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第50話 待っててよ

もう一度、奥さんを「アイツ」と呼んだ、
孝太郎の顔をまじまじと見返した。
するとふたりが夫婦で毎日いっしょに暮らす、
その当然の事実が、今はじめて想像できた。

孝太郎はあの奥さんが買ったものを着て、
あの奥さんが作ったものを食べて、
あの奥さんが掃除した家に住み、
帰ったら同じ部屋で眠るのだ。

すると怒りが引き、代わりに気持ち悪くなった。
はじめて、孝太郎に嫌悪感をおぼえている。
わたしはひそひそ声で、孝太郎にいった。

「要は、わたし一人が悪者になって、
罰を受ければいいんだよね。
孝太郎は今まで通り何事もなく仕事して、
奥さんと楽しく暮らせばいい」

「ひより、そんな風に考えないで!」
急に孝太郎が大声を出したので、
人差し指を唇にあて「シッ」と短く息を吐く。

「ごめん。でもこうなったらもう、
アイツとは別れるしかない。
だから、もう少し待っててよ」

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