酒粕を妊婦が食べてしまったときの影響は?甘酒もNG?【管理栄養士監修】
酒粕(さけかす)は魚の粕漬けや甘酒などに使われる原料ですが、酒粕と聞くとお酒・日本酒のイメージが強いですよね。妊娠中はアルコールにも気を付けていきたいところですが、酒粕はどうなのでしょうか。詳しくみていきましょう。
酒粕ってどんなもの?
酒粕は、清酒製造の工程で圧搾したあとに残るしぼりかすです。
酒粕にはたんぱく質やアミノ酸、ビタミンなどの栄養成分が豊富に含まれており、古くから様々な食品に利用されています。代表的なものに、奈良漬け、石狩鍋、粕汁、粕漬け、甘酒などがあります。
また、最近ではその栄養価の高さからパンやケーキなどにも使われることがありますね。
甘酒にも使われる「酒粕」
甘酒には、酒粕から作られるものと、米麹から作られるものの2種類があります。
米麹から作られる甘酒は、主に麴と米を原材料として作るのでアルコール分は含まれず、栄養分も豊富で妊娠中でも安心して飲むことができます。
一方、酒粕から作られる甘酒は、酒粕に残っているアルコール分があるので、少量のアルコールが含まれることがあります。酒税法によりアルコール度数は1%未満であれば酒類に分類されないので、ノンアルコールの飲み物として売られています[*1]。
酒粕を使って手作りする場合には、アルコール分がどの程度残っているのかわからないので、気を付けた方がよいです。
酒粕に含まれるアルコール分
酒粕にはアルコール分が8.2%程度含まれています[*2]。ビールなどで5%前後なので、決して低い数字ではないですね。
アルコールは加熱すれば蒸発して飛ばすこともできるといいますが、具体的にどの程度効果があるかははっきりとわからないので、料理などに使う際も注意が必要です。
妊婦は酒粕でも胎児性アルコール症候群のリスクあり
酒粕に含まれるアルコールでも胎児性アルコール症候群のリスクはあります。
妊娠中のアルコールについては、「この量までならば飲んでも胎児に影響しない」というものはわかっていません。また、アルコールは妊娠全期間を通して何らかの影響が出る可能性があるので、注意が必要です[*3]。
胎児性アルコール症候群とは
胎児性アルコール症候群は、妊娠中の母親の飲酒によって起こるもので、生まれてくる赤ちゃんに現れる様々な影響の総称です。
例としては低出生体重のほか、顔面を中心とする奇形や脳障害を引き起こす可能性、そして将来的なADHDや成人後の依存症リスクなど、幅広い範囲での影響がみられるといわれています[*3]。
甘酒でも胎児性アルコール症候群のリスクはある?
甘酒でも、米麹を原料としたものならアルコール分が入っていないので、胎児性アルコール症候群のリスクはありませんが、酒粕から作る手作りの甘酒はアルコールの注意が必要です。
妊娠中に甘酒を飲むなら、酒粕のものではなく米麹のものにしましょう。
酒粕を食べるときは加熱してアルコールを飛ばす
粕漬けや石狩鍋など、酒粕のうまみを生かした料理もたくさんありますね。酒粕を食べるときはしっかりアルコールを飛ばすようにしましょう。
酒粕のアルコールの飛ばし方
酒粕のアルコールはしっかりと加熱をしましょう。どのくらいでアルコールが完全に飛ぶのかは、例えばトロミがついていたり、火の加減などでも大きく異なりますので一概には言えません。
例えば、酒粕を料理に使う場合には、量を少しだけにして、沸騰時間をできるだけ長くしましょう。また、アルコールを飛ばしたからといっても、たくさん食べてしまっては摂取量も多くなってしまうので、食べる量にも注意しましょう。
酒粕を加熱するときの注意点
酒粕は、ふつふつと沸騰させることがポイントです。妊娠中は調理で酒粕を使うのはなるべく避けたいものですが、石狩鍋のような鍋物は、自分で調理する場合には酒粕の量を減らし、長時間沸騰させるといいでしょう。
また、粕漬けの肉や魚などの場合は、酒粕を水洗いしてしっかり落とし、キッチンペーパーでしっかり水気をきってから焼いていきます。酒粕は糖分も多いので、強火で加熱すると焦げやすいのが特徴です。落としてからのほうが焦げずにきれいに焼くことができます。
妊娠中の酒粕・甘酒に関するよくある疑問
甘酒も最近では様々な種類がありますね。酒粕や甘酒を選ぶときはどうすればよいでしょうか。
酒粕ではなく米麴が原材料の甘酒は飲んでもいい?
米麹が原材料の甘酒はアルコール分が含まれていないので、飲んでも大丈夫です。ただし、米麹が原材料の甘酒も、コップ1杯150mlあたり114kcal[*2] で、牛乳1杯150mlあたり92kcalと比べると少し高めなので、飲みすぎには注意しましょう。
酒粕入りの甘酒を飲んじゃった!どう対処すべき?
酒粕入りの甘酒を飲んでしまっても、すぐ赤ちゃんに影響が出ることはほぼないでしょう。気づいた時点でそれ以上は飲むことを控えましょう。
酒粕から手作りした甘酒だとアルコール濃度が高い場合もあるので、妊娠期間中は飲まないようにしましょう。
出産後の授乳期も酒粕はNG?
アルコールを含む飲料の場合、飲んでから30~60分後に血中の濃度が最大になるといわれており、母体血中濃度の90~95%が母乳に検出されるとされています[*4] 。
酒粕の場合でも、摂取すれば母乳に移行することが考えられます。授乳中はアルコール分を加熱して飛ばし、量や摂取時間を調節するなどしましょう。
まとめ
料理からデザートまで幅広い活躍をする酒粕。魚の粕漬けなどはしっかり粕を落としてから加熱するので、アルコール分も気にせず楽しめますね。酒粕独特の風味があるのでお酒に弱い方は「お酒の匂い!」と驚くこともあるかもしれませんが、少量であればうまみのバリエーションの一つに加えてみてもいいかもしれません。あくまでもしっかり加熱してくださいね。
(文:宗政祥子 先生、監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1] 国税庁, 酒のしおり(令和3年3月),
[*2] 文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂) 調味料類
[*3] e-ヘルスネット 胎児性アルコール症候群 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
[*4] 厚生労働省,タバコとお酒の害から赤ちゃんを守りましょう(mhlw.go.jp)
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます