お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

第42話 傷つかないように

キャンプが終わり、廉は希美への答えを保留にしたまま、
いつもの日常が戻ってきた。
担当の協聖病院でドクターとのアポ待ちをしているとき、
他社のMRどうしの噂話が聞こえた。
「田所先生、ゲルニートの新薬を検討してるらしいよ」
古傷が痛む感覚に襲われたけれど、それは一瞬だった。
僕は僕のやるべきことをやるしかない。

田所先生に、発表されたばかりの米国の臨床データについて
質問され、「明日までに関連資料をお持ちします」と約束した。
すぐに、社に戻って米国の資料を探した。
すべて和訳し、要点を解説した資料を作らなくてはいけない。
今夜は遅くなりそうだ。

コンビニに行こうと廊下に出ると、ばったり詩織に会った。
「お疲れ。まだ仕事?」と僕から声をかけた。
「私はもう帰るとこ。新は?」
「んー、まだまだ。終電に乗れたらラッキーって感じかな」
「ムリしないで、っていうのはムリだろうから、がんばってね」
そう言ってほほ笑む詩織を見ているうちに、
ふと、廉のことをどう思っているのか聞きたくなった。

もしも、この先、廉が希美を好きになったら、
詩織は悲しい思いをするかもしれない。
このときの僕は、自分が失恋するかどうかなんてことは
どうでもよくて、ただ詩織が傷つかないようにするために
僕ができることをしたい、と思っていた。

お役立ち情報[PR]