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2021年06月11日 08:40 更新

授乳中にチーズは食べてOK? リステリア菌や乳腺炎の心配は?【助産師監修】

妊娠中、非加熱のナチュラルチーズは避けたほうが良いと言われていますが、産後の授乳中も気を付けたほうがよいのでしょうか。ここでは、授乳中の人がチーズを食べるとき、気になりそうなことについて解説します。

妊娠中はナチュラルチーズに注意が必要と言われたけど……

様々なチーズ
Lazy dummy

妊娠中はお腹の赤ちゃんへの影響を考えて、摂取に注意が必要な飲食物が多かったですよね。妊婦さんは「チーズ」にも、少し注意が必要と見たり聞いたりしたママは多いのではないでしょうか。

妊娠中は「リステリア菌」に注意が必要だったから

妊娠中は、「製造工程で加熱されていないナチュラルチーズ」は避けたほうがよいとされています。これは「リステリア」という菌による食中毒のリスクがあるからです。

リステリア菌は、塩分に強く、冷蔵庫内でも繁殖する細菌です。リステリア菌による食中毒(リステリア症)では、「38~39℃の発熱」「頭痛」「おう吐」などの症状が現れますが、健康な大人の場合は食品を介してリステリア菌に感染しても、リステリア症になることはまれです。

ただ、妊婦さんは非妊娠時に比べ、リステリア菌の感染率が20倍高いと言われています[*1]。また、妊婦さんが感染するとリステリア菌が胎盤や胎児に感染し、流産や早産の原因となることがあります。

こうしたことから、「妊娠中」はリステリア菌に感染する心配がある、加熱殺菌していない「ナチュラルチーズ」や「生ハム」「肉や魚のパテ」「スモークサーモン」などの食品は避けたほうが良いと言われているのです。

授乳中のチーズは問題ナシ!

でも、「産後の授乳中」であれば、そこまでリステリア菌の影響を心配しなくても大丈夫です。

リステリアによる食中毒についてとくに注意する必要があるのは、発症する可能性が高く重症化しやすい「妊婦や高齢者など」で、授乳中のママはここに含まれていません[*2]。万が一、ママがリステリア症を発症したとしても、お腹の中に赤ちゃんがいないのであれば、流産や早産は起こりません。

また、赤ちゃんがリステリア菌に感染しないか不安かもしれませんが、実は赤ちゃんが「母乳を介して」、風邪やインフルエンザ、発熱、下痢やおう吐、乳腺炎などの感染症にかかることはないと言われています。

なぜなら、こうした病気にかかっているママが出す母乳の中には、「赤ちゃんが同じ病気にかかるのを防いでくれる抗体」が含まれるようになるからです[*3]。

そのため、ママがこうした感染症にかかった場合でも、体力が許すのであればできるだけ母乳育児を続けることが推奨されています(※)。

※HIV(ヒト免疫不全ウイルス)やHTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)など、ママが感染者の場合、母乳からの感染を防ぐため、人工栄養を推奨されている感染症も中にはあります

とはいえ、まだ小さい赤ちゃんには、細菌やウイルスをなるべくうつしたくありませんよね。チーズによるリステリア感染が心配なようなら、「プロセスチーズなど、製造工程で加熱殺菌されたもの」を選べば安心です。また、授乳や離乳食の準備中、トイレ、おむつ替えの前後は石けんでよく手を洗いましょう。咳やくしゃみをした後、鼻をかんだ後も必ず手を洗うか、消毒するようにしてください。

チーズを食べることで乳腺炎になる心配はないの?

母乳を飲む赤ちゃん

授乳中にチーズを食べることでもうひとつ心配になるのが、「乳腺炎」にならないか、ということではないでしょうか。

「乳製品や肉を食べると乳腺炎になる」は誤解

脂肪分の多い食事を摂るとおっぱいが詰まって、乳腺炎になりやすいと言われることもありますが、この説にははっきりした根拠がありません

そもそも、母乳に含まれる脂肪の大きさは、乳房の中で母乳が通る「乳管」の「およそ200分の1くらい」しかないとされています[*4]。また、この球状の脂肪が、ママの食べた食事によって固まりあったり、大きくなったりすることもないと言われています。

乳腺炎は、食べ物の影響で起こるのではなく、「母乳が乳房の中に残ってしまうこと」がおもな原因です。ですから、乳腺炎を予防するためには、授乳ごとに赤ちゃんにしっかり母乳を飲み取ってもらえるよう、「授乳姿勢」や「授乳の間隔・時間」を見直したり、「下着などで乳房を締め付けていないか」確認することが大切です。

乳製品や肉といった脂肪分の多い食品ばかり偏って食べるのはママの健康によくありませんが、チーズを食べたからといってすぐ乳腺炎になるのではと心配する必要はありません。

チーズは授乳中の栄養源として優秀

プロセスチーズ
Lazy dummy

さて、授乳期にはリステリアや乳腺炎の心配なく楽しめるようになるチーズ。授乳期にうれしい栄養も豊富に含んでいます。

乳製品のカルシウムは体に吸収されやすい

カルシウムは骨や歯を形作る以外にも、細胞、神経、筋肉、血液など体の中のさまざまな箇所の働きを正常に保つのに欠かせないミネラルです。ところが、日本人は不足している人が多いと言われています。

チーズは種類によりますが、比較的熟成されたものやプロセスチーズでは「スライスチーズ1枚分(18g程度)で、カルシウムをおよそ100前後~200mg以上」も含む、カルシウム豊富な食品です(牛乳コップ1杯・200g当たりのカルシウムは220mg)[*5]。

また、牛乳や乳製品に含まれるカルシウムは、小魚や野菜に含まれるものより体に吸収されやすいと言われています。カルシウムは母乳にも含まれ、赤ちゃんの健やかな成長に欠かせません。授乳中のママのカルシウム補給にチーズはぴったりの食品です。

脂質と塩分が多いので食べ過ぎには要注意

ただし、チーズは脂質が多い食品でもあります。脂質の多い種類では「およそ30%が脂質」のことも。

脂質は「たった1gで9kcal」もある栄養素(炭水化物とたんぱく質はそれぞれ4kcal/g)なので、脂質が多いとカロリー高めになります。

また、チーズは多いものでは「100g当たり4g程度」の塩分を含むこともあり、この点からも食べ過ぎには注意が必要です。

授乳期の牛乳・乳製品の1日量目安

授乳期に、牛乳や乳製品を摂る1日の目安量は、たとえば、

・スライスチーズ1枚

・チーズ1かけ

・牛乳コップ半分

・ヨーグルト1パック

「以上のうち、3つ分」が勧められています[*6]。

できるだけさまざまな食品をバランスよく摂取するなかで、乳製品も意識してプラスオンするようにすれば、授乳期のママと赤ちゃんの健康維持に役立つでしょう。

まとめ

赤ちゃんを抱っこする女性
Lazy dummy

妊娠中は、非加熱のナチュラルチーズは避けたほうがよいと言われるので、「もしかして授乳中も?」と心配になることがあるかもしれませんが、授乳中は妊娠中と違ってリステリア菌予防に気を遣う必要はあまりありません。

また、乳腺炎の予防ではママが食べたものの影響というより、赤ちゃんがしっかり母乳を飲みとっているかどうかがカギになります。

授乳中、チーズはこれらの心配なく食べることができますが、脂質や塩分を比較的多く含む食品なので摂り過ぎには要注意。良質なカルシウム、たんぱく質源として、授乳中も適度にチーズを楽しんでくださいね。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:坂田陽子先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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