お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

第3話 あいまいな表情

希美は少し照れたように、僕の顔を見た。
「楽しみにしてもらうほどの内容はないと思うけど……」
ふと気づいた。希美の表情は、いつもあいまいだ。
うれしそうにも、恥ずかしそうにも、困ったようにも見える
複合的な表情が、夕焼け空のグラデーションのように
自然と目を惹きつける。
――やっぱり、好きだ。このままもう少し希美と話していたい。
そう思ったのに、希美は腕時計を見て、
「行かなくちゃ、じゃ、またね」と立ち去った。

残念に思いながら後姿を見送っていると、詩織が言った。
「新、この前の社内アンケート出してくれた?」
「あー、あれ、無記名だったし、任意だろ?」
「新は強制」
「なんでだよ」
「数が集まらないと困るの」

詩織は昨年、本社に戻ってきて、MRを1年経験したあと、
この春から広報部に異動になったばかりだ。
「詩織って、入社直後から『広報部で働きたい』
って言ってたよな。その目標をがんばって達成したんだから、
まぁ、同期として協力しないわけにはいかないな」
「ご理解ありがとう。あとは実行あるのみ、よろしくね」
詩織は手の平をびしっと前に突き出し、僕に念を押した。

詩織は手をひらひらなんてさせない。希美とは逆のタイプ
だからこそ、男だとか女だとかを意識しないで気軽に話せる。
そうだ。希美と一緒に詩織を食事に誘ってみようかな。
詩織と3人でなら、希美も応じやすいはず。

お役立ち情報[PR]