授乳中に刺身(生魚)は食べていい?水銀は心配ない?【管理栄養士監修】

授乳中に刺身(生魚)は食べていい?水銀は心配ない?【管理栄養士監修】

妊娠中は非加熱(加熱が十分でない)の肉・魚がNGだったり、食べる頻度に気をつけなければならない魚介類があったりしましたが、授乳中はどうなのでしょうか。母乳はお母さんの血液からできるため「この食べ物は大丈夫かな?」と心配になるものですが、普段以上に栄養が必要な時期でもあります。今回は授乳中の刺身について解説します。


この記事の監修者
川口由美子 先生(管理栄養士/母子栄養指導士)
一般社団法人母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師。大学時に小児栄養学を学んだのち、育児用品メーカーでベビーフード開発を経て栄養相談、離乳食レシピ執筆、講演会に携わる。2児の母。現在は、母子栄養協会にて離乳食アドバイザー®他、専門家を養成している。
一般社団法人母子栄養協会HP

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授乳中の刺身、OK? NG?

まずは最初に、赤ちゃんに母乳をあげている時期でも刺身をたべられるのかどうか、結論から先に確認しましょう。

授乳中でも刺身を食べて問題なし!

授乳中だからといって、刺身を避ける理由はありません。むしろ、授乳中に必要な栄養素を摂るためにはぜひ魚を食べていただきたいです。

授乳中に刺身などの魚がオススメな理由

お腹に赤ちゃんがいる妊娠中は、妊娠していない時に比べて多く必要となる栄養素があります。それは母乳を作らなければならない授乳中の一緒で、エネルギー(+350kcal)、たんぱく質(+20g)、ビタミンA(+450μgRAE)、ビタミンB群、ビタミンC(+45mg)、鉄(+2.5mg)など多くの栄養素で通常に上乗せして摂取することが勧められます[*1]。

魚は良質なたんぱく質が豊富で、特にいわし(鰯)やかつお(鰹)などの赤身魚では鉄分も多く含まれています。加えて、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった魚に含まれるn-3系脂肪酸も、母乳の中の必須脂肪酸を保つために必要です。

授乳中の魚で気になること

「授乳中に刺身を食べても大丈夫?」と思った人の中には、水銀や食中毒などの母乳への影響を気にしているケースもあるでしょう。

水銀の心配は?

魚は栄養価の高い一方で、水銀量の多い種類もあります。妊娠中に水銀量が多い魚に偏って食べると、お母さんの体に水銀が多く取り込まれます。そうすると胎盤を通してお腹の赤ちゃんに水銀が渡り、影響を及ぼす可能性があるのです。そのため、妊娠中は食べる魚(クジラやイルカを含む)の種類や量には注意が必要とされています[*2]。

授乳中でも魚からの水銀は心配しなくてOK

一方、赤ちゃんが母乳を通じて水銀を摂取する量は少ないとされています[*3]。普段の食事を通じて体に入った水銀は徐々に体の外に排出されます。また、取り込まれるのも健康に影響を与えない量です。授乳中は魚介類をしっかり食べて、良質なたんぱく質やDHA・EPAといった貴重な栄養素を摂りましょう。

食中毒の心配は?

魚介類の生食というと、腸炎ビブリオやアニサキスによる食中毒が気になります。これらの細菌や寄生虫が母乳に直接影響を及ぼすことはありませんが、授乳中の体調を崩すと、まず第一にお母さん本人がつらいことでしょう。育児や家事は他の家族に任せられますが、授乳はなかなか代わってもらいにくいことなので、健康維持を心がけることは大切ですね。

「つけない」「増やさない」「やっつける」

食中毒予防の原則は「つけない」「増やさない」「やっつける」です。

調理の際の手洗いや調理器具の衛生状態に気をつけて原因菌などを「つけない」ようにし、刺身は冷蔵庫で保存し速やかに消費することで「増やさない」ようにしましょう。腸炎ビブリオは低温状態で増殖が抑えられます。

また、アニサキスは-20℃で24時間冷凍すると死滅します。イカなどはアニサキスの心配がある魚介類ですが、冷凍によってアニサキスを「やっつける」ことができるので、冷凍されているものを選ぶのも手ですね。

アレルギーの心配は?

赤ちゃんのアレルギー発症を懸念して、自分が食べるものを制限してしまうお母さんもいるようです。刺身などの生ものだと余計に心配になるのかもしれません。

ここで知っておいてほしいのは、子の食物アレルギー発症を予防するために、妊娠中や授乳中のお母さんが特定の食べ物を除去することは推奨されていないということです。避けても意味がないどころか、お母さんの栄養状態に害を及ぼす可能性もあります[*4]。

授乳中はバランスよく栄養を摂っていきたいですね。

まとめ

授乳中は食べるものに気をつけているお母さんも多いことでしょう。新鮮で適切に調理された刺身であれば、心配なく食べていいでしょう。魚は授乳中も積極に摂りたい栄養素が豊富です。刺身でなく、煮魚や焼き魚もいいですね。お母さんと赤ちゃんの健康のためにも、おいしく偏りなく食事を楽しんでください。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
[*2]厚生労働省「これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと」
[*3]厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて 授乳中の母親も、魚介類の摂食に注意すべきですか。」
[*4] 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2016 第4章 予知と予防」

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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