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女性が“同棲”で得られるものは? 『恋のツキ』同棲あるあるを分析

高橋千里

※この記事は『恋のツキ』のネタバレが含まれます

「もうすぐ32歳。この先、新しい出会いがあるとも思えない」

2016年から2019年まで『月刊モーニングtwo』で連載され、結婚前のアラサー女性の心をえぐりにえぐった漫画『恋のツキ』(講談社/新田章)。その評判は連載開始からじわりじわりと広がりを見せ、2018年にテレビ東京の深夜ドラマ枠で実写化された。

ドラマでは、登場人物たちの心の機微を、まるで映画のようなエモーショナルな映像に乗せて描く。そして実写化したことで、結婚前の女性が抱く焦燥感や欲望を、原作よりも生々しく感じることができる。

主人公のワコ(徳永えり)は、恋人のふうくん(渡辺大知)と付き合って4年、同棲して3年。「このまま彼と結婚するだろう」と思っていたある日、アルバイト先の映画館で高校生の伊古くん(神尾楓珠)と出会う。

見た目が好みなだけでなく、“映画が好き”という共通点がある伊古くんにワコは惹かれていく。予期しなかった出会いを通して、自分の生き方を見つめ直していくストーリーだ。

ワコと伊古くんの恋愛模様が物語の本筋だが、個人的にはワコとふうくんの同棲シーンに注目したい。この世の全同棲経験女性が「分かる!!」と叫びたくなるような、リアルな「同棲あるある」が詰まっている。

そして最終的にワコが取った“選択”にも、この同棲生活が大きく起因している。

今回は、本作の「同棲あるある」をピックアップしながら、主人公・ワコの心情の変化をたどっていく。

同棲あるある1:マンネリ化しがち

当たり前だが、同じ人と長い期間を一緒に過ごしていると、どんなに好きでもマンネリ化する。

朝は、スーツ姿のふうくんがバタバタと家を出て行き、アルバイト生活で比較的時間に余裕があるワコは洗濯物を干す。夜は、仕事から帰ってきたふうくんと一緒にごはんを食べて、布団で一緒に寝る。そういった何気ない日常が、アパートの1Kで毎日繰り返される。

たまにふうくんは、ワコの手料理にケチをつけたり、一緒に出かけることを後回しにしたり、自分本位な性行為を強要したりする。

しかしワコは「ふうくんの良いところも悪いところも、日常として捉えるようになってしまった」とモノローグで語る。これは許容とも取れるが、一種の諦めでもある。

付き合い始めはお互いに気を使い合っていたはずが、3年も同棲したことで、いつしか“同居人”のような関係に変化してしまっていた。

同棲あるある2:結婚が先延ばしになりがち

ドラマの第1話は、主人公のワコが、ふうくんと一緒に布団の中で雑談するシーンから始まる。

近々ふうくんの実家に行こうという話題だが、「うちの実家に行くのはいつにする?」とワコが問うと、明らかに面倒そうな態度ではぐらかされる。

ふうくんが会社の女性上司に「ワコちゃんといつ結婚するの?」と聞かれた時も、「結婚、しますよ、いつか。今すぐする必要なくないですか?」と、結婚に消極的な姿勢を見せる。

ワコが自分からズイズイと結婚を迫れない性格なのは、ふうくんもよく知っている。それをいいことに決断を先延ばしている最中に、ワコは高校生の伊古くんと出会い、恋に落ちる。

それまでのワコは、自分の年齢や周囲からの声を気にして「女としてのピークを逃した今、ここで(ふうくんと)別れるなんて考えられない」と思っていた。

しかし、伊古くんを本気で好きになってからは、結婚や出産の呪縛から少しずつ解放されていく。世間体より、自分の“好き”という感情が一番大事だと気づいたからだ。

ワコの心情の変化に気づき始めたふうくんは、焦って結婚の話を出したり、婚約指輪を買ってきたりする。彼女が自分から離れそうになると急に結婚を進めようとするのも、(同棲に限らず)あるあるかもしれない。

同棲あるある3:価値観の違いが表面化しがち

ワコの心変わりにより一度別れそうになりつつも、どうにか同棲生活を取り戻した2人。

ワコは伊古くんへの気持ちに蓋をして、ふうくんとの結婚生活に向けて就職活動を始める。そしてふうくんも、今までの自分を反省し、ワコを気遣いながら暮らすようになった。

しかし、それも長くは続かない。ある日、2人の行く末を決める決定的な出来事が起こる。

就職活動がうまくいかないワコは、知り合いに映画の撮影アシスタントのアルバイトをやらないかと誘われる。それをふうくんに話すと、「どうせワコは作る才能も情熱もないんだから」とやんわり反対されてしまう。

もちろんワコだって、今の生活を考えると現実的な話ではないと思っていた。だけど“映画”はワコの人生において大切な軸で、いつか映画関連の仕事をすることを夢見ていたのも事実。それをすべて否定されたように感じたのだろう。

ふうくんの何気ない発言が、ワコの心をひどく傷つけ、少しずつたまっていた不満があふれかえった瞬間だった。

その後、ワコが「私と、別れてください」と土下座するシーンは『恋のツキ』史上に残る名場面だ。

この場合、どちらかが悪いわけじゃない。ふうくんは現実主義者で、夢を追うワコとは価値観が合わなかった。それが同棲生活によって表面化しただけだ。

そして、同じように映画が好きで、学校でも映画の自主制作に励む伊古くんこそが、ワコの人生にぴったり合う人だと気づいたのだ。

「同棲してよかった」か、「同棲しなきゃよかった」か

ワコは伊古くんと出会わなければ、ふうくんと結婚していたかもしれない。しかし、結婚後に幸せな人生を歩めていただろうか。

結果的に別れることになった2人が「同棲をしてよかった」と思うか「同棲なんてしなければよかった」と思うかは、数年後に振り返った時に初めて分かるはず。

ドラマと原作はそれぞれ違う結末を描く。ワコの選択がどのような未来につながっていくのか、自分自身を投影しながら追いかけてみてほしい。

(編集・文:高橋千里、イラスト:タテノカズヒロ)

※この記事は2021年07月17日に公開されたものです

高橋千里

高橋千里(たかはし ちさと)

2016年にマイナビ中途入社→2020年までマイナビウーマン編集部に所属。芸能人インタビューやコラムなど、20本以上の連載・特集の編集を担当。2021年からフリーの編集者・ライターとして独立。女性向けジャンル(恋愛・美容・エンタメなど)を中心に活動中。女子アイドル、恋リア、コスメ、お酒が好き!

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