つのステップのうち、排卵による変化は人によって感じることがありますが、受精・着床を感覚だけで知るのは難しそうです。妊娠が成立したころ感じる可能性がある症状はいろいろありますが、妊娠すると必ず感じるというものではなく、また妊娠以外の原因で起こることもあります。妊娠しているかどうか気になったら、はやる気持ちを少し抑えて、適切な時期にまずは妊娠検査薬で調べてみましょう。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:窪麻由美先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]内田明花, 丸山哲夫: 排卵期出血・排卵通の診断と治療, 産科と婦人科, 11号(61), 1333, 2018
[*2]Friedrich F, et al. Arch. Gynaecol 218: 269, 1975.
[*3]日本哺乳動物卵子学会:生命と誕生に向けて、生殖補助医療(ART)、胚培養の理論と実際
[*4]理化学研究所:卵母細胞はその大きさゆえに間違いやすい-卵子が染色体数異常になりやすい理由-
[*5]カラー図解「人体の正常構造と機能」VI生殖器、改訂第2版, 日本医事新報社, 2012.
[*6]p.8病気がみえるvol.9婦人科・乳腺外科, メディックメディア, 2018.
[*7]Cameron EL.: Pregnancy and olfaction: a review, Front Psychol. 2014; 5: 67.

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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