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第49話 母性本能

「僕は母さんのあやつり人形じゃないんだ」

そう言い残し、佐伯は眠ってしまった。
そんな彼を叱咤激励して歩かせ、
なんとかタクシーに乗せる。
自宅の住所は何とか言えたから、
あとは運転手さんに任せて……と思ったが、
気づいたら自分もタクシーに乗り込んでいた。

だって、私だけに秘密を打ち明けてくれたんだよ?
お酒の力を借りてでも私には話さなきゃって
思ってくれたんだよ?
可愛いじゃない!
先輩としてきちんと送り届けてあげないと、
後悔する気がする。

隣りでは車の運転に合わせ、
佐伯が不安定に揺れている。
酔って眠る佐伯の横顔は、
眉間に皺を寄せていないし、
くちもポカンと開いていてあどけない。

こうしてみると若い、って感じがするなぁ。

母親なんて全力で説き伏せるか、
それができなければ、自立しちゃえばいいのに。
最後は息子がやっぱりかわいくて
折れてくれると思うんだけどな。
きっとつきっきりで英才教育されて、
逆らえないように育てられちゃってるのかな。
そういう束縛って、
自分ひとりじゃ抜け出せないのかもしれない。

揺れるたびに窓に頭をぶつけているのが可哀想で
頭を自分の肩に寄せてみる。
佐伯は少し目覚めたのか、
私の肩にぐりぐりとおでこをこすりつけると、
またスーと眠りに落ちて行った。
か……、かっわいい。
私にも母性本能があったんだなぁ。
この生意気な後輩がこんなに可愛く見える日が
くるとは思わなかった。

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