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髙橋怜奈先生に聞く! アラサーが「婦人科検診」を受けた方がいい理由

【特集】わたしのココロとカラダの話。

マイナビウーマン編集部

女性なら一度は耳にしたことがある、婦人科検診。しかし、具体的にどのような検診のことを指すのか、どんな人が対象なのか、検診を受けたことがある方でも詳しく答えられる人は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科に在籍しながらYouTubeSNSでも活躍されている髙橋怜奈先生に、マイナビウーマン読者世代であるアラサー女子が「婦人科検診」を受けた方がいい理由について教えていただきました。

 

そもそも「婦人科検診」ってどんな検査?

先生、今日はよろしくお願いします! 早速ですが、婦人科検診というのはどんな検診を指すのでしょうか?

髙橋先生

よろしくお願いします。婦人科検診と言うと、産婦人科としては子宮や卵巣まわりのことと考えているのですが、一般的には乳腺に関する検診も含んでいると認識している方も多いので、いろいろな意味合いがあると思っています。

産婦人科としての婦人科検診の場合は、必ず「子宮頸がん」の検診を行い、オプションで膣に器具を挿入して子宮や卵巣の状態を見る「経膣超音波検査」をしています。乳腺科であれば乳がん検診も婦人科検診と言っているところはあります。

婦人科検診と言っても、いろいろな検診があるんですね。そういえば友達と話していて、結婚を考えている子や婚約した子が「ブライダルチェック」を検討していると言っていたのですが、婦人科検診とはまた違うのでしょうか。

髙橋先生

病院によってもさまざまですが、子宮頸がんの検査と超音波検査、性感染症の検査、あとは健康診断などでも行う血液検査や肝機能の検査などが含まれていることが多いです。そのため、定期的に子宮頸がん検診や超音波検査をしている方は重複する検査項目が多いので、受ける場合は事前に項目を確認すると無駄がないと思います。

マイナビウーマン世代が必要な検査は?

産婦人科では、なぜ必ず子宮頸がんの検診を行うのでしょうか。

髙橋先生

子宮頸がんは、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」と言って、性的な接触でうつるウイルスが主な原因の病気です。そのため、性行為またはそれに近い粘膜接触のある行為を一度でもしたことがある方は、子宮頸がんになる可能性があります。そして、子宮頸がんは毎年1万人が発症して3,000人の方が亡くなっています(※)。

死に至ることもある病気なんですね……!

髙橋先生

子宮頸がんは症状がないので、自分で気づくことが難しいんです。そのため、早期発見することで早期治療することにつながります。そういった意味でも、子宮頸がんの検診をすることはとても大切なことなんです。

自覚症状がないからこそ、検診を受けることが重要なんですね。ちなみに、性行為やそれに近い行為の経験がない方は、子宮頸がんの検診を受ける必要はないということでしょうか。

髙橋先生

性行為やそれに近い行為の経験がない方も検査をすることはできるのですが、内診をする過程で出血してしまったり、痛みの原因になってしまったりということがあります。

また、性行為やそれに近い行為をしたことがない場合は、子宮頸がんの主な原因であるHPVにはまず感染していないと考えられます。ですので、子宮頸がん検診は、基本的には性交経験のある方のみだけでいいでしょう。性交経験がないけれども心配な場合は、産婦人科医に相談をしてみましょう。

性行為の経験がない方の場合、他に受けておくべき検診はあるのでしょうか。

髙橋先生

産婦人科領域では特に必要はないと思います。ただ、生理痛や生理不順など何かしら症状がある場合は、お腹の上から検査する経腹超音波検査で子宮や卵巣を診ることができるので、診察を受けることをおすすめします。

マイナビウーマンの読者世代である2030代の方はどの検診を受けておくべきでしょうか。

髙橋先生

やはり子宮頸がん検診です。乳がん検診は40代からとなっているので、2030代の場合、まずは子宮頸がん検診をおすすめします。そして、できれば経膣超音波検査で子宮や卵巣の状態を診てもらうのがいいと思います。

住んでいる自治体から発行される子宮頸がん検診の無料クーポンなどもありますが、それだけではなく超音波検査もやった方がいいんですね。

髙橋先生

子宮筋腫や卵巣のう腫、子宮内膜症などがある可能性もあるため、それらの病気を発見できる超音波検査を子宮頸がん検診の時に一緒にやってしまうのがより安心だと思います。

というのも、子宮頸がんと同じく子宮筋腫や卵巣がん、卵巣腫瘍も全く症状がないまま進行してしまう病気です。子宮頸がん検診のみ毎年受けていても、超音波検査をしていなかったためにそれらの病気に気がつかないというケースも多いんです。

ぜひ超音波検査もやっておこうと思います……! ちなみに、実際に検診にいらっしゃる方は、どんなきっかけや目的があって来院する方が多いのでしょうか。

髙橋先生

もちろん検査を受けるために来院する方もいますが、私の場合は、別の症状で来た方に対して「検査を受けたことがないのであれば受けてみませんか」とすすめています。もちろん受けるかどうか最終的に決めるのは自分次第ですが、受けたことがないという方にはぜひ一度受けてほしいと思います。

子宮頸がんになったらどうなる?

子宮頸がんは死に至る病気だと教えていただきましたが、2030代でも亡くなる可能性はあるのでしょうか。

髙橋先生

がんと聞くとお年寄りがなるもの、というイメージがあるかもしれないですが、子宮頸がんは20~30代から発症する可能性のある病気で、進行具合によっては20代でも亡くなってしまいます。

また、婚約中の女性が子宮頸がんであることが分かり子どもが望めなくなって婚約を解消するケースや、妊娠中に子宮頸がんが分かって治療のために妊娠を中断する、つまり中絶するという悲しいケースもあります。発見が遅れることで、人生が大きく変わってしまうこともあるんです。

たまに妊娠を望んでいないから子宮を摘出しても問題ないので検診を受けません、という方がいますが、子宮の摘出だけで済めばいいですが、がんが進行して他の場所に転移していれば、治療はそれだけでは済まないんです。

子宮頸がんって、こんなにも人生に影響がある病気なんですね……。あらためて検診での早期発見が大切だと痛感しました。

婦人科ってどんなところ?

独身のアラサー女性の中には、そもそも婦人科に行ったことがないという方もいらっしゃると思います。やはり「婦人科に行く」ということにハードルを感じる方もいると思うのですが、そうした不安はどのように乗り越えればいいのでしょうか。

髙橋先生

婦人科に行ったことがない方から最も聞かれるのが、「どんな検査をするんですか?」という質問です。

特に性交経験がない場合、内診されるのではないかという不安から受診できないという方もいらっしゃいます。しかし、性交経験がない方に内診をするということはまずありません。また、性交経験がある方でも様々な理由で内診を受けたくないという方は、事前に伝えておくことで別の方法を提案することもできます。

問診票や最初の診察の中で、自分が不安に思っていることはきちんと伝えることが大事なんですね。

髙橋先生

よくある質問で「どんな検査を“される”んですか?」と言われることが多いのですが、検査は自分で同意してするものであって、無理やりされるものではないはずなんです。あくまでも自分に決定権があって、どんな検査をするかは自分で決められるということは、知っておいていただけたらと思います。

確かに病気となると先生に任せてしまう人も多いと思いますが、自分の体のことを自分で決めるという意識は大切ですね。

髙橋先生

あと、費用や所要時間といった、聞きづらいけれど気になることは質問してしまいましょう。私は事前に説明するようにしているのですが、先生によってどこまで説明してくれるかは異なるので、自分で聞いて情報を得ることが大事だと思います。

婦人科検診は「痛い」って本当?

せっかくなので、私から聞きづらい質問をさせてください。検査は「痛い」と聞くこともありますが、実際はどうなのでしょうか……?

髙橋先生

子宮筋腫や子宮内膜症などを患っている場合は痛みが出ることもありますが、一般的な検診の場合、リラックスして受けてもらえればそれほど大きな痛みを伴う検査ではありません。

採血などもそうですが、多少の痛みや違和感のある検査はあります。ただ、そうしたリスクと子宮頸がんなどの病気にかかって手術するリスクを比べてみて、何が自分にとって必要か考えてみるといいかもしれません。

怖いから受けないというのは、自分にとってもマイナスになってしまうかもしれないんですね……。でも、どうしても検査の直前になると不安で緊張してしまうこともあると思うんです。そういう場合はどうしたらいいのでしょうか。

髙橋先生

不安が強いと痛みが増強してしまうこともあるので、例えばどういった器具を使って検査するのか事前に見せてもらったり、カーテンが閉まっていて様子が見えないのが不安なのであれば開けておいてもらったり、自分が不安に思うことを医師や看護師に伝えて解消していくのがいいと思います。

自分がリラックスできる環境を作ればいいんですね。あと、検診に行く時の服装で気をつけることはありますか?

髙橋先生

強いて言えば、ストッキングは脱いでまた履くのに手間取ってしまうので、あらかじめ病院に行く予定がある場合は避けるといいかもしれません。しかし、症状があって急に行かなければならない場合もあると思うので、あまり気にせず普段の格好で大丈夫です。

自分に合った病院を見つけるポイントは?

婦人科の病院やクリニックってたくさんあるのでどこに行こうか迷うのですが、自分に合った先生を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか。

髙橋先生

相性もあるので、まずは行ってみないと分からない部分もあると思います。ホームページの雰囲気や、SNSをやっている医師も増えているので、そういうところから自分に合う病院やクリニックを探すのもいいと思います。

あと、症状が出てつらい時に初めての病院に行って「合わなかった……」となってしまうと体力的にも精神的にも大変だと思うので、婦人科検診を受ける時など、症状もなく余裕のある時に初めての病院に行くのがいいと思います。

なるほど! 余裕がある時に受診して、自分に合っていると分かった病院をかかりつけにすれば、いざという時に安心ですね。

髙橋先生

そうなんです。かかりつけを見つけて定期的に受診するとデータが蓄積されるので、医師としても症状が出た時に判断しやすくなります。

あと、かかりつけを見つけるまではいろいろな病院に行くことになるので、どんな検診を受けたか自分で把握しておいてもらえたらと思います。

確かにどんな検査をしたのか、自分自身のことなのに忘れてしまうことってありますね……!

髙橋先生

症状が出て受診した場合も、最後にいつ検診を受けたのか分かると医師としては助かります。検査結果を持ち歩くのは難しいと思いますので、スマホで写真を撮っておくのがおすすめです。

これからは結果をもらったら写真を撮るようにします!

まずは病院に「行く」ことが大切

最後に、婦人科検診に行くことを迷っている2030代の女性にメッセージをお願いします。

髙橋先生

冒頭でお話ししたように、子宮頸がんは毎年1万人が発症して3,000人の方が亡くなってしまう病気です(※)。早期発見すれば早期治療することができるので、怖がらずにぜひ受診してください。

また、もし検診が不安だという方は、まずはどんな検査をするのかお話を聞きに行くだけでも大丈夫です。初回は具体的に検診内容を聞くだけにして、心づもりができてから後日検診を受けに行くという方法もあります。まずは先生の顔を見てお話しするために受診するのもアリなんだ、ということを知っていただければと思います。

自覚症状がないからこそ、自分で検査を受けようと行動するのはとても大事なことですね。検診の不安を解消するために病院を訪れるというのも大丈夫だと分かり、安心しました。髙橋先生、貴重なお話をありがとうございました!

※公益社団法人 日本産科婦人科学会HP(https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=10 

(取材・文:マイナビウーマン編集部 まっつん)

※この記事は2022年11月03日に公開されたものです

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