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第57話 自立と成長

連れて行かれたのは、駅から少し遠い、
ちょっと古びたアパート。
「ここは……?」
「僕の自宅です。ああ、先輩相手に
変なことしませんから安心してください」
相変わらず口は達者だ。
変なことされてもいいんだけどな。
好きだって告白しに来たんだし。
そう思うが、とりあえず、黙ってついていく。
それにしても、この前送っていった
マンションとはずいぶんちがうけど……。

エレベーターすらないアパート。
2階の一室にあがると、玄関が
昭和を感じさせるキッチンに直結していた。
「にゃー」
スタンダードな1DKの奥から
グレーの縞模様の猫が
待ち構えていたように近寄ってくる。
「ただいま。いま食事を用意するからね」
やさしい顔で佐伯が笑う。
「先輩も椅子にどうぞ。すみません。
まだ子猫なので早く帰りたくて」
「もしかして、居酒屋で見せてくれた写真の……?」
「そうです! 可愛いでしょう?」
本当に下心なしに連れてこられたようだ。
この子はやっぱり、あの時、
話しかけていた猫なんだろうな。
やせっぽちで弱々しかった子猫が
今や丸々と太り毛並みもふわっふわ。
きれいな猫に成長している。
佐伯が愛情を注いで育ててきたことがわかる。

「実は、少し前から自立していたんです」
猫の食事を用意する佐伯は、
思った以上に元気そうだ。
といっても3日ほどしか
離れていなかったのだけど。
本棚には動物関連の本がたくさん。
中には大学編入試験の資料もある。
「もしかして、
会社を辞める準備をしているの?」
「はい」
即答だ。どこか吹っ切れた様子を感じさせる。

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