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第23話 その日が来るまで

その日は暑く、美術展は入るまでに、
一時間待ちの行列ができていた。

「開館1時間前に来ても、1時間待つのか」
孝太郎は困った顔で笑顔を作っていた。
わたしは「この表情、好きだな」と思いながら、
「人気の展示なんだね」と笑う。

孝太郎といっしょなら、列に並びながらでも、
美術展を見ながらでも、どちらでもいい。

やがて美術館が開き、展示会場に入る。
しかし会場は「どこからそんなに人が?」
と思うほど混んでいて、わたしは孝太郎と、
はぐれないよう手をつなぎながら、
腕と腕をぴったりとつけながら絵画を見上げた。

いつか別れるとわかっていても、
今はもう少し。
この人と、もう少し、いっしょにいたい。

絵は、目に滲みるように美しかった。
人ごみの中、ずっといっしょに近くにいられて、
その日は、切なさにめまいがするほど楽しかった。

しかし、楽しければ楽しいほどその反動も大きい。

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