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2021年05月02日 16:30 更新

チョコレートダイエットは嘘? 高カカオチョコの本当の効果とは

「チョコがダイエットによいって本当?」そんな疑問はありませんか? 高カロリーで太りそうなチョコレートですが、選び方と食べ方を間違わなければダイエットを助けてくれる可能性も。ダイエット中におすすめのとり入れ方をお伝えします。

巷でささやかれる「チョコレートダイエット」

いろんなチョコレート
Lazy dummy

「チョコレートダイエット」とは一般的にどのようなものなのか、概要と効果について解説します。

高カカオチョコを使った「チョコレートダイエット」

近年話題になっている「チョコレートダイエット」とは、健康効果が注目されている「高カカオチョコレート」を食べ、ダイエットによい効果を期待する方法を指すことが多いようです。

高カカオチョコレートというのは、チョコレートの原材料である「カカオ」の含有量が多いチョコレートのことです。ただし「カカオ含有量が何%以上なら高カカオと呼ばれるのか」という点については明確な定義はありません。

日本チョコレート・ココア協会では「ビターチョコレートとはミルクが入らない、カカオマスが40~60%のチョコレートのことをいう。最近では、カカオ分70~90%という低糖のチョコレートのことをいう場合もある」としていますが、一般的には、カカオ分70~90%のチョコレートのことを「高カカオチョコレート」「ハイカカオチョコレート」などと呼ぶことが多いようです[*1]。

「チョコレートダイエット」で重要なのはこの「高カカオ」という点。なぜかというと普通のミルクチョコレートで同量のカカオを摂取しようとすると、同時に糖質や脂質も多く摂取することになりカロリーオーバーにつながりやすくなるためです。

あくまでもミルクチョコではなく高カカオチョコを選ぶことで効率よく健康効果を得る、というのがチョコレートダイエットの重要なポイントだといえるでしょう。

高カカオチョコはカカオポリフェノールが豊富

高カカオチョコレートは、「カカオポリフェノール」を多く含むという点から健康によいといわれることが多いです。

カカオには「エピカテキン」という成分をメインとした化合物(フラバノール)が多く含まれていますが、それらの総称が「カカオポリフェノール」です[*2]。カカオポリフェノールは強い抗酸化作用を持つ成分で、血圧を下げる、動脈硬化を予防する、肌ダメージを抑制する、などの効果が期待されています[*3,4]。

こういった理由で、カカオポリフェノール(フラバノール)を多く含む高カカオチョコは、健康によいとして注目されているのです。実際に、高カカオチョコとそれ以外のチョコとでは以下のようにフラバノールの含有量に大きな差があったとする報告もあります[*5]。

チョコレート製品100gあたりのフラバノール量

・ダークチョコレート 63.5~651.1mg

・ミルクチョコレート 40.6mg

・ホワイトチョコレート 0mg


上記のように同じダークチョコレート(高カカオチョコ)であっても、フラバノールの含有量は製品によって大きく差がありますが、少なくともミルクチョコレートの1.5倍以上は含まれているということがわかります。

高カカオがダイエットに向いている理由

カカオ豆
Lazy dummy

高カカオチョコは健康によい効果が期待されていると簡単に説明しましたが、ダイエットにはどのようにかかわってくるのでしょうか。

リグニンという食物繊維の作用

通常植物には、細胞壁の構成成分であるセルロースやヘミセルロースなどの食物繊維が含まれますが、チョコレートの原料であるカカオマス(カカオ豆をすりつぶしてペースト状にしたもの)の場合は、「リグニン」という食物繊維の含有量が高く、含んでいる食物繊維の半分以上を占めるという特徴があります[*6]。

リグニンは少し変わった食物繊維で、多くの食物繊維は多糖類であるのに対して、リグニンはポリフェノールが集まってできています。そのため、他の不溶性食物繊維(セルロースやヘミセルロース)よりも体内で消化されにくく、その約8割もの量が便に排出されるともいわれています[*4,7]。

そもそも不溶性食物繊維は、便のカサを増やすことで便を出しやすくするという性質を持っていますが、リグニンはさらにその効果が高い可能性があるというわけです。

市販の高カカオチョコレートは、製品によって差がありますが、100g当たり10g以上の食物繊維を含むことが多いようです[*8]。ちなみに、食物繊維豊富なイメージのあるゴボウの食物繊維は100g当たり5.7g(根 生)[*9]ですから、高カカオチョコはかなり多くの食物繊維を含んでいることになります。

ただし、食物繊維豊富だからといって、高カカオチョコを食べ過ぎるとカロリー過多になってしまうこともあるのでご注意を。

血糖値を上げにくい

食後などに血糖値が上昇すると分泌される「インスリン」というホルモンには、余ったエネルギーを脂肪として合成する働きがあります。そのため、ダイエット中は特に血糖値を急上昇させないほうがよいと考えられています。

血糖値を急上昇させるのは「糖質」です。たんぱく質や脂質も体内で消化されることで血糖値を上げますが、その変動は糖質よりも緩やかで、血糖値の上がりやすさは「糖質>たんぱく質>脂質」の順になっています[*10]。

高カカオチョコレートは普通の甘いミルクチョコレートよりも含まれる砂糖の量が少ないため、比較的血糖値を上げにくいと考えられます。さらに、カカオポリフェノールには血糖値の急上昇を抑える効果も期待されています[*11]。

また、チョコレートに豊富に含まれる脂質は消化に時間がかかるため、血糖値の上昇が緩やかなうえ下降もゆっくりです。つまり、高カカオチョコを食べ過ぎればカロリーの摂り過ぎで当然太りますが、上手に食べれば血糖値の変動を緩やかにすることで空腹をあまり感じずに済むのに役立ちます。 こうした点などから、高カカオチョコはダイエットに向いていると考えられるのです。

高カカオチョコレートでダイエットできるのか

チョコをかじる女性

実際、高カカオチョコレートでダイエットは成功するのでしょうか。

食事前に食べれば食べ過ぎ抑止に役立つ

高カカオチョコレートを活用してダイエットを成功させたいなら「食事前に1~2かけ食べることでその後の食べ過ぎを防止する」という方法がおすすめです。 

脂質などの栄養素が小腸に入ると 、腸管から「GLP-1」というホルモンが分泌されますが[*12] 、このホルモンには、インスリン分泌の調整のほか、胃の動きを緩やかにすることで食後の高血糖を予防したり、脳の中枢に作用して食欲を抑えたりする働きがあるといわれています[*13]。

高カカオチョコには脂質が多く含まれるため、ご飯やパン・麺などの糖質を多く含む食品を摂取する前に食べると、こういった効果が期待できそうです。

高カカオチョコでもカロリーは高い!食べ過ぎはNG

ただし、チョコレートの原料であるカカオに多く含まれる脂質はたったの1gで約9kcalもある成分。カカオの割合が多ければ脂質の比率も高くなり、エネルギーも高くなります。

例えば、100gの高カカオチョコレートを食べると、それだけで平均的な活動量の成人女性の1日の脂質摂取目標量の2/3~丸々1日分を摂ることになってしまいます 。

そのため「食欲を抑えるためだから」といって大量に食べてしまっては本末転倒。1日の食事バランスや摂取エネルギーを考慮して、食べ過ぎないよう十分注意することが大切です。

ダイエット中のチョコレートの食べ方・注意点

生チョコとフォーク

早速チョコレートをダイエットに活用してみたいと思った人に向けて、ダイエット中のチョコレートの食べ方や注意点をお伝えします。

1日の目安量を守って食べる

いくら健康によい成分を含むといっても、脂質が多いチョコレートは高エネルギー。食べ過ぎれば逆に太ってしまいます。「食事バランスガイド」では、1日の間食の目安を200kcal程度としているので、少なくともその範囲内で楽しむようにしましょう[*14]。ダイエット中であればその半分くらいまでを目標にするとよいですね。

太ってしまうというだけでなく、健康の面でも大量に食べるのは避けるのがよいでしょう。というのはチョコレートには、気管支拡張作用や利尿作用・興奮作用などがあるといわれている「テオブロミン」や「カフェイン」などの成分も含まれているためです。

これらが実際に体へどのくらい影響を与えるのかという点については個人差が大きいとされていますが、特に妊娠中や授乳中の女性や子供が大量に食べるのはお勧めできません。

また、ぜんそくや気管支炎などの持病がある場合は、これらの成分が悪影響を及ぼす可能性があるため、食べてもよいかどうか必ず医師に相談しましょう。

生チョコやミルクチョコは避ける

同じチョコレートでも、生チョコレートやミルクチョコレートはダイエットには向いていないため極力避けるとよいでしょう。

生チョコレートはチョコレートに生クリームなどを加えて固めたもので、砂糖も多く含まれています。ミルクチョコレートは高カカオチョコレートよりも砂糖が多く含まれており、カカオの含有量も低いため、健康効果があるとしても高カカオのものと比べて低いと考えられます。

チョコレートは「食事の前」に食べる

前半でもお伝えしましたが、食べるタイミングは食事の前がおすすめです。
普通にお腹いっぱい食事をとった後にデザートとして食べると、その分摂取カロリーが余計に増えるだけになってしまうためです。

チョコレートは「複数回に分けて食べる」のがおすすめ

ポリフェノールは吸収されるスピードが速く、摂取後2時間ほどで抗酸化作用がピークに達し、その後消えていってしまうといわれています[*15-16] 。そのため一度にたくさん食べるよりも、少量ずつ複数回に分けて食べるほうがよいでしょう。

食べ過ぎたときは食事で調整する

もしもうっかりチョコレートを食べ過ぎてしまったら、その後の食事では揚げ物やバター・生クリーム・オイルたっぷりの料理は避けて、摂取エネルギーを調整するようにしましょう。

ただし「全く何も食べない」などの極端な調整をすると血糖値の下がり過ぎがドカ食いを招いたり、栄養不足から筋肉量が減り代謝が落ちることにもなるので、適切な量の炭水化物とともにたんぱく質や野菜のおかずは減らさないで、いつも通り食べるのがおすすめです。

まとめ

ダークチョコレート
Lazy dummy

ダイエットの大敵であるお菓子の中でも、高カカオチョコレートなら上手に活用すればダイエットに役立つ可能性があるということをお伝えしました。

さまざまな健康効果が期待されている高カカオチョコレートですが、脂質が多く含まれているためダイエット中の食べ過ぎはNG。食べると痩せるというものではないので、あくまでも主食・主菜・副菜の揃ったバランスのよい食事をとることを優先しましょう。そのうえで、「チョコレートが大好きでどうしても食べたい!」という場合には、この記事で紹介したような食べ方でとり入れてみてくださいね。

(文:猪坂みなみ)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]日本・チョコレート・ココア協会:チョコレート・ココア用語辞典 チョコレート編
[*2]日本チョコレート・ココア協会:チョコレート・ココア講座 Q3「カカオポリフェノール」とはどのようなものですか?
[*3]長寿科学振興財団:健康長寿ネット「ポリフェノールの種類と効果と摂取量」
[*4]あいち産業科学技術総合センター 食品工業技術センター:カカオ製品の生理効果
[*5]Flavanols and methylxanthines in commercially available dark chocolate: a study of the correlation with nonfat cocoa solids
[*6]日本チョコレート・ココア協会 チョコレート・ココア健康講座 Q2チョコレート・ココアにはどのような成分が含まれていますか?
[*7]森永製菓:COCOA REPORT「ココアの便通および便臭改善効果」
[*8]国民生活センター 高カカオをうたったチョコレート
[*9]日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*10]ノボノルディスクファーマ:糖尿病サイト 高血糖の予防法
[*11]Grassi D. et al.: Short-term administration of dark chocolate is followed by a significant increase in insulin sensitivity and a decrease in blood pressure in healthy persons, Am J Clin Nutr. 2005 Mar;81(3):611-4
[*12]関西電力医学研究所 保健指導における「食べる順番」に重点をおいた食事指導の有効性を証明
[*13]公益社団法人日本薬学会 薬学用語解説 インクレチン
[*14]農林水産省 実践食育ナビ
[*15]Polyphenols and health: Update and perspectives
[*16]日本チョコレート・ココア協会:チョコレート・ココア健康講座 Q5チョコレートはいつ食べるとよいですか?

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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