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第53話 浴衣の君と

山本さんからの誘いに、わたしはすがるように
「はい、行きます」と返事を出し、
今こうして、駅へと急いでいる。

どうしようかと迷ったけれど、
がんばって浴衣を着て行った。
孝太郎のことも、奥さんのことも、
転職のことも、今だけは忘れたかった。

「土曜日の夜なのに、混んでいるな」
電車の中は、わたしと同じような、
花火目当ての人や、浴衣の女性でいっぱいだ。

駅で降りても、待ち合わせの目印の場所には、
その目印がまったく見えなくなるほどの人。
山本さんに会えるかどうか、ちょっと不安になった。

LINEで連絡を、と思った時、
スマートフォンが鳴った。
「ぼくからは、佐久間さんが見えています。
そこを動かないでください」

それから2秒後「佐久間さん!」と呼びかけられ、
振り向くと、そこに山本さんがいた。
「じゃあ、行きましょう」
山本さんは、ごく自然にわたしの肩を軽くたたく。

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