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第50話 温かい手のひら

前田くんの言葉に、わたしは眼を見張った。

「彼氏さん、魅力ある人なんだろうな。
だから女性が寄ってきて、
断りきれなくて、関係持って、
でも上手に切り回せなくて、別れられない。
だけどそれって、主体性ゼロだよね。
ずっと受け身。なら、また同じことが起こるよ」
「あ……」
前田くんに、まったく反論できない。
たしかに悠斗は今回、振り回されっぱなしだ。
ただひとつ『キミとは付き合えない』と、
あのコに断り続けたこと以外は。

「ぼくだったら、絶対そういう思いはさせない」
胸が痛くなった。悠斗がこんな風に、
強い気持ちで、わたしを引っ張ってれたなら、
どんなに心強いだろう。
わたしが返事をできないでいる中、
前田くんは、隣で丼をワシワシとかき込む。

「じゃ、遅くならないうちに帰ろう」
小料理屋から出ると、強い北風が吹き付けた。
前田くんが、わたしの手に触れる。
わたしは避けずに、温かい手をそのままつないだ。
でも……わたしが欲しいのは、この手じゃないみたい。

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