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挑戦し続けて夢を掴んだ「スキルアップキャリ」。マザーハウス・林さんの働き方

#働くわたしの選択肢

ミクニシオリ

「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。

取材・文:ミクニシオリ
撮影:大嶋千尋
編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部

「入ってみたらなんか、想像と違う働き方になっちゃったな」

会社概要や企業理念を熟読しても、自分らしく背伸びし過ぎずに面接に臨んでも、就職・転職した会社での働き方や仕事が「自分のイメージとは違う」と感じてしまうこと、ありますよね。

実際に社員として働いてみないと分からないことも多く、転職活動にはパワーと時間が必要です。なんとなく自分の働き方に納得がいかなくても「次のところはもっと大変かも」「私にはこれ以上は無理なのかも」と、諦めたくなってしまう人も多いはず。

しかし、行動力のある女性は「妥協の選択肢」を取りません。次の会社も同じかどうかは、やってみないと分からない。昔落ちた会社だって、スキルをつけて再チャレンジすれば、今度は受かるかもしれない。前向きな考え方で、自分らしい働き方を模索し続ける女性もいます。

林星絵さんは3回の転職を経て、現在は株式会社マザーハウスでWEBディレクターとして働いています。文系大学を卒業し、新卒当時はバックオフィス系の総合職についた彼女。自身が満足する働き方を実現するために、諦めず行動し続けた林さんのキャリアは、足りないものは自分のアクションで補う「スキルアップキャリ」でした。

挑戦を続ける人のキャリアは、得てしてユニークです。バックオフィサーから未経験でWEB業界へのキャリアチェンジ、さらにはJICA海外協力隊(※)でのボランティア活動を経て、発展途上国でモノづくりを行う企業、マザーハウスにWEBディレクターとして転職した林さん。夢を掴むために「挑戦し続ける」選択肢は、彼女の未来をどう変えるのでしょうか。

(※)日本政府が行う政府開発援助 (ODA) の一環として、外務省所管のJICA(独立行政法人国際協力機構)が実施する海外ボランティア派遣制度。環境問題や格差の問題、医療の問題から農業の問題まで、開発途上国の国づくりに貢献できるよう、様々な人材が現地へ派遣されています。

夢だった国際協力活動を経て「自分の小ささ」を思い知った

ミクニ

林さんは現在までに、3回の転職活動を経てマザーハウスに入社したとのことでしたね。

林さん

そうなんです……多いですよね(笑)。

ミクニ

これまでのキャリアを教えていただけますか?

林さん

高校生の頃、フィリピンのスラムにスタディーツアーに行ったことがきっかけで国際協力に興味を持ち、大学では国際文化系学部を選択しました。卒業後の選択肢として、JICA海外協力隊への参加も希望したのですが、その時は受からなくて。まずは海外とつながる仕事をしながら社会人経験を積もうと思い国際物流の会社に就職したのですが、バックオフィサーとしてPCに向かっていても、世界とつながっているという実感は持てませんでした。

ミクニ

入ってみたら「想像と違う」って、ある意味“新卒あるある”ですよね……。

林さん

その後、医療機器メーカーに転職、サプライチェーンの仕事に携わってみたのですが、会社の社風に馴染めなかった上に、やっぱり「ずっとこの仕事でいいのか?」「自分が本当にやりたいことは何なのか?」ということに悩みました。

このまま転職しても同じことの繰り返しと感じたため、この先本気で取り組んでいきたいことを探すこと、会社に頼るのではなく、自分の力で生きていく力を身につけること、この2点について模索していたら、デジタルハリウッドSTUDIO渋谷のWEBデザイナー専攻の存在を知り、入学することにしたんです。

ミクニ

会社務めとのダブルワークということでしょうか。忙しくなかったですか?

林さん

忙しくても今頑張らないと、現状を打開できない、自分の理想とする生き方には近づけないなという気持ちがありました。WEBデザインは世界のどこに行っても使えるスキルになると思い、自分の役に立つスキルを身に着けたいというモチベーションで頑張りました。

ミクニ

身についたスキルはどのように活かしていきましたか?

林さん

もともとは自由な生き方にあこがれてWEBデザイナーを志したものの、チャレンジしてみると、WEBデザインを通して、クライアントのビジネスの促進や課題解決に役立つことにやりがいと魅力を感じました。なので、フリーランスは目指さず、デジタルハリウッドSTUDIOを卒業した後、付け焼き刃のWEBデザインスキルを実践的なものにしようとWEB業界への転職を決意しました。

結果、WEB制作会社に転職し、とにかくがむしゃらに働きました。1年経験を積んだ後、たまたまJICA海外協力隊でWEBデザインスキルを持つ隊員を募集しているという募集要項を見つけたんです。今の自分ならWEBのスキルを使って、発展途上国の人たちが抱える課題や問題を解決できるのではないかと思い、思い切って応募してみたら、見事合格することができました。

ミクニ

ためになると思ってつけたスキルを使って、夢を叶えることができたんですね!

林さん

身に着けたWEBデザインのスキルを活かして、もともと興味があった国際協力の分野で活動できたのは、やりがいがあり、とても嬉しかったですね。

JICA海外協力隊は発展途上国の様々な国と地域で活動していて、行く国や、職種によって活動内容が全く違うんです。私の場合は「デザイン」という職種でエジプトへ行って2年活動し、貧困層のキャリアや教育プログラムを支援するNGOの広報部に所属しました。いざ現地に行ってみると、インフラや予算の関係で、WEBデザイナーとして私一人頑張っても、できないことも多いということを思い知りました。私にできたことと言えば、ちょっとしたフライヤーや広報誌を作ること、SNSの運用などでした。

ミクニ

夢だった海外での活動を経て、イメージとのギャップを感じられたとのことですが……心が折れることはありませんでしたか?

林さん

できることは少ないなりに、最大限何ができるのかは考えて行動したつもりです。自分という人間の小ささを知るきっかけとはなりましたが、その悔しさ以上に、現地の人々とのコミュニケーションや、途上国の暮らしの現状を知ることは、私にとって意義のあることでした。

高校生の頃訪れたフィリピンでは、スラムで暮らす人々の暮らしを見ても、ただ眺めることしかできませんでした。でもエジプトではJICA協力隊員として派遣された職場だけではなく、個人的に活動の場を広げ、長期的にスラムに通い、コミュニティに根付いた活動をしたり、イベントを企画したりして現地の人たちの役に立つことを模索しました。高校生の頃噛み締めた「何もできない自分」からは、成長することができたなと思っています。

挑戦が結果になって形作る「自分らしい働き方」

ミクニ

やってみないと分からないことって、たくさんありますよね。イメージとギャップはあっても、林さんにとってメリットは大きかったですか?

林さん

そうですね。JICA海外協力隊の活動のおかげで、キャリアアップ転職にもつながったと思っています。

ミクニ

協力隊の活動の後に、マザーハウスに転職されたんですね。

林さん

新型コロナが蔓延し始めた時に、少し帰国を早めて日本に戻ってきました。一度は地元に戻って、デジタルハリウッドSTUDIOのオンラインチューターをしたり、前の会社や知り合いから引き受けたデザインの仕事をしたりと、ノマドワークをしていたのですが……その時にマザーハウスの求人募集を見つけたんです。

ミクニ

マザーハウスへの志望動機はなんだったのでしょうか。

林さん

マザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を掲げ、途上国の素材を活かしてレザーのバッグやジュエリー、お洋服などを生産、販売している会社です。帰国後は、WEBの仕事は続けていきたいとは思いながらも、次に転職するなら今までよりはステップアップし、「ただ作って終わり」ではなく、制作するクリエイティブに徹底的にこだわって、高いクオリティを追求できる会社がいいなという気持ちもありました。そんな時に、前から興味があったマザーハウスからWEB系の募集が出ているということを知り、すぐにオンライン説明会に応募しました。

ミクニ

即行動できるバイタリティ、大切だと思います。

林さん

しかし説明会に参加してみると、自分にはスキル不足だとも感じました。プロダクトの生産から販売まで自社で行うだけではなく、販促やそれに携わるクリエイティブ業務も社内で行っているところが自分の理想とする仕事ではあったものの、求められるアウトプットに対して自分のスキルが伴っていないと感じたためです。

イベント後のアンケートでは「スキルをつけてからまた挑戦したい」と書いたのですが、説明会担当の方が、JICA海外協力隊やWEB制作会社でのディレクション経験に興味を持ってくれ、「まずは面談だけでもどうですか」と個別に声をかけてくれたんです。面談で不安な部分も正直に話せたことで、面接にチャレンジしようと思うことができ、最終的には思ってもみなかった内定をいただくことができました。

ミクニ

巡り巡って、ご自身の活動してきたことが自分の道を作り上げていっているような……理想的なキャリアステップですね。

林さん

もともと興味があった途上国に携わる仕事に、自分のスキルを掛け合わせることができ、とても有意義な転職になりました。数字を分析しながらオンラインストアの売上に責任を持つなど、前職のWEBディレクションでは経験しなかった部分はまだまだ力不足を感じることはありますが、PDCAを繰り返しながらビジネスの課題に徹底的に向き合っていくことにチャレンジしたかったため、今も日々働きながら勉強させていただいています。

ミクニ

マザーハウスでの仕事の中で、やりがいを実感する瞬間はどんな時ですか?

林さん

私は今ブランドサイトとオンラインストアの運営をしているのですが、やはり自分がディレクションしたページがWEBに上がり、お客様から反応をいただける時は嬉しさを感じます。

マザーハウスの製品は、バングラデシュのバッグや革小物、インドネシア、スリランカのジュエリーなど、6か国の発展途上国の素材を使って、現地の職人たちの手で作られているんです。WEBサイトは海外のお客様向けのページも用意しているので、日本の人だけでなく、世界中の人がマザーハウスの製品を手に取ることができます。協力隊での草の根活動も意義のある時間でしたが、ボランティアという支援の形ではなく、ビジネスとして今までよりも大きなスケールで、発展途上国の人たちの可能性を世界に発信するチャンスを与えてくれたのは、マザーハウスでした。

ミクニ

ブランドの商品も素敵なので、いっそうやりがいを感じそうですね。

林さん

様々な国の伝統技術を活かした商品は、使用感の心地よいアイテムも多いんです。自社商品ながらデザインも可愛くて、私物でもたくさん使っています。今は革製品がブランドの主力商品ですが、使うほどに味わいの出るものなので愛着も湧きます。

ECサイトは商品ページの撮影ディレクションからページライティングまで、ブランドサイトは主に特設ページのディレクションを担当しているので、職人たちの技術や、商品の良さが伝わるよう努めています。

ミクニ

今まで、ご自身のアクションで夢を掴んできたかと思うのですが、現在はどんなことを目標にされていますか?

林さん

今は、WEBを通じてマザーハウスというブランドの世界的な認知をもっと上げることが目標です。ブランドを広めることが売上につながり、さらには自社工場の職人の技術の向上につながります。結果的には国の発展につながっていくと感じているため、自分もそこにもっとコミットしていきたいなと。

それに今はリモートワークと出社のバランスが半々なので、昔思い描いていた場所にとらわれず自分のスキルを活かす働き方に近い形を実践できています。ただ職種的にはトレンドをキャッチし続けていく必要があるため、今持っているスキルに満足することなく、なんとか時間をみつけてインプットをしていかなければと思っています。

ミクニ

常に向上心を持ち続けることで、未来は変わるということを実感させていただきました。私ももっとがんばりたいです……! 林さんの働き方、選択肢として参考にさせていただきます!

※この記事は2023年02月08日に公開されたものです

ミクニシオリ

1992年生まれ。2017年にライター・編集として独立。芸能人やインフルエンサー、起業家など、主に女性に対するインタビューを多数執筆。恋バナと恋愛考察も得意ジャンル。ハッピーとラッキーがみんなに届きますように。

Twitter:https://twitter.com/oohrin

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