お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

第60話 いつか宝石になる日まで

希望が出てきて、鼓動が早くなる。
「カッコつけた佐伯くんなんて、
こっちからお断りだよ。
不器用で正直な佐伯くんだから
一緒にいたいと思ったんじゃない」
そう伝えると、
佐伯がふわりと花が咲くように笑った。
「……実は僕も。先輩のことが好きでした」
「えっ?」
過去形? いったいいつ私のこと好きだったの?
そしていつの間に終わったの?
不安で心臓がバクバク言う。

「あなたのこの髪が……」
髪にやさしく触れられて
バクバクがドックンドックンになる。
「昔、学校で飼ってた犬にそっくりで、
最初に会った時から気になっていたんです」
「はい? ちょっと、それ、
全然うれしくないんだけど!」
「僕にとっては最高のほめ言葉なんですが……」
「はぁ? え? どういうこと?」
「あまりにも可愛くて、
嫌味を言わないと平静を保てないなと。
髪を目で追わないようにするのに苦労しました」
「え? もうちょっとわかりやすく」
「要するに一目ぼれです」
……犬に似てるから一目ぼれって。
そんなこと言われて喜ぶ女子が
いると思ってるの? バカだねぇ。この子。
ホント、全然カッコよくない。
むしろすご〜く残念。
でも、そんな残念なところも
愛しいと思ってしまう。私も病気だ。

「一緒の時間を過ごすうちに、
あなたのすべてが好きになりました。
……抱きしめてもいいですか?」
佐伯が両手を差し出している。
この手を取れば、
貧乏学生を支える彼女の座をゲットだ。
でも、本当に私でいいのだろうか。
貧乏だろうが残念だろうが
佐伯くんはハイスペックイケメンなのに。
「化石女でいいの?」
そう問うと、佐伯が少し意地悪そうに笑った。
「ご存知ないんですか?
宝石になる化石もあるんですよ」
少しきついぐらいに抱きしめられ、
その強さに脳がしびれるような快感を味わう。
「僕に、磨かれてください」
「……うん」
私も宝石になれるようにがんばる。

その想いは、唇を塞がれていたために
伝えられなかった。

「にー」

代わりに響いたのは、
小さな猫の鳴き声だった。

(終わり)

お役立ち情報[PR]