妊婦はさつまいもで便秘解消? 妊娠中にうれしい栄養素と食べるときの注意点【管理栄養士監修】
甘くておいしく、それでいて体に良いイメージがあるさつまいも。実は妊娠中にもうれしい栄養が含まれているんです。ここではさつまいもにはどんな栄養素が含まれているのか、妊娠中に食べるときの注意点とあわせて紹介します。
妊婦にうれしいさつまいもの栄養素
さつまいもに含まれる栄養素には、どんな効果が期待できるのでしょうか。
妊娠中の便秘解消に役立つ「食物繊維」
さつまいもには、食物繊維の中でも水に溶けない「不溶性食物繊維」が多く含まれています。不溶性食物繊維は、便のかさを増やし、腸を刺激して排便を促してくれます。
また、便の排出には、水溶性食物繊維も必要です。さつまいもには水溶性食物繊維も含まれています[*1]。妊娠中はホルモンバランスや子宮の増大により便秘になりがちなので、便の様子をみながら、さつまいもをメニューに加えてみてもいいかもしれません。
赤ちゃんの健康に必須の「葉酸」
葉酸は妊娠中に積極的に取りたい栄養素です。
受胎前後から妊娠初期までの間に、妊婦さんがサプリメントなどで葉酸を摂取するとお腹の赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクが減ることがわかっています。成人の推奨量は1日あたり240μgですが、これに加えて妊娠初期はサプリメントで400μg補っていく必要があります。また妊娠中期〜後期は1日あたり成人の推奨量240µgに+240µg付加した量を摂取することが推奨されています[*1]。
葉物野菜に多そうなイメージがある葉酸は、さつまいもにも比較的豊富に含まれています。さつまいもに含まれる葉酸の量は、皮つきの場合100gあたり生で49μg、蒸しで54μg、天ぷらで57μg。皮なしの場合は、100gあたり生で49μg、蒸しで50μg、焼きで47μgとなっています[*2]。
ストレスによる悪影響から体を守る「ビタミンC、E」
さつまいもに含まれるビタミンC・ビタミンEは、体内の過剰な活性酸素から体を守ってくれる抗酸化物質。活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能としての役割がありますが、過剰になると細胞を傷つけ、がんや心血管疾患、生活習慣病などの要因となることが知られています。
通常、体の中では活性酸素を産生する一方、活性酸素の害から体を守る機能が働いてバランスをとっています。ところが紫外線や大気汚染、酸化された物質の摂取などで活性酸素の産生が過剰になり、バランスが崩れた状態になることがあります。ビタミンC・ビタミンEは活性酸素が過剰に作り出されるのを防いだり、活性酸素により生じたダメージの修復・再生を促してくれるのです。
ストレスも活性酸素の産生を促し、過剰な状態を引き起こすことが知られています。慣れないことが多く、知らず知らずのうちにストレスの溜まりがちな妊娠中、抗酸化力のあるビタミンCとEは積極的に摂りたい栄養素です。さつまいもには、100g当たり20mg程度のビタミンC、1~2mgのビタミンEが含まれています[*2]。
妊娠中のさつまいもは太らない?
妊娠中は体重管理も大切。さつまいもは甘いので、太らないか心配になりますね。糖質やカロリー、適量をチェックしておきましょう。
さつまいもの糖質とカロリー
同じさつまいもでも、調理法や皮の有無によって若干変わってきますが、さつまいものエネルギー(カロリー)と糖質は加熱済のものではだいたい次のようになっています[*2]。
・エネルギー:130~150kcal程度/可食部100g当たり
・糖質:30g前後/可食部100g当たり
ちなみに中くらいのさつまいも1本の重さは200gほどになります。
お菓子などで130Kcalとってしまうのは簡単ですが、ビタミンやミネラルが少ないといえます。さつまいもには、カロリーだけではなく他の栄養もしっかり入っているので、同じカロリーをとるなら、さつまいもを選べるといいでしょう。
妊婦のさつまいもの適切な摂取量とは
妊娠中は何かと食べるものに気をつかうものですが、「妊婦の場合、さつまいもは1日にこの量まで」などという目安はありません。さつまいもは、主食(ごはんの代わり)にもなったり、副菜(野菜)とも考えられますが、その他の穀類や野菜もとっていれば、問題はありません。
妊産婦のための食事バランスガイドでは、妊娠中期以降は、通常のごはんに主菜・副菜・果物を追加でとっていくとされています。その追加分はちょうどさつまいも70〜100g程度とされています。いままでの食生活に、プラスして食べるなら、1つの目安になるかもしれませんね[*3]。
また、ふかしたさつまいもをおやつとして食べるのであれば200kcalを目安にしたいので、150g程度となります。小さめのもの1本ぐらいがいいでしょう。さつまいもばかり食べ過ぎると栄養の偏りが気になりますが、この量を目安にすれば、他の食品と組み合わせてバランスよく栄養摂取できるでしょう。
妊婦がさつまいもを食べるときの注意点
妊娠中にもメリットがあるさつまいも。さっそく食事や間食に取り入れたくなると思いますが、食べるときは次のことに注意してください。
食べ過ぎない
さつまいもなどの芋類は、分類が難しいのですが副菜とされることがあります。しかし、同じ副菜には、野菜類、きのこ類なども含みますので、まんべんなくとりましょう。野菜を食べずにさつまいもだけなど偏って食べ過ぎると、さつまいもは副菜の中ではカロリーが高めなので注意が必要です。
また、さつまいもに含まれる不溶性食物繊維は、便秘の人が摂り過ぎると逆に便を硬くして便秘を悪化させることがあります。不溶性食物繊維は便のかさを増やしてくれますが、もともと便秘の人は腸のぜん動運動が弱く、便のかさが増え過ぎると腸の中を進みにくくなります。便が大腸の中に長い時間あると、水分が必要以上に吸収され硬くなってしまうのです。
便の様子で調整するなど、一つの食材に偏らず、さまざまな食材からバランスよく栄養をとることも大切です。くれぐれも食べ過ぎないようにしてください。
食べる前にしっかり洗って加熱
さつまいもの皮には土がついています。さつまいもを生で食べるレシピもありますが、妊娠中は食中毒や消化不良リスク回避のため、よく洗ってからしっかり加熱して食べましょう。
まとめ
さつまいもはおいしいだけでなく、体へのメリットも多い食材。妊娠中にもうれしい食材です。野菜の代わりとして考えることもありますが、葉物野菜などとあわせて上手に組み合わせましょう。
また、間食として糖分が多いおやつをさつまいもに置き換えるのはおすすめの方法です。自然の甘味であるさつまいもは、間食として必要なカロリーや栄養がとれるだけではなく、「スイーツを食べたい!」という気持ちも満足させてくれるかもしれませんね。さつまいもをつぶしてヨーグルトと和えるなど、妊娠中の食生活に上手に取り入れていきましょう。
(文:佐藤華奈子/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書
[*2]日本食品標準成分表2020年版(八訂)2 いも及びでん粉類
[*3]厚生労働省「妊娠前からはじめる食生活指針」食事バランスガイド
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます