【医師監修】蚊取り線香、赤ちゃんには大丈夫? 考えられる影響や注意点
赤ちゃんが蚊に刺されるのはかわいそうだけれど、赤ちゃんのいる部屋で蚊取り線香を使っても大丈夫かどうか気になる……。そんな悩みを持つママやパパのために、赤ちゃんへの蚊取り線香の影響や使う時の注意点をお伝えします。
赤ちゃんに蚊取り線香はOK? 気になる殺虫成分の影響
蚊取り線香は虫を殺しますが、人の体にもよくないのでしょうか? 蚊取り線香に含まれている殺虫成分と赤ちゃんへの影響を知っておきましょう。
蚊取り線香に使われる殺虫成分「ピレスロイド」
蚊取り線香には、殺虫成分「ピレスロイド」が含まれています。このピレスロイドは、除虫菊(シロバナムシヨケギク)に含まれる天然の殺虫成分「ピレトリン」に似せて作られた化合物です。
蚊取り線香や電池式蚊取りを使うと、ピレスロイドが空気中にただよいます。
ピレスロイドは虫の皮膚や口から入り込み、神経に作用して麻痺を起こして殺します。
また、この成分が空中にただようと、薬剤の濃度が薄い場所では蚊などの虫は嫌がって逃げ出します。
殺虫とともに虫よけ効果もあるので、赤ちゃんに蚊を近づけたくない時にもおすすめです。
「ピレスロイド」の赤ちゃんへの影響は
ピレスロイドは虫には危険ですが、人間などのほ乳類や鳥類などには安全性が高い成分とされています。人間を含むほ乳類や鳥類の体にピレスロイドが入っても、早く分解されて短時間で体の外へ排出されるからです。また、ピレスロイドは低温で効果が高いので、変温動物である虫でより効果が強く出ると言われています[*1, 2]。
そのため、赤ちゃんが、多少ピレスロイドを吸い込んだり皮膚から吸収したとしても、心配ありません。
なお、ピレスロイドは自然の光や空気、熱に触れると、他の殺虫剤よりも早く分解します。部屋の中で蚊取り線香や電池式蚊取りを使っても、殺虫効果を発揮したらすぐに分解されて消えるので、安心して使うことができるのです。
蚊取り線香をより安心して使うためには
比較的安全性が高い蚊取り線香ですが、間違えた使い方をすれば体に影響が出ることもあります。使う前に、まずは使用上の注意をよく読むことが大切です。
また、赤ちゃんのそばで使う時には、次の使い方に気をつけましょう。
風通しをよくして風上に置く
蚊取り線香の煙が室内にこもると、煙そのものが目や鼻、喉に刺激を与えたり、息苦しくなることがあります。またアレルギー体質の人の場合は、煙による刺激でアレルギー性鼻炎やぜんそくが悪化することもあるので注意が必要です。
蚊取り線香を使う時には、窓を開けて風通しをよくして、風上に置くようにしましょう。
赤ちゃんに直接煙がかからないようにする
換気の良い室内でも、煙が赤ちゃんに直接かかるとやはり目や喉や鼻に刺激を与えます。
赤ちゃんに直接煙がかかる位置に蚊取り線香を置くのはやめましょう。
誤飲などを防ぐ方法と食べてしまったときの対処法
赤ちゃんからちょっと目を離した瞬間に、誤飲ややけどなどの事故は起こるものです。
赤ちゃんの手が届かないところに置く
赤ちゃんや小さな子供には、蚊取り線香とおもちゃの区別がつきません。
手が届くところに蚊取り線香があると、うっかり口に入れてしまったり、火が付いているところを触ってやけどする可能性があります。
赤ちゃんや小さな子供のいる部屋では、手が届かず落ちて来たりもしない、安全な場所に蚊取り線香を置くようにしましょう。
赤ちゃんが蚊取り線香を食べてしまったら
赤ちゃんが蚊取り線香を食べてしまったら、まずは落ち着いてやさしく口の中を確認してみてください。大声を出すとびっくりして飲み込んだり、気管に入ってしまうことがあります。
口の中にまだ残っていたら、奥に押し込まないように注意しながらできるだけ指でかき出します。
もし飲み込んでしまったとしても、少量の蚊取り線香であればそれほど心配はないので無理に吐き出させようとはしないでください。赤ちゃんを無理に吐かせようとすると、かえって窒息や誤嚥性肺炎、食道の損傷を起こしかねません[*3, 4]。
ただ、赤ちゃんの様子が普段と違うときは医療機関に連れていきます。病院では「ピレスロイド系の殺虫剤、蚊取り線香を食べてしまった」ことと「食べたと思われる量」を医師に伝えてください。また、飲み込んでしまったものと同じ蚊取り線香があれば持参します。
呼吸や顔色がおかしい、けいれんがあったりぐったりしている場合は、救急で診療を受けましょう。
まとめ
蚊取り線香には「ピレスロイド」という殺虫成分が含まれています。ピレスロイドは虫には殺虫効果を発揮しますが、人を含むほ乳類や鳥類の体内に入ってもすぐに分解されて排出されます。そのため、赤ちゃんのいる部屋で使っても安全です。
ただ、煙が目や鼻、喉に刺激を与えることがあるので、使う時には風通しをよくして、赤ちゃんに直接煙がかからないようにしましょう。また、思わぬ事故を防ぐために蚊取り線香は赤ちゃんの手の届かないところに置くことも大切です。万が一赤ちゃんが蚊取り線香を食べてしまったら、病院で診てもらいましょう。
(文:大崎典子/監修:梁尚弘先生)
※画像はイメージです
[*1]農薬工業会 Q. 殺虫剤は虫を殺すものですから、同じ動物であるヒトにも危険はないのですか。
[*2]暮らしの中の化学物質 - 名古屋市 30p ピレスロイドの特長(1)
[*3]岩見沢市 子育てQ&A 誤飲
[*4]日本気管食道科学会 誤飲
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます