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第12話 いつの日かわたしも

旅人たちが早足で行き交う、羽田空港。
その片隅で、わたしたちは寄り添って、
レストランの順番を待つ。

上着で隠している孝太郎の乾いた手の、
そのぬくもりが、わたしの手を包み込む。
安らぎと切なさの両方が押し寄せて、
胸が痛いほど幸せだった。

孝太郎はたしかに細身の筋肉質だけれど。
とりたてて美形なわけでもない。
38歳のごく普通の男性だ。
なのに、どうしてこんなに好きなんだろう。

「宮部様、2名様おまたせいたしました」
ウエイトレスさんに呼ばれて、
わたしはハッとして手を離す。
そして立ち上がる時、ふと思った。

「わたしにもいつか
『宮部』と呼ばれる日が来るのかな?
彼と同じ名字で呼ばれる日が」

孝太郎のぬくもりが残る手のひらを、
そっとほほに添えてから、
わたしは遠い未来のことを考えた。

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