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【File38】バンドマンに遊ばれた腹いせにバンドを乗っ取った話

#イタい恋ログ

ごまたん

今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はごまたんさんのイタい恋。

はじめまして。私はバツ11で12回目の結婚生活中のアラサー・ごまたんと申します。

酸いも甘いも経験した今でこそ「男性の言葉なんて話半分に聞けばいい」「ダメだと思ったら即見切りをつけて次に行けばいい」と思えるようになったのですが、そんな私にだって好きな人の甘い囁きを信じてしまうピュアな時代がありました。

え、私だけじゃなかったの?

若い頃の私はV系バンドが好きな、いわゆる“バンギャル”という属性でした。

当時はLINEもなければSNSも発達しておらず、憧れのバンドマンとお近づきになる手段としてはファンレターが主流。選りすぐりのレターセットに愛を込めた文章をしたため、プリクラを貼ってメールアドレスを添えてライブの出待ちで渡す……これがバンギャルたちの常套手段です。

私もそんなバンギャルの1人で、マイナーバンドのバンドマンに恋をし手紙を書き続けること数カ月……ついにメールが届き、私たちは晴れて男女の関係となりました。

彼からは「ファンレターはたくさんもらうけど返事をしたのはごまたんが初めて」「今はバンドが大事な時期だからまだ付き合えないし、人にも隠さなきゃいけないけど、成功したあかつきには正式に付き合ってほしい」などと言われ、私は幸せの絶頂に。しかしその幸せは長くは続きませんでした。

ある日バンギャル友達から恋愛相談を持ちかけられたのですが、状況が私と全く同じ……話を突き詰めていくと、なんと私と友達のお相手は同一人物だったのです

許せない、彼の一番大切なものを奪ってやる

おそらく彼は同じ手口で何人ものファンに手を出していたのでしょう。私は怒り狂い、復讐を心に決めます。常日頃から「バンドが何より大事」という彼だったので、そのバンドを破滅させる方向で計画を練りました。

偶然にも私の従兄弟はその界隈のイベンター。従兄弟経由で人脈を広げ、別方向から彼のバンドのメンバーに近づき、ヘアメイク&衣装製作&物販のスタッフとして雇われることに成功しました

用心深い彼は自分の女関係をメンバーにも秘密にしていたようで、私を見て一瞬表情が強張ったものの特に何も言わずに採用が決定。幸か不幸か彼は性欲の鬼だったため、私がスタッフに就任した後も私たちの関係は秘密裏に続きました。

採用後は彼以外のメンバーからの絶対的な信頼を得るためにとにかく働きました。イベンターとの人脈を生かして大きなイベントの出演枠をもらってきたり、地方のイベントの出演枠をもらってきたり、グッズ開発に力を入れて物販の売り上げを伸ばしたり……私なしではバンドが回らない、そうなったところで爆弾投下です。

「実はずっと前から彼に遊ばれてた。もうツラい。スタッフ辞めたい」

その後はもう修羅場です。ちょうどバンドが勢いに乗ってきた時だったので、メンバーの怒りは凄まじかったです。彼に対して「脱退しろ」とか「これまでの活動にかかった経費を賠償しろ」とか「ごまたんに慰謝料払えよ!」とか、メンバー全員で彼を糾弾する地獄絵図。

私は「ごめんなさい、私が全部悪いの……私さえいなければ……」とメンヘラ女の常套句を言いながらシクシク嘘泣きをしていました。

もはやバンドの解散は避けられず、私がスタッフとして潜入して1年、やっと私の復讐が大成したのです。

イタい恋から得た教訓「一番の復讐は忘れて幸せになること」

当時のマイナーバンドのスタッフなんて、どんなに仕事ができてもお給料は0に等しいものでした。私は18〜19歳の貴重な時間を復讐のために費やし、お金にもならない仕事に心血を注いだのです。30を過ぎた今となって思えば、その年頃の時期にしかできない経験がもっとあったはずです。私は売れないバンドマンへの復讐のために、その時期の貴重な1年間を無駄にしました。さっさと見切りをつけて、次の恋に進むべきだったのです。

さて、先日十数年ぶりにその彼に会う機会がありました。

偶然の再会だったのですが、声をかけられた時点では彼が誰なのか、本当に分かりませんでした。彼の容姿が変わっていたのもありますが、私の記憶から彼がきれいさっぱり消えていたのが要因でしょう。

知らないふりをしたとかではなく、本当に誰だか分からなくて「以前どこかでお会いしましたっけ……?」と真剣に尋ねてしまいました。その時の悔しさと恥ずかしさの混ざり合った彼の表情を見てやっと「あ、私が昔好きだったバンドマンだ」と思い出したのです。

自分にとっての忘れられない相手が自分のことをきれいさっぱり忘れている……こんなに悲しいことはありません。

一番の復讐は“さっさと忘れて幸せになること”なのだなと改めて実感しました。

(文・ごまたん、イラスト・菜々子)

※この記事は2022年02月13日に公開されたものです

ごまたん

12回結婚して11回離婚した人妻。経験を基にコラムを執筆中。

Twitter @gomachan_ks

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