お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

第56話 はやる想い

就業時刻と同時に会社を飛び出した。
本社へは電車で30分程度かかる。
佐伯が残業せずに帰宅したら、
会うことはできない。
それでも、本社へ向かった。
今日、気持ちを伝えたい。
その一心だけで、
いるかどうかもわからない佐伯を待った。

……日が長くなっていてよかった。暗い中、
会社の前で待ち伏せなんて気持ち悪すぎる。
いや、明るくても気持ち悪い……?
もしかして、
ストーカーって言われちゃう……?
「小林先輩?」
不安になってきたころ、
聞きなれた声が私の名前を読んだ。
「佐伯くん!」
会えて良かった!
今日会えなくても毎日来るつもりだったけど、
それじゃ完全にストーカーだもんね。

「どうしたんですか? 何かあったんですか?」
「どうしたもこうしたも、
黙っていなくなるなんてひどいじゃない!
送別会ぐらいさせなさいよ」
言い返すと、なぜだかうれしそうに笑われる。
「先輩らしいな」
「どこが! 私、本来は引きこもりなんだからね。
こんなとこまで出向いてきたの、
けっこう貴重なんだから」
「それなら連絡くれれば、僕が行ったのに……」
「あ……」
そうか。電話番号、知ってるんだった。
頭に血がのぼって、待ち伏せることしか
考えられてなかったわ。
冷静に考えれば、電話やメールで連絡を取って、
待ち合わせればよかったのか。
勢いだけでここまで来てしまうなんて
ティーンエイジャーみたいで恥ずかしい。
羞恥で混乱した頭を鎮めようと努力していると、
佐伯が助け舟を出してくれた。

「ちょっと移動しませんか?」

お役立ち情報[PR]