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2021年04月22日 16:21 更新

妊婦にはトマトがおすすめ!でも……食べ過ぎても大丈夫?【管理栄養士監修】

妊娠中、つわりでつらいときでも「トマトだけは食べられた!」という人も少なくないのでは? 水分が多く、ほどよい酸味でさっぱりと食べられるトマトは、妊婦さんにおすすめの食材です。ポイントを押さえて、おいしく食べましょう!

妊婦にトマトがおすすめの理由

器に盛られたフレッシュなトマト
Photo by Anas Alhajj on Unsplash

トマトは栄養豊富で、妊婦さんにもお腹の赤ちゃんにも、うれしい食材です。どんな栄養素が含まれているのか、詳しく見てみましょう。

妊婦にうれしい栄養素が豊富

トマトに含まれる栄養素の中で代表的なのが、「β(ベータ)-カロテン」と「リコピン」の2つです。

β-カロテン

β-カロテンは、植物が作り出す色素の一種(カロテン)で、活性酸素の発生を抑えたり取り除いたりする作用(抗酸化作用)を持っています。活性酸素も生き物が生きていく上で大切な役割を持っていますが、過剰になると老化や動脈硬化、がん、生活習慣病の発症にかかわると言われています。

β-カロテンは、体内で必要な分だけビタミンAに変換されるので、プロビタミンAとも呼ばれています。

リコピン

トマトの赤い色のもととなっているリコピンもカロテンの一種です。β-カロテンとは違い、体内でビタミンAに変化することはありませんが、リコピンも活性酸素を減らす作用があり、しかもその抗酸化作用はカロテンの仲間(カロテノイド)の中でもとりわけ強いと言われています。

トマトは緑黄色野菜

なお、カロテンを豊富に含む野菜は「緑黄色野菜」と呼ばれています。トマトも緑黄色野菜の一種です。ただしこれは特別枠。

緑黄色野菜の基準は「カロテンを可食部100g中に600μg以上含む」ことですが、実はトマトはこれを満たしていません。食べる頻度や量が多いことを考慮して、緑黄色野菜に分類されているのです[*1] 。それだけ身近で、自然とカロテンを摂取しやすい野菜ということですね。

赤ちゃんのためにもたっぷり摂りたい野菜を手軽に摂れる

トマトなどの野菜に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維は健康の維持や増進に欠かせない栄養成分です。妊娠期に野菜をたくさん食べることで、妊婦さんだけでなくお腹の赤ちゃんの発育にも良い影響が期待できます。

しかし、もともと日本人は全体的に野菜の摂取量が少ない傾向にあり、特に20~40代の女性で目標量を大きく下回っています[*2]。 妊娠期も野菜の十分な摂取を心がけたいですね。丸かじりもできて、手軽に食べられるトマトは、野菜の摂取量を増やすのに便利です。

ちなみに「栄養素の不足が気になる」というと、サプリメントで摂取することを考えるかもしれませんが、それには少し注意が必要です。サプリメントには、栄養素が濃縮された状態で含まれています。その状態でリコピンやβ-カロテンを摂取する場合の安全性については、まだ十分な情報がありません。

また、そもそもサプリメントは薬のように厳格な品質管理が義務付けられていません。妊娠中の栄養摂取は食事からが基本で、葉酸を除いてサプリメントの使用は推奨されていません。どうしても食事から十分な栄養が摂れない場合や栄養不足が気になる場合は、自己判断でサプリメントを利用する前に、かかりつけの医療機関に相談してください。

妊娠中にトマトを食べるときのポイント・注意点

流水でトマトを洗う

妊婦さんにも、お腹の赤ちゃんにもうれしい食材であるトマト。食べるときには以下のポイントを押さえておくと、さらに安心です。

しっかり洗ってから食べる

妊娠中、トマトのように生の状態で口にする食材は食中毒への対策が大切になります。妊娠中は食中毒にかかるリスクが高まり、感染した場合に赤ちゃんに何らかの影響が生じる可能性もあるからです。

たとえば、寄生虫であるトキソプラズマ原虫が原因の「トキソプラズマ症」という感染症では、抗体を持たない妊婦さんが初めて感染した場合、胎盤を通じて赤ちゃんに感染し、流産や子宮内胎児死亡を引き起こすほか、お腹の赤ちゃんの目や脳などに異常が起こる「先天性トキソプラズマ症」を発症する可能性があるといわれています。

トキソプラズマは、トキソプラズマの卵を含む猫の糞や土を触りそれが口に入ったり、トキソプラズマ原虫のいる 家畜の肉を十分に加熱せずに食べたりすることで感染します。 そのため、野菜を扱うときにも以下のようにトキソプラズマの感染予防をしましょう。

(1)野菜や果物は食べる前に流水でよく洗う
(2)生肉を触ったあとはよく手を洗ってから野菜を触る
(3)生肉を切った包丁やまな板で野菜を切らない
(4)ガーデニングや畑仕事をする場合は手袋を着用し、作業後はよく手を洗う


なお、食中毒の原因となるのはトキソプラズマだけではありません。ほかの病原体の感染予防も含め、トマトを生のまま安全に食べるためには、できるだけ新鮮で傷んでいないものを選びましょう。また、持ち帰るときは一緒に購入した肉・魚介類はポリ袋に入れます。そうすると、肉・魚介類から出た汁がトマトにつくのを防げます。

調理のときは、手や調理器具を清潔にすることも忘れずに。野菜は切り口から細菌が増えやすいので、切った後は低温で保存し早めに食べましょう。

冷やしたトマトは食べ過ぎに注意

夏場などは特に、冷たくしたトマトを食べたくなるかもしれませんが、冷たいものを食べ過ぎると下痢などを誘発することもあるので、気を付けたいものです。冷たいものの摂りすぎは、腸の粘膜の一部を刺激し、大腸のぜん動運動を活発にさせ過ぎてしまいます。すると、腸が水分を十分に吸収しきれなくなるため、下痢が起こりやすくなります 。

それほど深刻に考えなくてよいことが多いのですが、もともと下痢になりやすい人や、妊娠して下痢をしやすくなった人は、冷やしトマトなどの冷たい食べ物の摂り過ぎには注意しましょう。

塩やドレッシングは控えめに

トマトなどの生野菜では、味付けで使う塩やドレッシングの量にも気を付けましょう。ドレッシングには意外に多くの塩分が含まれているほか、カロリーも気になります。

ドレッシングの量を抑えて健康的に野菜を食べたいときは、「レモンやすだち果汁などを足して酸味を生かす」、「生姜やカレー粉など薬味やスパイスを足して香りを生かす」、「潰したり刻んだりした柑橘系の果物を足して甘みや酸味を生かす」などの工夫を試してみるとよいですよ。

妊娠中のトマトに関するよくある疑問

カップに入ったトマトとスプーン

そのほか、トマトに関するいくつかの疑問をまとめて紹介します。

つわり中にトマトを食べたくなるのはなぜ?

「つわり中にトマトが食べたくなった」という妊婦さんは決して少なくないようです。とはいえ、つわり中の食の好みは十人十色。トマトのような水分多めであっさりしたものを好む人は多そうですが、人によってはポテトフライなどの脂っこいものが無性に食べたくなることもあります。また、おせんべいのようなかみ応えのある食べ物を好んだり、氷やアイスばかり口にしたりする人もいるなど、さまざまです。

つわり中にトマトが好まれる理由は人それぞれですが、温かい食べ物の臭いがダメという人もよくいるので、冷やしてさっぱりと食べられるところが、喜ばれているのかもしれません。つわり中は栄養不足が気になることもあると思いますが、まずはつらい時期を乗り切ることが大切。トマトに限らず食べられそうなものを、「食べられるときに食べられる分だけ」口にしておきましょう。

トマトに摂取量の目安はあるの?

妊娠期に限りませんが、生活習慣病などを予防し健康に過ごすためには、「野菜類は1日350g以上食べる」ことが推奨されています。このうち、緑黄色野菜は1日120g以上の摂取が目標です[*3]。

中くらいの大きさのトマト1個がだいたいこのくらいの重さです。ただし、トマトだけを食べ続けると栄養の偏りが心配なので、できるだけさまざまな野菜をバランスよく食べるようにしましょう。

β‐カロテンも妊婦はNGなの?

ビタミンAは目や皮膚の粘膜を健康に保つ働きなどがあり、大切な栄養素ですが、摂り過ぎると害になることが知られています。過剰摂取により吐き気、めまい、皮膚の異常などの全身症状が現れるほか、妊娠中の場合は赤ちゃんに先天異常が起こるという報告もあります 。

しかし、β-カロテンについては摂取してから体の中で必要に応じてビタミンAに変わるため、摂りすぎてもビタミンAの過剰摂取時に起こるような症状は見られないとされています 。β―カロテンはしっかり摂りましょう。

まとめ

トマトとレタスのサラダ

トマトは抗酸化作用のある成分を豊富に含む緑黄色野菜。さっぱりしているので、つわりの時期にも比較的口にしやすく、丸かじりもできて手軽に食べられるので野菜不足解消にぴったりです。妊婦さんがトマトを食べるときは、衛生面に十分に注意するとともに、ドレッシングの塩分などにも気を付けておくとよいでしょう。妊娠中の食生活にも上手に取り入れて、トマトの栄養を活用できるとよいですね。

(文:山本尚恵/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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