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2021年04月21日 10:45 更新

妊婦は生野菜を食べちゃだめ?トキソプラズマに感染するって本当?【管理栄養士監修】

妊娠中は寿司や刺身といった生ものは避けたほうがよいと言われているので、もしかしたらサラダなどの生野菜も我慢している人がいるかもしれません。生肉や加熱の不十分な肉などから感染し、赤ちゃんに影響することもあるトキソプラズマと生野菜の関係が気になっている人もいるのでは。果たして、妊娠中は生野菜も避けたほうがよいのでしょうか?

妊婦も「生野菜を食べていい」

器に盛られたたくさんの新鮮な生野菜
Lazy dummy

妊娠中は本当に生野菜を食べるのを、我慢しなければいけないのでしょうか? 結論から言うと、妊婦さんが生野菜を食べても「問題ありません」

生野菜には次で紹介するように、妊娠中にも役立つさまざまなメリットがあります。ただ、食べるとき注意したいポイントもあるので、それは後半で解説します。

生野菜はビタミン豊富

野菜にはビタミンや食物繊維などが豊富に含まれていますが、栄養素の種類によっては、加熱や水にさらすといった調理によって減ってしまうものも少なくありません。

たとえば、ビタミンCには加熱することで大きく減ってしまうという特性がありますし、ナイアシンや葉酸などはゆでると食品の外に流れ出てしまうため、ゆで汁ごと食べないと摂取できる量が減ってしまいます 。

生で野菜を摂取することは、こうした調理による栄養素の減少防止につながるというメリットがあります。

妊娠中の体重管理にも生野菜がおすすめ

生野菜のよさは、栄養価以外にもあります。

加熱していない分、噛み応えがあるため、生野菜は食事の際に噛む回数が自然と増えます。その結果、ゆっくりと時間をかけて食事をすることができます。 早食いの習慣がある人には肥満の多いことがわかっており、ゆっくりよく噛んで食べることは肥満対策になります。

よく噛むことは脳が満腹感を生み出すのを促進するので、食べ過ぎを防ぐことに役立つのです。体重の増え過ぎが気になる妊婦さんは、まず普段よく噛んで食事できているか振り返ってみてください。 早食いになりがちな人は、食事に生野菜を取り入れてみると良いかもしれません。

また、妊娠中はさまざまな要因から、胃腸の不調を感じやすい時期でもあります。噛む回数が増えることは消化を助け、胃腸への負担の軽減にもつながります。ドカ食いも胃腸への負担を増やしますが、よく噛んで、ゆっくり食べることはこの防止にも役立ちます。

生野菜で気を付けたい「感染」

腹痛でおなかをおさえる女性

妊娠中は、食中毒にかかりやすくなったり、重症化した場合に治療が大変になったり、赤ちゃんに影響する可能性があります。なかでも、特に注意したいのが「トキソプラズマ」と「リステリア菌」です。

生野菜からのトキソプラズマ感染はある?

トキソプラズマ症は、トキソプラズマという病原虫が原因となって起こります。抗体を持たない妊婦さんがトキソプラズマ原虫に感染すると、 お腹の赤ちゃんに影響が及ぶことがあります。

妊娠中に初めて感染した場合には、トキソプラズマが胎盤を通じて赤ちゃんにも感染し、「先天性トキソプラズマ症」になる可能性があります[*1] 。その結果、赤ちゃんに水頭症、視力障害、脳内石灰化、精神運動機能障害などの異常が現れたり、流産や胎児死亡につながることもあります。

なお、妊婦さんがトキソプラズマに初感染しても、必ず赤ちゃんに感染するというわけではありませんが、 赤ちゃんに感染する確率は妊娠後期になるほど高くなると言われています。一方、先天性トキソプラズマ症は妊娠初期に感染した赤ちゃんほど重症になるという報告があり、妊娠の全期間を通じて感染しないために注意が必要です 。

生野菜からのリステリア感染はある?

リステリア菌は、川の水や動物の腸管内などに広く分布する細菌で、全国で年間200人ほどの患者が存在するのではないかと推定されています。

リステリアに感染しても重症化することはまれですが、妊婦、高齢者、免疫力が低下している人は、少量の菌でも症状が現れることがあり、海外では高齢者を中心に死亡例も報告されています。また、妊娠中に感染した場合は、リステリア菌が胎盤や胎児へ感染し、流産に至ることもあります[*2]。

リステリア食中毒のリスクがあるとしてよくあげられるのは、ナチュラルチーズなどの乳製品、生ハムなどの食肉加工品、スモークサーモンなどの魚介類加工品ですが、 海外では過去に生野菜や果物を介したリステリア食中毒も起きています。ただ、日本では、農林水産省の調査(平成25~28年度)によると、国産の生食用野菜からリステリア菌は検出されていません[*3]。

そのため、生野菜からのリステリアの感染をそれほど心配する必要はありませんが、同じ調査では一部の生野菜から、下痢や腹痛の原因となることもある大腸菌が検出されています。リステリアに限らず、食中毒を予防するためにも、野菜を生で食べるときには、流水でよく洗いましょう

妊娠中に生野菜を食べるときのポイント

野菜を流水で洗う

生野菜からの感染を防ぎ、できるだけ安全に食べるために大切なポイントを紹介します。

生野菜は食べる前によく洗う

生で野菜を食べるときには、まずは丁寧に洗うことが大切です。水で洗い流すことで菌の数は減らすことができます[*4]。流水を使って、食べる前に十分に洗い流しましょう。

ただし、いくらよく洗浄しても野菜に菌はある程度残ります。低温で保存して菌の増殖を抑えながら、早めに食べきることも大切です。

サラダ用として販売されているカット野菜の中には、洗浄済みで洗わずに食べられるものもあります。この場合は必ず表示を確認し、「洗わずに食べられます」といった、洗浄済みであることを示す表示がある場合のみ、そのまま食べるようにしましょう。

また、野菜だけでなく、手や調理器具の衛生面にも十分に注意をしておくことが重要です 。肉などを触った後は、よく手を洗ってから野菜を触るようにしましょう。生肉を切った包丁やまな板で野菜を切らないように気を付けましょう。

鮮度のよい生野菜を食べる

より安全に食べるには、野菜の鮮度も大切なポイントになります。買うときには新鮮かつ傷みの少ないものを選び、持ち帰る際は一緒に買った肉や魚介はポリ袋に入れることで、汁が漏れて野菜に触れないように工夫しましょう。

保存の際は、菌を増やさないよう冷蔵庫の野菜室などに入れましょう。そして、できるだけ早めに食べることも忘れずに。なお、包丁などで切った後は、切り口から細菌が増えやすくなるといわれています 。切った野菜を長時間放置しないことも大切です。

生野菜・サラダだけに偏り過ぎない

生野菜だけでなく、加熱した野菜も上手に取り入れていきましょう。

加熱しても、栄養素がすべて減るわけではありません。ゆで時間を短くしたり、大きめにカットしたり、加熱に電子レンジを使ったりといった工夫をすると、栄養素の減少を少なくできることがあります。スープにして溶け出した栄養をまるごと摂るのも有効です。

加熱調理には野菜自体のかさが減り、たくさん食べられるというメリットもあります。量を食べることで、摂取できる栄養素の全体量が増えることにもつながるでしょう。またなかには、熱による損失が少なく、油と一緒に摂ると吸収率がアップするビタミン(脂溶性ビタミン)もあります。生野菜と加熱調理した野菜、両方をバランスよく取り入れていけると、なおよいですね。

ドレッシング類は控えめに

生野菜を食べるとき、ドレッシングなどの調味料をかけて食べることが多いかもしれませんが、そうした調味料のかけ過ぎには注意が必要です。ドレッシングや調味料には、意外に塩分が多く含まれていることがあるほか、油脂が多くカロリーの高いものもあります。

「塩分に気を付けてドレッシングを控えめにしたら、なんだか物足りない」という場合は、市販のドレッシングにちょい足ししてみるのもおすすめです。「レモンや柑橘類の果汁を加えて、酸味を足す」、「カレー粉、にんにく、生姜などのスパイスや薬味を足す」など、ちょっと風味を加えると、物足りない感覚が抑えられるかもしれませんよ。

まとめ

グリーンサラダ

妊婦さんが生野菜を食べること自体は、なんの問題もありません。ただし、妊娠中は通常時より食中毒に注意が必要と言われています。「食べる前には野菜をしっかり水で洗う」「できるだけ新鮮な野菜を選び、低温で保存する」「生野菜だけでなく加熱調理した野菜も取り入れる」といったことに注意して、生野菜がもつ栄養も取り入れていきましょう。

(文:山本尚恵/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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