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2021年01月09日 14:59 更新

【医師監修】マイコプラズマ肺炎に効く薬って? 子供の症状とケア方法

マイコプラズマ肺炎は小児に多い病気ですが、薬で治すことができます。小さいお子さんを持つご家庭では、もしかかってしまったら……と心配になることもあるでしょう。処方される薬とケア方法などについてお伝えしますので、参考にしてみてください。

マイコプラズマは「薬」で治す!

医師にマイコプラズマ肺炎の薬を処方してもらう親子
Lazy dummy

※画像はイメージです

子供がマイコプラズマに感染したら肺炎になる可能性もあることから、心配になるママ・パパも多いはずです。しかしマイコプラズマ感染症は気管支炎で済む場合も多く、症状も軽くみられますが、時に肺炎となって重症化する場合もあります。いざというときのために適切な対処法を把握しておくため、まずはマイコプラズマ感染症について簡単にお伝えしていきます。

マイコプラズマ感染症とは?

マイコプラズマ感染症とは、マイコプラズマ・ニューモニアという病原体(細胞に寄生するきわめて小さな細菌)の感染によって引き起こされる感染症で、発症者の多くは小児です。なかでも、6~12歳の発症が多く見られるとされます。[*1]

飛沫感染・接触感染するので、保育園・幼稚園や学校などの集団活動の場で感染する場合も少なくありません。特に、小さい子供の場合はさまざまな物を口に運んだり、よだれが垂れたりしますので、感染しやすい条件を備えていると言えるでしょう。

マイコプラズマ感染症の代表的な症状

前にも述べましたが、症状としては軽度で済むことが多いのが特徴で、肺炎に至らず気管支炎の症状で済む場合も多いです。ただ、放置すると重症化する可能性もあるので注意が必要です。周囲の流行状況や症状を確認し、マイコプラズマの感染が疑われるときは早めに病院に行きましょう。

マイコプラズマ感染症の代表的な症状には、以下のものがあげられます。[*2]

まず発熱とだるさ、頭痛が初期症状として現れ、その後3~5日ほどして乾いた咳が出始めることが多いようです。咳は、熱が下がっても3~4週間ほどしつこく続くのが特徴で、小児~青年では日が経つにつれ痰の混じった咳になっていくこともあります。[*3]

この他、小児では鼻炎の症状が出ることもあります。また、全ての人に現れるわけではありませんが、中にはかすれ声、のどの痛み、耳の痛み、下痢などの消化器症状、胸の痛み、皮膚の発疹が見られることもあるようです。[*3]

このような症状が見られたら、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。診断により感染がわかったら、基本的に自然治癒が可能な疾患であるため、症状によっては抗菌薬を使用しない場合があります。しかしマイコプラズマの主な治療法は抗菌薬の投与です。次は、マイコプラズマ感染症に用いられる抗菌薬について見ていきましょう。

マイコプラズマの薬(1)マクロライド系抗菌薬

マイコプラズマ感染症には、一般的な細菌感染に主に使用されるペニシリンなどの抗菌薬が効きません。そのため、マイコプラズマに感染したときは、基本はマクロライド系の抗菌薬が使用されます。

マクロライド系抗菌薬とは?

マクロライド系抗菌薬については、日本マイコプラズマ学会も「マイコプラズマ肺炎治療薬の第1選択肢」として推奨しています。[*4] 投薬から2~3日でおおよそ熱が引くとされていますので、つらい時間を短くするためにも、できるだけ早く医療機関で診てもらいましょう。

小児のマイコプラズマ感染症に用いられる主なマクロライド系抗菌薬には、以下のものがあります。[*4]

・エリスロマイシン
・クラリスロマイシン
・アジスロマイシン

推奨投与期間は、エリスロマイシンが14日間、クラリスロマイシンが10日間、アジスロマイシンが3日間となっています。用量や用法は医師の指示に従い、処方されたものを最後まできちんと服用しましょう。

「耐性」ができて薬が効かないことも?

抗菌薬の場合、病原体が耐性を得てしまい「効かなくなる」という恐れが常にあります。日本マイコプラズマ学会によると、これまでにマクロライド系の薬を飲んだことがない場合には、薬に対する菌の耐性率は50%以下とされます。しかし、マクロライド系の薬を飲んだことがあり、なおかつ投薬が効かない場合には、耐性率は90%以上になるとしています。[*4]

また、国立感染症研究所でも、2011年の段階で「マクロライド(ML)耐性菌」の出現に対して注意喚起がなされています。[*5]

では、マクロライド系の抗菌薬が効かない場合は、どのように治療するのでしょうか。

マイコプラズマの薬(2)その他の薬

マクロライド系抗菌薬が効かない場合は、薬の投与が必要と判断された場合にのみ他の薬が検討されます。咳がひどいときや肺炎が重症化したときに使用される薬も、あわせて確認しましょう。

マクロライド系が効かない場合のお薬

マクロライド系抗菌薬に効果が認められず、耐性菌であると判断され、かつ薬の使用が必要と判断された場合には「ニューキノロン系」「テトラサイクリン系」の抗菌薬が使われます。こちらの投薬期間は、およそ1~2週間必要とされています。

ただし、テトラサイクリン系抗菌薬は歯牙の発育や骨の発達に影響を及ぼす場合があるため、学童期までのお子さんに対して処方されるケースはほぼありません。日本マイコプラズマ学会の治療指針でも「原則、8歳未満へのテトラサイクリン系抗菌薬は禁忌」としています。[*4]

また、ニューキノロン系も、繰り返し使用すると体内にいる他の細菌における薬への耐性を強める可能性があるうえ、効果はテトラサイクリン系より劣るというデメリットがあります。マイコプラズマ感染症は基本的に自然治癒が見込めるため、マクロライド系以外の薬の使用は必要に迫られたときのみとされています。

咳がひどい場合、肺炎が重症の場合は?

咳がひどい場合には咳止めほか、漢方薬が処方される場合もあるようです。

肺炎が重症であると判断される場合には、ステロイド薬の利用が検討されます。小さな子供に使っても大丈夫?と心配なさる親ごさんもいらっしゃるかもしれませんが、重症化した肺炎には効果が期待できるとされています。ただし、日本マイコプラズマ学会では「適応の条件や適切な投与法については今後の検討課題」ともしているので、心配な点や不明点は医師に尋ね、納得したうえで治療を受けましょう。なお、肺炎が重症である場合には入院が必要となります。

マイコプラズマ肺炎にかかった時のケア

マイコプラズマは「学校保健安全法」による学校感染症の「その他の感染症」に分類され、出席停止の措置が取られるケースがあります。[*6] ちなみに、出席停止扱いになっても欠席にカウントされません。いずれにしても、また元気よく通園・通学できるよう、家では安静にして体力を回復させましょう。

何よりも大切なことは、処方された薬を最後まできちんと飲み切ることです。定められた回数とタイミングもしっかり守りましょう。熱が下がって体調が比較的よくなったとしても、登園・登校許可が出るまでは外出は控え、家で安静にすることも大切です。

下痢や嘔吐などの消化器症状は、マイコプラズマ感染者のおよそ25%に見られるとされます。[*3] 食欲がないときは無理に食事を取らせる必要はありませんが、脱水症状を防ぐためにも水分補給はこまめに行ってください。食欲が出てきたら、おじや・お粥、ゼリー、プリン、茶碗蒸しなどの食べやすく消化に良いものを少しずつ食べさせてください。食べられない状態が続く場合は、医師に相談しましょう。

まとめ

マイコプラズマには予防のためのワクチンがないので、日頃から手洗いやうがいの徹底など、生活の中での予防を心がけることが大切です。それでも感染を100%防ぐことはできません。発症が疑われるときは早めに医療機関に行きましょう。マイコプラズマ感染症は軽度の症状で済むことが多いですが、放置すると重症化する可能性もあるので注意してください。登園・登校の目安や家での過ごし方などを守り、感染を拡大にも気をつけましょう。

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.20)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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