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第50話 友情と切なさ

今の状況は、希美の気持ちを僕に向けるチャンスかもしれないのに、
そのチャンスを生かそうという気持ちはわいてこない。
希美の失恋につけこむようなマネはしたくないからか。
いや、今に限らず、先のことを想像してみても、
自分が希美と付き合うイメージはまったくわいてこない。

希美は思っていたよりも、たくましいというか精神的にタフだ。
廉とのこともきっとすぐに乗り越えられるような気がする。
僕はそのための愚痴聞き役だ。
それは裏返せば、希美が僕のことをなんとも思っていない、
男として見ていないってことなんだよな。
あからさまにそういう態度をとられるうちに、
僕も希美のことを単なる友だちとして
見られるようになってきたのかも。
僕は希美の心の傷が癒えることを願っていて、
そう願えば願うほど、友情が深まっていく。
そして友情の量が増えるほど、僕の切なさはやわらいでいった。

翌日、大阪への異動の内示が出た。
廉と希美が別れた今、東京を離れる必要はもうない。
それどころか、希美と離れることになるのは残念だ。
もう希美の愚痴は聞いてやれなくなるんだな。
だけど、仕方ない。自分で決めたことだ。
気持ちを切り替え、引継ぎや日々の業務に追われるうちに、
あっと言う間に2週間が経った。

正式な辞令が出た日、僕は1人で静かに酒でも飲もうかと
会社を早く出た。
すると、ビルのエントランスで詩織とばったり会った。

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