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2021年04月06日 08:15 更新

妊婦は穴子を食べていい?気になるビタミンAは?【管理栄養士監修】

妊娠中は、摂り方に気をつけたい食べ物があります。「穴子」も気になる食材の一つですが、過度な心配はいりません。今回は、妊婦さんが食べる際の目安量のほか、ビタミンAや水銀のこと、授乳中に気を付けるべきかなどについてもお伝えします。

妊婦は穴子のビタミンAに注意が必要?

穴子に含まれるビタミンAは、視覚や聴覚、皮膚や粘膜などを正常に保持する役割や、生殖機能の維持、成長促進などに欠かせない栄養素で、妊婦さんにとっても重要なビタミンです。

しかし、妊娠中にビタミンAを過剰摂取するとおなかの赤ちゃんに影響する可能性があり、食べる量には注意が必要です。妊婦さんはビタミンAが豊富なうなぎや、鶏・豚のレバーの摂りすぎに気をつけなければいけないことは知られています。

では、穴子にはどれくらいビタミンAが含まれているのでしょうか。

穴子に含まれる栄養素・ビタミンAとは

穴子のお寿司のイメージ
Lazy dummy

日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、「穴子蒸し焼き100g中には890μgRAEのビタミンAが含まれている」とのこと[*1]。

■ビタミンAが多い食品例とビタミンA含有量(100g中)
 ・うなぎかば焼き:1,500μgRAE
 ・豚レバー(生):13,000μgRAE
 ・豚レバーペースト:4,300μgRAE
 ・豚スモークレバー:17,000μgRAE
 ・鶏レバー(生):14,000μgRAE

レバーやうなぎに比べれば穴子のビタミンAは低いことがわかります。穴子に関しては食べる量はそれほど気にしなくても構いませんが、過剰摂取は避けましょう。ビタミンAは、食べてはダメというのではなく、食べる量や頻度に注意が必要な栄養素だと考えましょう。

なお、ビタミンAには動物性食品に含まれるものと、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンがありますが、β-カロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変わるので、野菜から摂取する分には摂取量に注意する必要はないと考えられています。

妊婦のビタミンA過剰摂取による影響

もし、動物性食品やサプリメントからビタミンAを摂りすぎてしまったら、どんな影響があるのでしょう。

妊娠時期別にいうと、妊娠初期はおなかの赤ちゃんの細胞が急激に増え、主要な器官が作られる大事な時期のため注意が必要です。 妊娠初期にビタミンAを過剰摂取すると、赤ちゃんに先天的な異常の起こるリスクがあることがわかっています。

しかし、食べてしまったら必ず異常が出るというわけではありません。あくまでも “その可能性があがる” という意味なので、ビタミンAを含む動物性食品を食べた場合でも過剰な心配は要りません。例えば、一次的にビタミンAを摂りすぎてしまったという場合は、それ以降は頻繁に食べることを避けられるといいでしょう。

なお、食物以上に影響が大きいのが「サプリメントによるビタミンAの過剰摂取」です。妊娠中はビタミンAが含まれているサプリメントは摂らないようにしましょう。

妊婦はどれくらい穴子を食べていい?

和食を食べる女性のイメージ
Lazy dummy

妊婦さんの場合、具体的にどれくらいの量の穴子なら問題ないのでしょうか。

「この量を超えて習慣的に摂取した場合には、健康に悪影響をもたらすリスクがゼロではなくなる量」である耐容上限量は、妊娠の有無や妊娠期にかかわらず2,700μgRAE/日とされています[*2]。

妊婦が穴子を食べる際の目安量

穴子の目安量をイメージしやすいよう、穴子の寿司で考えてみましょう。

寿司一貫分の蒸した穴子を20g程度と考えると、これに含まれるビタミンAは180μgRAE程度です。蒸した穴子1尾分(60g程度)が乗っている穴子丼であれば、530μgRAE程度のビタミンAを含むと考えられます。

お寿司屋さんなどで刺身を避けなければいけない妊娠中は、穴子の寿司などでビタミンAやたんぱく質を補うといいですね。

お寿司屋さん

なお、ビタミンAの耐容上限量である2700μgRAE/日は、蒸し穴子5尾に相当します。実際に5尾も食べることはあまりありませんので、過度な心配はいらないでしょう。ただし、穴子とレバーやうなぎを併せて食べるなどは控えましょう。

ほかにも卵など、ビタミンAを多く含む食品は他にもいろいろあります。「毎日上限ギリギリまで食べてOK!」という考え方ではなく、連日の食べすぎを避けながら、穴子に限らず色々な食材を偏りなく食べるようにしましょう。

特に穴子の摂取量に注意したい時期

先にも述べた通り、穴子を食べるときに特に注意したい時期は妊娠初期です。ビタミンAの過剰摂取により赤ちゃんに先天異常を起こす最小用量は「1日に3,000μgRAEを超える量」[*4]とされています。

また、ビタミンAの過剰摂取は、多くはサプリメントや医薬品によって起こります。ビタミンAを医薬品として用いる場合、妊娠3ヶ月以内または妊娠を希望する人には禁忌とされているので[*4]、妊娠中だけでなく妊娠を希望している場合もビタミンAの摂取量には気をつけ、ビタミンAを含む医薬品を処方されている場合は主治医と相談してください。また、妊娠を望んだ時点で、ビタミンAに関してはサプリメントによる摂取も控えましょう。

妊娠中の穴子に関するよくある疑問

魚介類には、良質なタンパク質やDHAのほか摂取が心配される「水銀」も含まれています。妊娠中に穴子を食べて水銀の摂りすぎにならないか、これもよくある疑問で心配な人もいるでしょう。穴子に含まれる水銀量や、食べる際の注意点をお伝えします。

魚に含まれる水銀、穴子は大丈夫?

穴子の土瓶蒸しのイメージ
Lazy dummy

魚介類の多くは、産地を問わず水銀を含んでいますが、マグロなどの大型回遊魚やクジラやイルカ、一部の深海魚以外はごく微量なため、健康に害を及ぼすことはまずありません。

穴子の水銀量は極微量で、厚生労働省が示している水銀に注意が必要な魚介類にも入っていません。穴子に含まれる水銀に関しては、心配する必要はありません

うなぎも穴子と同じく注意が必要?

穴子と見た目が似ていますが、前半でも触れた通り、うなぎにはビタミンAが穴子よりずっと多く含まれています。特にうなぎの肝はビタミンAを高濃度で含むため、妊娠中は食べ過ぎないようにしましょう。

ビタミンAの量(100gあたり)

ビタミンAの量(100gあたり)[*1]
うなぎ・きも(生) 4,400 μgRAE
うなぎ・白焼き 1,500 μgRAE
うなぎ・かば焼 1,500 μgRAE
参考:あなご・蒸し 890 μgRAE


元気が出そうなイメージのあるうなぎですが、妊娠中にうなぎを食べるなら食べすぎには注意すると良いでしょう。かば焼きが100g程度乗ったうな重を一人前食べると、それだけで1日の耐容上限量のおよそ半分のビタミンAを摂ることになります。1日の耐容上限量を一時的に超えたからといって危険が高まるわけではありませんが、うなぎとレバーを毎日摂るというような偏りは控えましょう。

授乳中は穴子を食べていい?

授乳期のビタミンAは、成人女性の推奨量に450μgRAE/日をプラスすることが推奨されています[*2]。つまり、授乳期のビタミンA推奨量は1日1,100〜1,150μgRAEです。

この量のビタミンAを含む穴子は、寿司でいうとおよそ6貫、穴子丼ならだいたい2杯分になります。ただし、授乳期もビタミンAの摂取を穴子だけに頼らず、他の肉、魚、卵類などや野菜などと併せてバランスよく摂っていきましょう。

授乳中は妊娠中より少し多めに摂ることが推奨されているわけですが、ビタミンAの過剰摂取は赤ちゃんへの悪影響だけでなく、腹痛、食欲不振などを招くことがあるので、産後も過剰摂取には引き続き注意しましょう。

まとめ

穴子丼のイメージ
Lazy dummy

妊娠中でも穴子を食べて問題ありません。実際、穴子には妊娠中の摂りすぎに気をつけたいビタミンAが含まれていますが、うなぎやレバーなどと比べるとその含有量は少ないため、心配しなくてもよい食材です。むしろ、適度なビタミンAはおなかの赤ちゃんの栄養に欠かせませんので、しっかり摂りましょう。ただ、ほかの食品からもビタミンAは摂っているので、「好きだから」「おいしいから」と、穴子ばかり食べるのはNG。バランスのよい食生活を基本に食事を楽しみましょう。

(文:オノカヨ/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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