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2021年04月06日 16:30 更新

妊婦の食事に牡蠣はNG?生はだめでも焼き・蒸し・カキフライは食べてもいい?【管理栄養士監修】

牡蠣は、旬の時期には食べたくなる人も多いはず。ただ、魚介類なので食中毒が気になりますね。妊娠中は牡蠣を食べない方がいいのか、食べるならどんな点に注意したらいいかなどを解説します。

妊婦は牡蠣を食べてはいけない?

ざるに乗った牡蠣

魚が体によいとはよく言われることですが、魚介類である牡蠣も、亜鉛やビタミンなどさまざまな栄養が含まれていて、妊婦さんにおすすめの食材です。

牡蠣は栄養豊富! 妊婦も食べて問題ない

妊娠中、妊婦さんの健康とおなかの赤ちゃんの成長のためには、バランスのよい食事でしっかりと必要な栄養を摂ることが大切です。ところが厚生労働省の調査では、妊婦さんたちの栄養摂取量は推奨量に比べて少ない傾向にあることがわかっています。

特に、ビタミンA、D、B1、B2、B6、葉酸、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などの妊婦さんの栄養摂取量の平均は、厚生労働省の推奨量または目安量を下回っています[*1]。

牡蠣には、これらの不足しがちな栄養素がさまざま含まれています。たとえば亜鉛や葉酸をはじめとしたビタミンB群、鉄分が多く、特に亜鉛は豊富です。

妊娠が進むにつれて亜鉛は血中濃度が下がってきます。それを補うのに牡蠣はピッタリな食材なのです。

妊婦が牡蠣を食べるときの注意点

カキフライ

亜鉛やビタミン類などが豊富に含まれる牡蠣ですが、食中毒の心配もあるので、調理方法や食べ方には注意が必要です。

生食は避け、しっかり加熱する

牡蠣のような二枚貝は、ノロウイルスの原因になることがよくあります。また、生牡蠣を食べると、腸炎ビブリオといった細菌による食中毒を起こすこともあります。妊娠中は生牡蠣を食べるのは控えましょう。

ノロウイルスは85~90℃の高温で90秒以上[*2]、腸炎ビブリオは60℃以上で10分以上[*3]、それぞれ中心部まで加熱することで死滅します。妊娠中に牡蠣を食べる場合は、しっかり火が通るように調理してから食べてくださいね。

食べ過ぎない。「食べ放題」も避けて

牡蠣は冒頭で解説したとおり栄養価の高い食材ですが、それだけを食べ続けると栄養が偏ってしまいますし、食べ過ぎにもつながります。特に牡蠣の好きな人が「食べ放題」に行くと、つい牡蠣ばかり食べてしまいがちですね。

牡蠣には亜鉛が豊富に含まれると説明しました。サプリメントなどから大量の亜鉛を摂取し続けると、貧血や胃の不快感などが起こるとされていますが、牡蠣を多少食べ過ぎたからといって亜鉛の過剰摂取になることはありません

ただ、牡蠣は大きめのものだと5粒で約100gあり、含まれる亜鉛は14mg[*4]。妊婦さんが1日に摂取することを推奨されている亜鉛の量は10mg、1日の耐容上限量(注1)は35mg[*5]とされているので、大きさにもよりますが、牡蠣を10数粒程度食べると1日の耐容上限量以上の亜鉛を摂ることにもなります。1日だけでは問題はありませんが、食べ過ぎには注意しましょう。

(注1)耐容上限量とは、この量を超えて習慣的に摂取した場合には、健康に悪影響をもたらすリスクがゼロではなくなることを表します。耐容上限量を超えたらすぐに健康を害するということではありませんが、習慣的に摂取する食品では、耐容上限量を超えないように注意が必要です。

市販の牡蠣以外は食べてはいけない

牡蠣などの二枚貝は毒素を持ったプランクトンを食べていることがあり、その場合は体内に毒素が蓄積しています。毒素のある牡蠣を食べると、中毒を起こして下痢や神経麻痺を生じることがあるので、食品衛生法で貝毒に対する安全基準が決められています。

スーパーなどで売られている牡蠣は、この基準をクリアしたものだけが出荷されています。牡蠣を食べるときは、必ず市販されている安全なものだけにしてくださいね。

妊娠中の牡蠣に関するよくある疑問

牡蠣の炊き込みご飯

亜鉛補給のためのサプリメントの必要性や、牡蠣を食べてあたってしまったときの対処法など、牡蠣にまつわる質問にお答えします。

牡蠣エキスのサプリメントはOK?

亜鉛は、極端に不足すると、たんぱく質やDNAの合成がうまくいかなくなって成長障害が起こったり、味覚障害になったりするので、適切な量を摂取する必要があります。

ただし、サプリメントなどで過剰に摂り過ぎることもよくありません。さきほども触れたとおり、亜鉛の過剰摂取を続けると、貧血や胃の不快感のほか、腎機能障害、免疫障害、上腹部痛、消化管過敏症、HDLコレステロールの低下、下痢などを起こす恐れがあるからです。

なお、サプリメントは不足しがちな栄養素を手軽に補えますが、薬のように厳密な品質管理が義務付けられているものではありません。場合によっては過剰摂取につながることもあるので、妊娠中は葉酸以外はサプリメントに頼らず、栄養はできるだけ食事から摂るよう心がけることが大切です。

牡蠣であたったときはどうすればよい?

牡蠣を食べた後、1~2日後に下痢、吐き気、嘔吐、腹痛、発熱などの症状が見られたときには、ノロウイルス感染が疑われます。

また、牡蠣を食べた後、短時間で嘔吐やじんましん、のどのかゆみなどの症状が出た場合は、牡蠣アレルギーかもしれません。

いずれにしても、牡蠣を食べて何らかの症状が見られたときは、早めに医療機関を受診しましょう。原因によって治療法も違ってきますから、医師に診断してもらう必要があります。

授乳中は生牡蠣を食べても大丈夫?

授乳中のお母さんが生牡蠣を食べて食中毒になったとしても、母乳には影響しません。とはいえ、ノロウイルスは吐いたものや手でさわったものを介して、赤ちゃんに感染する恐れがあるので注意が必要です。

もし、食中毒にかかってしまったら、授乳や離乳食の準備など赤ちゃんのお世話の前後には石けんでよく手を洗いましょう。また、下痢やおう吐で失った分を補うためにも、意識して経口補水液などで水分とミネラルを摂取するようにしてください。つらいときは無理せず、体を休めることも大切です。

まとめ

バランスのいい食事 和食

妊婦さんでもしっかり加熱すれば牡蠣を食べても大丈夫です。妊娠中は偏りなくいろいろな食材を食べてバランスよく栄養を摂ることが大切です。牡蠣だけでなく、肉類や野菜類や果物なども食べて、妊娠中に必要な栄養をしっかり摂りましょう。

(文:村田弥生/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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