セルフプレジャーブランド・ irohaスタッフが語る「私がアダルトグッズショップで働く理由」
「セルフプレジャー」という言葉を作った、日本のヘルスケアブランド「iroha」は今年で10周年を迎えます。
セルフプレジャーとは、女性が行うマスターベーションのこと。でもマスターベーションという言葉は男性らしさが強く、女性が口にしやすい言葉ではありません。だからirohaは、女性が自分自身を大切にする行為という意味を込め「セルフプレジャー」としてリブランディング。女性のセルフケアやウェルネスライフに貢献しています。
そんなirohaは4月17日、アダルトショップの店員として働くことになった女の子の人生を描く映画『セールスガールの考現学』とコラボレーションしたトークイベントを開催。登壇したのは、映画の主人公と同じく、irohaブランド製品を扱うショップで店員として働く武田梨奈さんと、irohaのブランド広報の犬飼幸さん。トークショーでは、彼女たちがアダルトグッズを扱うirohaで働きたいと思った理由が語られました。
「性をもっとオープンに」を広めたくて
アダルトグッズという名称は一般的だけど、irohaのグッズは大人じゃないと買えないわけではありません。実際、ショップには未成年が訪れることもあれば、家族連れで子どもが訪れることもあるそう。それでも、ショップで働いている武田さんは、偏見の目で見られることもあるのだとか。
「で、お姉さんは全部使ってるの? なんてセクハラ風に聞いてくる人もいます。偏見の目はあるけど、年々お客様が多様化していることを感じています。irohaは一般の商業施設に展開しているショップも多く、お洋服や雑貨の延長にグッズたちが現れるので、何も知らずに入店してくださる若い女性もいますし、カップル間の性交痛を改善したいと、恋人同士できてくれる人もいるんですよ」
そんな武田さんがirohaで働きたいと思ったのは、自身の性の悩みを、誰にも相談できなかったことがきっかけなのだそう。
「悩みを人に打ち明けられないなんてつらいし、生きづらい。そう思っている時に、irohaの親ブランドであるTENGAのブランドメッセージを目にしたんです。TENGAのビジョンは、性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていくこと。これが、私がやりたいことだなと思って応募しました。今は実際に店舗に立つようになって、不安だから相談したくて……という方をヒアリングしながら商品を購入していただくこともあります。『お姉さんがいたから買えました』と言ってもらえる時、ものすごくやりがいを感じます」
irohaのショップは私たちの想像する暗くて怪しい雰囲気はなく、明るく入りやすいお店づくりを心掛けているという。実際に置かれているアイテムも、従来のいやらしさをまとうものとは違い、色合いが柔らかく、ふわふわしていてかわいらしいものがたくさんあります。
広報の犬飼さんは、女子大生時代にエロの話題を取り扱うライターだったことが、iroha入社のきっかけに。
「エロライターになったのはたまたまだったし、本名で記事が発信されていくことに恐怖もありました。でも実際に記事が出てみると、予想以上にポジティブな感想が多く、女の子も性の話に興味があるし、そのことを言えずに秘めているんだと感じました。新卒はPR会社で働きましたが、転職の時にTENGAを見つけて、これだなと思いました」
アダルトグッズ、と呼ばれることもある商品を扱う会社で働いていると「どんな理由があってこの会社に?」と言われることもある、と二人は語ります。けれど、二人とも能動的に性に触れ、そして「性をもっとオープンに」と、強い意思を持って働いています。
女性目線で作られたアイテムたち
irohaのアイテムは、それぞれが世に出るまでの間に、多くの女性社員が関わるのだそう。だから商品の設計も女性目線で、使う時に不安を感じないやさしい使用感なのだとか。
「ショップで人気なのは、挿入型の『iroha FIT』ですね。触った感じも柔らかく、それに静音性もバッチリです。あとは、最新作の『iroha mai』。音波振動という新たな技術を使っていて、体全体に柔らかい振動が深く伝わる感じがやみつきなんです」
実際にアイテムを手にとって見ると、とにかくさわり心地が気持ちいい。アンチダストコーティング加工で衛生的だし、充電式のボックスもついているので、充電中もベッド周りでアイテムがゴロリと置いてある……ことにならないのも素敵。
「あとは、隠れ人気アイテム『iroha SVR』。スマートバイブリングになっていて、リングを引っ掛けると、行為中に二人で使うことができるアイテムなんです。リングはよく伸びるので、どんなサイズの男性でも問題ありません」
irohaのアイテムは、ひとりでもふたりでも使えるものばかり。ひとりの時に使っているものも、見た目がかわいいから「持っていると言い出しづらい」ということもありません。
実際に起動してみると、音もとても静か。これなら、同居人がいても安心して使えそうですし、彼に「したい」と言い出せない日は、トイレやお風呂でもこっそり使えそうです。
セルフプレジャーは「あなたにしかできないこと」
性の話題は、インターネットでは「触れることもできる話題」になってきています。リアルでは、まだ難しい部分もあるけれど……でも、そんなリアルを変えるきっかけのひとつが、irohaでのセルフプレジャーなのかもしれません。
「触れづらいと思っていた性の話題を受け入れられるようになると、他のいろいろなことも素直に受け取れるようになりました。irohaが、誰かの人生で変化のきっかけになればいい」と武田さん。犬飼さんも「大変なことはあっても、好きなことだから楽しめています」と話します。
二人にとっても、かつてタブー感があった性の話題。しかし二人はirohaで働く中で、性をナチュラルに捉えられるようになったのかもしれません。二人はそれを「世に広めたかったから」irohaで働いています。
irohaの認知も、この10年でかなり広がりました。それとともに、女性も「セルフケアとして、セルフプレジャーをしていい」という考えも広まっています。睡眠の導入になったり、膣トレになったりと、セルフプレジャーにはメリットもたくさんあります。自身のケアは自分にしかできないことで、逆に言えば、あなたさえ目を向ければ、すぐに始められること。
やり方が分からなければ、irohaのショップでは武田さんのような女性スタッフが、お悩みや不安に合わせた商品選びで、使用方法も教えてくれるそうです。誰にも言えないなら、irohaで悩みを共有してみたら、人生が変わるかもしれませんよ。
(取材・文:ミクニシオリ)
※この記事は2023年04月20日に公開されたものです