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2021年03月21日 14:00 更新

子どもは思うようには育たない『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』Vol.2

「子育ての本当の目的」って、なんだろう? 革新的な教育で注目を集めた、元・千代田区立麹町中学校校長で横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一先生の著書『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)から、家庭でも実践できる子育ての心構えをご紹介します。

親子の幸せな関係が何よりも大切

Lazy dummy

本書では、私が考える子育てのポイントについてまとめますが、前提としてお伝えしたいのは、親子の幸せな関係が何よりも大切だということです。

私が本書でお伝えしたことを参考にして、幸せな親子関係が崩れてしまうのであれば、それを守る必要はありません。

なぜなら、子どもにとって家庭が安心安全な環境であることで、自信がつき、何かに挑戦してみようという気持ちが生まれるからです

このことは、最新の脳神経科学の研究からも明らかになってきています。
うまくいかないことや失敗を叱られ続けた子どもの多くは、挑戦をしなくなっていくことがわかっているのです。

子どもが新しいこと、今までの自分がやってこなかったことに挑戦していこうとする力は、「失敗しても大丈夫」という安心な環境があってこそ大きく成長するものです
ですから子どもが自律するためにも、親子の幸せな関係性はとても大切なことと言えるでしょう。

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とは言え、子育てをしているなかでは、子どもに対してつい感情的に怒ってしまうこと、口うるさく言ってしまうことがあると思います。
ここでちょっとみなさんに質問です。
みなさんがお子さんに対して感情的に怒るのはどんなことでしょうか?
「ぐずぐずしないでもっと早く決めなさい!」「なんでそんなこともできないの?」「もっとこうしたらうまくいくのに」……。

冷静に考えてみるとそれは、あなた自身が「自分のだめなところ」「嫌いなところ」と認識している部分ということはありませんか。
つまりあなた自身が、こだわっている部分です。

多くの親御さんは、自分がしてきた失敗を子どもにさせたくないと考え、「これをしたほうがいい」「あれはしないほうがいい」と言ってしまいがちです。
するとこの価値観が、子どものなかで大きくなり、クローズアップされることになります。自然と子どもも、その部分にこだわるようになるのです。
自分の失敗やだめなところを子どもに投影して接しても、あまり意味はありません。親子と言えど、あなたとお子さんは別の人間で、歩む人生もまったく違うからです

自分の子どもだからこそ、言葉や態度で示さなければ伝わらない

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たまにこんなことを言う親御さんがいます。

「自分が口うるさく言うので子どもには嫌われていると思います。それでも構わないんです。自分の子どもだからいつかわかってくれるはずです」

たしかにときを経て、わかってくれる子もいます。
しかしいつか関係が戻るとたかをくくっていたら、取り返しがつかなくなるということも大いにあります。そして私はそんな家庭を山ほど見てきました。

自分の子どもだからこそ、言葉や態度で示さなければ伝わらないのです

もし仮に本当に嫌われているとしたら、ぜひ一度、お子さんとの関係を見直してみてください。
私が教員人生のなかで大いに参考にしてきた、森俊夫さんと黒沢幸子さんの『〈森・黒沢のワークショップで学ぶ〉解決志向ブリーフセラピー』(ほんの森出版)という書籍では、何かを解決しようとするとき、「①もしうまくいっているのなら、変えようとするな」「②もし一度やって、うまくいったのなら、またそれをせよ」「③もしうまくいっていないのであれば、(何でもいいから)違うことをせよ」と書かれています。
お子さんとの関係がうまくいっていないのであれば、行動や言葉がけを変えることで、関係性に変化を起こしてみることをおすすめします。

毎日怒ってしまうのであれば、ためしに1週間、怒らずに笑顔で家から送り出してみてはいかがでしょう。
最初は何も変化が起きずに、落ち込むこともあるかもしれません。

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しかし一度こじれた関係は、1日、2日で変わることはありません。
かけ違えたボタンを一つひとつ外してとめ直すように、お子さんの様子をよく見ながら、辛抱強く接していくしかありません。

「自分から行動するなんて……そんな気持ちにはなれない」という方もなかにはいるかもしれませんね。
そんなふうにあまりにも親子関係がこじれてしまったときは、原点に立ち返ってみてはいかがでしょう。
お子さんが赤ちゃんのときの写真や動画を見返してみてください。
「生まれてきてくれただけでよかった」、その気持ちをもう一度思い出したら、お子さんに対する気持ちが少しは変わるかもしれません。

子どもはあっという間に大きくなり、親元を離れていきます。人間の人生が80年だとしたら、子どもと過ごせる時間はせいぜい20年程度。たった四分の一なのです。

まとめ

苛立つよりも、幸せな親子関係を大切にしよう

次回の内容は……?

「親はいい加減なくらいでちょうどいい」についてお届けします。

書籍『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』について

麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること
¥ 1,540 (2021/03/21時点)
(2021/03/05 時点)

宿題、定期テスト廃止。固定担任制も撤廃。服装・頭髪検査はおこなわない。公立中学校とは思えない数々の学校改革で注目を集める元・千代田区立麹町中学校校長・工藤勇一先生(現・横浜創英中学・高等学校校長)が、子育ての「当たり前」について考えてみたのが本書です。
多くの親御さんは、日々、さまざまなことに悩みながらお子さんと向き合っていることでしょう。
でも、きっと大丈夫。一番大事なことは何かを考えたら、そんなに気にすることじゃないかもしれません。
本書には、麹町中でなくても実践できる、子育ての心構えが詰め込まれています。
不安を抱えて育児に奮闘する皆さんの心を、ふわっと軽くする1冊です。

(文:工藤 勇一『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)より一部抜粋/加筆修正:マイナビ子育て編集部)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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