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第34話 記憶がチクリと

「あけまして、おめでとうございます」
「おめでとうございます」

待ち合わせの駅の改札口、
今年初めて会ったわたしと慎也は、
わざとかしこまった新年の挨拶をしあって、
それから顔を見合わせて大笑いした。
北風が冷たかったけれど、
慎也と会うだけで、胸がぽかぽかと温まる。
やっと心から笑えた、という気持ちだ。

やはりふとした拍子に、思い出してしまう。
小百合先輩が、わたしの課長への愚痴や悪口を、
そのまま課長本人に教えていたという事実。
それを抗議すると先輩は言った。
相手が自分の気持ちや考えに共感して、
当然だと思うのは社会人として甘い、と。
軽蔑するような笑みを浮かべて。

なら、最初から言ってくれればよかったのに。
わたしはそうは思わないとか。
あなたの考えは甘いとか。
ずっと尊敬していたのに、すごくショック。
なんかもう仕事をがんばりたいと思えなくなってきた。
このあたりで慎也と結婚して契約社員にでも変わりたい、
と思うのは、わたしの甘えだろうか。

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