不幸になるなら「理想の子育て論」はいらない『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』Vol.1
「子育ての本当の目的」って、なんだろう? 革新的な教育で注目を集めた、元・千代田区立麹町中学校校長で横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一先生の著書『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)から、家庭でも実践できる子育ての心構えをご紹介します。
不幸になるなら「理想の子育て論」はいらない
みなさんは「子は親の鏡」という詩をご存じでしょうか。
この詩はドロシー・ロー・ノルト博士が書いた『子どもが育つ魔法の言葉』(PHP研究所)という本におさめられています。
私がこの詩を知ったのは今から25年ほど前。当時は加藤諦三氏の著書『アメリカインディアンの教え』(扶桑社)のなかに「子供たちはこうして生きかたを学びます」という題名で紹介されていました。以下にその内容をご紹介します。
今読み返してみても、本当に素晴らしく、その通りだとうなずける内容です。
この詩を知った当時、教師としても父親としても新米だった私は、自分の行いを大いに反省したものです。
しかし、ここではあえて、この詩のメッセージとは反対のことをお伝えしたいと思います。
親が「こうあらねばならない」と考えすぎてはいけません。
理想の親の姿を追求することが、親子の幸せに結びつくかというと、必ずしもそうではないからです。
むしろ「あれが悪かったかも……」「こうすればよかったかも……」と自分自身を後悔しすぎたり、卑屈になったりする姿は、子どもにとってけっしていいものではありません。
「私がこうなったのは、親のあなたがこうだからだ」などと、人のせいにする子が育つことにもつながってしまいかねないからです。
教師になってから今年で36年。多くの子どもたちと関わってきましたし、それと同じだけ親御さんとも向き合ってきました。
そして、子育てに不安をよせる親御さんの声をたくさん聞いてきました。
「子どもとの関係がうまくいかない」「学校といい関係が築けていない」「この子はこのままで大丈夫だろうか」……。
真面目な方ほど、ご自身の子育てに悩み、葛藤されています。
親であるあなたが「不幸にならないで」
そんなみなさんに、伝えたいこと。それは、
「不幸にならないで」。
親として完璧ではない自分を、蔑んではいけません。
それよりも大事なのは、子どもに対する愛情に自信を持つことではないでしょうか。
私が日頃から考えているのは「不幸になるような理想はいらない」ということです。
子育てに理想を求めすぎて、子どもたちと過ごせる幸せな時間を、辛い時間にしてしまった方をたくさん見てきました。
むしろ今ある環境に幸せを探せる能力こそ、育むべきではないかと思うほどです。
勝手に理想を掲げて、勝手に不幸にならないことです。
それこそが、将来幸せになる力をつくり出していくはずです。
まとめ
次回の内容は……?
「子どもは思うようには育たない」についてお届けします。
書籍『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』について
宿題、定期テスト廃止。固定担任制も撤廃。服装・頭髪検査はおこなわない。公立中学校とは思えない数々の学校改革で注目を集める元・千代田区立麹町中学校校長・工藤勇一先生(現・横浜創英中学・高等学校校長)が、子育ての「当たり前」について考えてみたのが本書です。
多くの親御さんは、日々、さまざまなことに悩みながらお子さんと向き合っていることでしょう。
でも、きっと大丈夫。一番大事なことは何かを考えたら、そんなに気にすることじゃないかもしれません。
本書には、麹町中でなくても実践できる、子育ての心構えが詰め込まれています。
不安を抱えて育児に奮闘する皆さんの心を、ふわっと軽くする1冊です。
(文:工藤 勇一『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)より一部抜粋/加筆修正:マイナビ子育て編集部)