お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

第51話 実感もないまま

声を落として囁くように話す孝太郎の顔を、
わたしはぼんやりと見た。
この人が、あのわめき散らす奥さんを、
思い通りに扱って離婚に持ち込めるとは、
とても思えない。

わたしが返事をしないでいると、
孝太郎はなおも、ひそひそ声で話を続ける。

「それにぼくたち、違う会社になった方が、
会うのも、付き合うのも楽になるし、ね」

今度のことで、あの奥さんは孝太郎を、
徹底的にマークするだろう。
会うのも付き合うのも、さらにむずかしくなる。

わたしがあきれて黙っていると、
孝太郎はもう一度腕を伸ばして、
わたしの手を両手で強くにぎった。

「ともかく、これからは社内メールで連絡する。
ひよりも、遠慮なく社内メールしてね。
転職先は、ぼくも探すよ」

わたしは呆然として、何も考えられないまま、
ランチ前に自席に戻った。

お役立ち情報[PR]