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2021年03月29日 10:00 更新

妊婦は鮭を食べても大丈夫?生食、スモークサーモンは?【管理栄養士監修】

鮭(さけ、シャケ)は、まぐろやぶりなどとならび日本で多く食べられている魚のひとつです。食べやすくて安く手軽に手に入るので、好きな人も多いのではないでしょうか。今回は妊娠中に鮭を食べていいのか、また食べる場合の注意点は何かなどについて解説します。

妊婦は鮭を食べていい?

魚(魚介類)によっては水銀が多く含まれているため、妊娠中は食べるときに「注意が必要」とされるものがあります。一方、鮭はそのような心配がなく妊娠中も安心して食べられます。

鮭は妊婦にも安全な魚

鮭の切り身のイメージ
Lazy dummy

魚には自然界の水銀が含まれているため、含有量によっては食べる量に注意するように、と厚生労働省は妊婦さんに呼びかけています。妊婦さんが水銀の含有量が高い魚を大量に食べ続けていると、水銀が胎盤を通しておなかの赤ちゃんの体内に取り込まれてしまい、影響を及ぼすことがあるからです。

厚生労働省は食べるときに「注意が必要」として指定している魚もありますが、鮭は「特には注意が必要ではない」とされているので、安心して食べていいのです[*1]。

また、ビタミンAは妊娠中も必要な栄養素ですが、妊娠3ヶ月までの妊婦さんが過剰に摂取すると、耳の形態異常などが赤ちゃんに生じるリスクがあるといいます。サプリメントやレバーの大量摂取がビタミンAの過剰摂取の要因とされています。

この点、鮭にはビタミンAはそれほど多く含まれていないので、安心して食べられます。

鮭は妊婦にうれしい栄養素も豊富

魚には良質な動物性たんぱく質がたくさん含まれていますし、ビタミン類(D・E・B12など)や必須ミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)のほか、人の体内では作り出せない必須脂肪酸のDHA、EPAといった栄養素がたくさん含まれています。

赤ちゃんにもよい影響あり

鮭などの魚に豊富に含まれる良質なたんぱく質や脂質、ビタミンDや必須脂肪酸などの栄養素は、お母さんだけでなくおなかの赤ちゃんの発育や発達にとってもよいことが知られています。

たとえば、ビタミンDには骨格と歯の正常な発育を促進する働きがありますが、魚の中でも特に鮭にはたくさん含まれています。

鮭に含まれる良質なたんぱく質は、おなかの赤ちゃんの発育に欠かせないものです。

必須脂肪酸のDHAとEPAも、妊娠中に十分摂取することで、低出生体重児が生まれたり早産になったりするリスクが低下することがわかっています。

さらに、DHAは脳の神経組織を作るのにとても重要です。必須脂肪酸は魚などの食品などからしか摂取できないので、妊婦さんは自分のためにも赤ちゃんのためにも、意識して魚をたくさん食べてほしいですね。

妊娠中に鮭を食べるときのポイント・注意点

鮭は、妊娠中でも安心して食べられる魚ですが、実際に食べるときはどんな点に気をつけたらいいのか見ていきましょう。

生焼けはNG!しっかり火を通す

焼き鮭のイメージ
Lazy dummy

生の魚介類には、腸炎ビブリオという細菌がいたり、アニサキスという寄生虫が住み着いていたりすることがあります。刺身やお寿司で食べたり、火を通しても生焼けの状態で食べたりすると、これらの細菌や寄生虫が残っていて食中毒を引き起こす心配があります。

腸炎ビブリオは十分に加熱することで死滅しますし、アニサキスは加熱のほかしっかり冷凍することでも食中毒を起こしにくくなります(注1)。魚介類は新鮮なものを選んで、しっかり火を通してから食べるようにしてくださいね。

(注1)腸炎ビブリオは60℃で10分以上の加熱、アニサキスは-20℃で24時間以上の冷凍か、70℃以上の加熱、または60℃なら1分の加熱で死滅します。

塩分は控えめにする

鮭は手軽に調理できますが、塩鮭など塩分がかなり高いものもあります。また、鮭は味が淡泊なので、濃い味をつけがちですね。

塩分を摂りすぎると、妊娠中に悩まされがちなむくみなどにもつながります。鮭だけでなく、食べ物はできるだけ塩分控えめを心がけられるといいですね。

鮭の皮まで残さず食べるのがおすすめ

鮭の皮は食べない、という人も多いと思いますが、妊娠中は皮までしっかり焼いて食べることをおすすめします。鮭の皮の裏にある脂にはDHAやEPAがたっぷり含まれているからです。さらに、ビタミンEやカルシウムなども含まれていますから、苦手でなければ残さずに食べられるといいですね[*2]。

妊娠中の鮭に関するよくある疑問

安心して食べられる鮭について、妊婦さんからの疑問にお答えします。

妊婦が1日に食べていい鮭の目安量は?

鮭のミルクスープのイメージ
Lazy dummy

鮭は水銀含有量を心配せず安心して食べられる魚で、食べる量の制限などは特にありません。ただ、鮭ばかり食べていると塩分やたんぱく質を必要以上に摂り過ぎてしまうこともあります。

妊娠中の食事で大切なのは栄養バランスですから、いろいろな食材を偏りなく、適量で食べるように心がけましょう。妊娠中の食生活や栄養については、厚生労働省が「妊産婦のための食事バランスガイド」で1日に何をどれくらい食べたらいいかの目安を示しているので、参考にするといいですよ[*3]。

▶︎厚生労働省:妊産婦のための食事バランスガイド

妊娠中にスモークサーモンは食べていい?

鮭の加工品のスモークサーモン(燻製サーモン)はおいしいですし、さまざまな料理に使えて便利ですよね。ただ、スモークサーモンは塩漬けした鮭を低温で燻製にすることが多いため、リステリアという細菌が付着していることがあります。

実際に、欧米ではスモークサーモンのような魚介類加工品を食べてリステリア食中毒が起こったという報告がありますし、国内でも魚介類加工品などからごく少量のリステリアが検出された例があります。

厚生労働省では、「妊娠中に避けた方が良い食べ物」の一つにスモークサーモンを挙げています[*4]。妊娠中スモークサーモンをそのまま食べることは避けましょう。加熱すると菌は死滅するので、加熱して食べるのも一つです。

まとめ

焼いた鮭の乗ったご飯のイメージ
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身近で食べやすく、水銀などの心配がない鮭は、妊娠中でも安心して食べられる魚です。栄養も豊富なので、塩分の取り過ぎや食べ過ぎに注意して、バランスのいい食生活を送りましょう。

(文:村田弥生/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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